十四
遠くで『王』の嗤う声が聞こえた。
その声が耳に届いた直後に腹部が燃える様に熱くなる。
「──────」
ゆっくりと腹部に視線を落とす。
テラテラ粘着質に光る赤黒い触手が、この世界で一番硬いと言われるボクの鱗ごと腹の肉を貫いていた。
それを認識した直後、ゴポリと口から大量の血が溢れ出る。
数秒遅れて腹部からも血がゆっくりと地面に流れ落ちてきた。
ギリギリの血量の状態で戦いあと一歩の所で、油断した。
その油断で、更に大量の血を失い、ボクは飛ぶ事もままならくなり、とうとう足を地面に落ちそのまま動けなくなった。
「(どこから……)」
腹を貫いた触手の出所を辿る。
発生場所は直ぐに分かったよ。
それは『王』の胸部の中心。
ドクンドクンと脈打つ禍々しく光る赫い“核”からそれは生えいていた。
「………ふっざけん、なよっ!
“核”か、らっ触手生えるってっ、反則、だろっ!!」
ボクが悔しそうに悪態を吐くと、下半身の潰し損ねた大口達がゲラゲラと大声で嗤いだした。
不愉快な嗤い声が『虚』の底を支配する。
ボクはなんとか腹部を貫く触手を抜こうと手に力を入れようとするけど、
「くそっ(血を流しすぎた、力が入らないっ)」
それもあるが、ボクの血と触手の粘液のせいで手が滑るし、爪も触手が柔らかいせいで刺さらない。
血を大量に失い思考が上手く回っていない状態のボクが、モタモタと腹部に刺さる触手の方に気を取られている内に、『王』は“核”から触手をどんどん生成しボクの方に近づいていく……。
触手が十本位生成された頃にはそれはボクの逃げ道を塞ぐかの様に、周りを囲いいつでもトドメを刺せるとでも言いたそうにその場に留まったいた。
それに気づいた頃にはボクはもう起きている事もままならない状態で地面に横たわってしまっていた。
「...………」
もう声を発せない…。
耳も遠くなり大口達の嗤い声が鈍く遠くに聞こえる。
薄く開いた目も殆ど暗くぼやけてしか見えないけど、『王』の身体と触手がゆっくりと瀕死のボクに近づいて来るのは、地面の振動で伝わってくるのでなんとか分かった。
『王』はボクの距離があと数十mの所で止まった。
下半身の大口達が次々と大きく口を開きはじめた
同時に“核”で生成させた触手の先を槍の様に鋭く尖らせ硬化する。
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相変わらず何言っているか分からないけど、多分『王』はこれで終りとでも言ったんだろうね。
全ての触手の槍は切先に殺気を纏いボクの身体を串刺しにする為勢いよく放たれた。
「(嗚呼、ここまで…なのかな)
…………はくろう、ごめん、ね…「またね」って、言った、のに…約束、守れそうに…ない」
意識が朦朧とする中、ボクは掠れる声で白朧に謝り目を閉じた………
…………
……………………
………………………………
…………………………………………
「な〜んてね♪」
全ての触手がボクの身体に突き刺さる寸前ビタッと止まった。
そしてそのまま、小刻みに震えた後、ボタボタと音を立て力無く地面に落ち始めた。
最期に少し痙攣した後そのままピクリとも動かなった。
当然、ボクの腹を貫いた奴も…。
その触手を生成した“核”もドクドクと忙しなく脈打ち、時々ビクッビクッと痙攣を起こしていたけど、まだ生きている。
「イタタタッ、はー…、ちょっと、身体横にしたから少しだけ体力回復したかな」
ムクリと音が聞こえそうな感じでボクは起き上がる。
その反動で腹を突き刺した触手もズルリと抜けた。
あ、大丈夫だよ。もうある程度止血したから血が吹き出ることはないから。(※ただし激しく動けばまた出ます。)
……内臓は、うん。ちょっと飛び出てた………。
そして、今度はボクの方からゆっくりと『王』に近づいて行った。っと言っても、ほんの数歩歩くだけなんだけどね。
『王』の身体はさっきのボクと同じ様に、力なく地面に横たわっていた。
大口達も大きく口を開いたまま泡を吹いて絶命している奴と、辛うじて生きていて苦しそうにヒューヒュー呼吸をするのがいた。
それらを一瞥し、ボクは目的の場所に足を止めた。
目的の場所?勿論それは『王』の胸部にある“核”だ。
ボクは『虚の王』に問うた。
「どうだい?『王』さま?
初代番龍からボクの身体を貫く瞬間まで数万年の時間を掛けて生成した真の“血毒”の味は?」
まぁ、最初に言った通り、『王』に勝ったのはボクだからボクが死ぬって事は無いのは当たり前なんだけどね。
あ、でも死んで蘇るって展開も誰か考えてたかな?




