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山を越えてジューケイへ


 春の夕闇の中、ラトタスの背に乗ってジューケイを目指して飛んでいく。


 あたしは、優勝者として世界強者決定戦のマツモト代表になった。

 本戦が行われるチェンマイまでは、陸続きの道なき道を徒歩で半年以上かかる。5ヶ月後に行われる本戦には、間に合わない。

 でも、大丈夫。一日30分飛行できる飛行形態のラトタスに乗っていけば、2ヶ月ほどで到着できる。

 何度も野営して、ラトタスを休ませながら進むことになるけど。

 この1ヶ月、レゴレのコテージで野営して、チェンマイへの中継地点の街、ジューケイに向かっている。

 せっかくだからジューケイに2、3ヶ月滞在しようかと思っている。

 ジューケイの周りにはダンジョンもあるし、なによりジューケイの近くの山奥で巨大な鳥を見たという情報があったからだ。

 

 長期間ロム万能薬マツモト店を不在にすることができるのには、理由がある。 

 店番をゴルゴダビッシュ改めゴルちゃんに任せてきたからだ。


 ゴルちゃんが日常生活では、身体を小さく変えれたことにまず驚いた。とは言っても2メートルの長身に屈強な身体では、充分巨人と言える大きさではある。


 しかも、銭勘定が得意なこと、更に意外なことに接客がめちゃくちゃ上手だった。しかも、ベテランの境地に入ったプロの域だ。手先も器用だし、手際もいい。


 理不尽なクレーターをファンに変えてしまう対応から親の名前も分からない迷子の子供、王族や有力者への対応、年間の売上計画や季節に合わせてのイベント企画など、ゴルちゃんから学ぶことが多い。


 武芸者と言えど、生計を立てるために飲食店や接客業で働く技術も磨いてきたのだとか。この努力と研鑽の積み重ねには、恐れ入るばかりだ。


 逆三角形のムキムキの大きな身体にロム万能薬のピンクのフリフリ付きのエプロンが妙に馴染むから不思議だ。

 ゴルちゃんに任せておけば、店は、大丈夫だろう。

 クリムトとも筋肉を鍛えるもの同士の不思議な共感があるらしく、いきなり仲がいい様子だった。


 そうそう。

 マツモトの予選は、大変だった。

 特にターニュの2回戦は、対戦相手が暴走して、闘技場が無茶苦茶になる非常事態だったらしい。

 結局、試合は無効になって、ターニュも失格になってしまった。

 もやもやする結果だけど、2人が無事でよかったと、あたしは思う。


 翌日の決勝戦を1日延期して、闘技場を修復することになったそうだ。屋根が半壊した闘技場を一日で試合を観覧可能なほど修復できるのがレゴレの凄さだ。


 リノス予選の優勝は、S級魔法使いのミピシト。最強の魔法使いとしても名高いエルフ。

 決勝戦は、一瞬で勝敗が決まってしまった。


 ミピシトの対戦相手は、もちろんS級の冒険者で、確か剣士だった。

 しかし、開始のドラが鳴った直後、気がつくと舞台の外に転移させられて、場外棄権となってしまった。


 ほとんど記憶に残らないほど、あっけない決勝戦だったらしい。

 開始のドラと終了のドラの計4回がほとんど連続して鳴らされたという。


 おそらくミピシトは、S級どころか、何級も更に上の実力なのだろう。

 水晶玉の設計を改良して、SS級、SSS級まで判定できるようにする計画があるらしい。


 さて、すっかり暗くなってしまったけど、もうすぐジューケイの街が見えてくるはずだ。

 今回、ジューケイ滞在の目的は数多くある。


・ラカン、ガンダル、ヤードルの情報集め

・巨大な鳥の情報集め

・ロム万能薬ジューケイ支店の立ち上げ

・ダンジョンの新しい入り口の発見

・ジューケイ代表の孫雷に会うこと


 大きく分けるとこの5つだ。

 これには、ジューケイの特産品や美味しいものの発掘ももちろん含まれている。

 ジューケイにはゴルゴダビッシュの弟子ピーロンという巨人の男の子がいるらしい。

 ショータにジューケイの冒険者ギルドマスターへの紹介状も書いてもらった。


 マツモトには商業ギルドがない。ピーちゃんが直接決まり事を作っているからだ。

 でも、ピッケルに頼んでゴーヨンに商業ギルドマスターへの紹介状も書いてもらったから、きっとうまくいくはずだ。


 やること盛りだくさん、ワクワクどきどきのジューケイだ。


 山を越えると暗闇の中に魔法の光で輝く街並みが見えてきた。

 あれがジューケイか。

 思ったよりも大きな街だ。それに、なんて明るさ。

 街全体にピンクや青や緑の光の魔法が散りばめられて、上空の雲まで照らしている。


 何万年も前、人類が栄えた都市が滅亡して、廃墟が荒廃してほとんど更地になった跡地に新たに造られた亜人の街。

 マツモトもそうだったけど、古代の建材や素材を散りばめて、魔法で作った街並み。


 ジューケイでは、味にうるさい猫耳族が作り出した、料理が有名だ。かつて人類が栽培していた唐辛子と花椒というスパイスは、猫耳族の好みに合わなかった。

 代わりに生姜、ニラ、八角を使った料理が有名だ。

 八角を好きになれたらジューケイの食は幸せと言われている。

 生姜とニラと鶏肉の冷麺が特におすすめらしい。


 ジューケイは、雷の魔法が主流の街。雷と風の精霊ゼラリスが街中に住み着いているという特異な都市。

 電気という光を作り出したり、物を動かす不思議な力が街中に施されている。

 真夜中でも眠らない街。不夜城として有名だ。


 魔法陣研究の中心地で、より小さな魔法陣で、より少ない魔力で魔法が発動できるように日々研究されている。

 機械仕掛けの魔法の街。


 高い壁で街を守っているところを見ると、周りには強い魔獣がいるんだろう。


 ちょうどラトタスの魔力が切れて、高度が落ちてきた。


 このラトタスの飛ぶ勢いなら充分、街まで飛んでいけるだろう。

 

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