十
『虚』の一番奥底には、星々を喰らい暗黒の宙の海を彷徨う貪食な異形ノ者の頂点がいた。
喰い殺した数多の星の呪いと毒で創られた巣の奥底で極上の餌が現れるのを今か今かと、涎を垂らしながら待ち続ける化け物。
ソレは正しく『王』と呼ぶに相応しい最も歪で悍ましくも美しい化け物だった......。
喰い殺してきた星々の血を纏い、頭部にヒト型の女の上半身が生えていた強大な大蜘蛛。
身体は全体と同じ青黒く透明で、膨れた腹の中まで生々しく見える。その中にはまだ消化途中の星達が弱い光を発していた。
背には鳥の羽根の様な骨らしきモノと触手がまばらに生えユラユラと艶かしく揺れていた。
{......}
「......」
どれくらい睨み合っていたか分からなかったけど、先に動いたのは『王』の方だった。
瞳のない白い眼で、その姿に魅入って動けなくなったボクの姿を捕らえた『王』は、ニィっと青い唇を歪ませ......
{縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺──────!!!!}
「!!?」
突然の咆哮。
と、同時に『王』の背に生えた触手がボクに向かって襲い掛かってきた。
ボクは咆哮で直ぐ我に返り、後ろに大きく飛び退き触手から逃れた。
ドゴォッ!!!と、轟音を上げ触手はボクのいた地面を貫いた。
「っ!ハハッ!腹立つなぁ…白朧でも魅入ったこと無いのに、お前みたいのに見惚れるなんてねっ!(あっぶなかった!!あと数秒遅れてたら串刺しになってた!!)」
触手が突き刺した地面からシュウウゥ、と僅かに地面が溶ける嫌な音と触手のから頭が痺れる様な甘い臭いがした。
おそらく、微弱な酸と獲物を麻痺させかつ発情させる成分が入った毒だろう。
「………なるほど。中々、趣味の悪い『王様』だ。
捕まえた獲物に痛覚も快感に変えるヤバイ媚薬を使って、獲物がよがり狂う様を見ながら喰うとは……。
ちょっと、否、かなり気持ち悪いんだけど?」
吐き捨てる様に言うボクにヤツは更に笑みを深くし、グッと背中を丸める。
すると、そこからボコボコと音を立て新たな触手が、無数に生えて出てきた。
「はああぁぁ……。何でこう初っ端からこんなヤバイのに当たっちゃうのかなぁ…。(絶対、長くなりそうだよ、コレ)
チッ!これもそれも阿婆擦れクソ女神せいだよ。
一番先に外に出たら、真っ先にあの女この世から肉も魂も一片も残さず灼き殺す!
ごめんね、白朧!キミとの再会は後になっちゃうけど、ちゃんと、しっかり、埋め合わせはするから」
唯一の番である白朧の再会と、憎き阿婆擦れクソ女神の完全なる抹殺の決意を胸にし、目の前の最大の脅威を殺すべく爪を構えた。




