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マツモト狂乱の夜

「クリムト、お疲れ様。もう片付け終わった?」


 ロム万能薬マツモト店の閉店時間になって、ピンクのフリフリ付きのエプロンを脱ぎながら、いつもよく働くクリムトの労をねぎらう。

 クリムトも同じエプロンを着ている。逆三角形のムキムキの筋肉によく似合っている。。。ことにしよう。


「カリン、お疲れ様。

 工房を1日の最後に心を込めて掃除するのが幸せだな。

 新商品のパイナップルやバナナのコッペリームも人気が出てきたしな!」


「チェンマイから送ってもらったフルーツは、こっちでは珍しいものね。

 今度はマンゴーを試してみよう!」


「それは楽しそうだ。今から試作会をやるか?」


「今日は、ハロウィン仮装の夜よ。子供たちがパパを待っているんじゃない?」


「おっと、そうだ。早く帰らないと。筋肉ムキムキドラゴンの着ぐるみを用意してあるんだ。

 筋肉は、自前だけどな!

 カリンのショーを見にいくよ」


 ドラゴンの頭と尻尾を付けて、半裸のクリムトを想像すると、だいぶ可笑しい。


「お楽しみに。素晴らしい夜になるわ。いつもありがとう」


 クリムトと職人たちがわいわい言いながら帰っていく。


 ロム万能薬マツモト店の売上も順調だ。1日の売り上げの締めとお金をラトタスに預ける。

 売り上げのまとめや会計、税金の計算は、ピッケルが全てやってくれる。

 ピッケルは、未来を知ってるわりには、目先のことしかできない人だ。

 でも、それで充分。あたしは、ピッケルから聞いた未来像にワクワクしながら事業の計画を立てている。

 足りない知恵はエタンが貸してくれる。アシュリやアレイオスのみんなに支えられて、ロム万能薬は、急成長している。

 

 ピッケルがグランドマスターからアレイオスの商業と冒険者のギルドマスターを任された時には、興奮した。

 当のピッケルは、あまりピンときていないようだったけど。


 ロム万能薬とコッペリーム工房の片付けを確認して、今日のお仕事はおしまい。


 今夜は着替えてショータとご飯を食べる。

 最近忙しかったから、2人で会うのは、久しぶりだ。


 5階の自宅に帰る前に、4階に寄る。

 4階は、ワンフロア全て服を飾るようにしまっている。

 マツモトは、色々な服のデザイナーがいて、おしゃれが楽しい。

 ワンフロアを全部、ドレッシングルームにするのが、あたしの贅沢。

 

 キュールをかけて疲れを取ったら、あれやこれやと、服を選ぶ。

 服に合わせて、アクセサリーや靴を選んだり、香りを選ぶのが楽しい。


 ドワラゴンに作ってもらった特大の鏡の前で、着替えた服を確認する。


「この服、ピッケル好きかな」


 ふふふ。

 ピッケルに会えなくて、寂しい夜もある。

 でも、会話ができて、一緒に仕事をして、つながっている。

 きっとあたしたちは、大丈夫。

 そう思える。


 今夜は、街中みんなで仮装する夜だ。


 ショータもおしゃれが大好きだからな。

 どんな仮装をしてくるんだろう。

 ちなみに、毎年、この街の王ピーちゃんの仮装がメインイベントになっているらしい。

 ピーちゃんにお願いされて、今夜はラトタスを貸し出している。


 魔獣を可愛くしたような着ぐるみや、見たことがないような空想の生き物など、思い思いのデザインを服装に取り入れて街中の人々が仮装する。


 でも、待ちきれない人々が昼からすでに仮装して出歩き始めている。


 広場の特設広場で、あたしと炎犬のダンスショーをするのが今日の大仕事だ。

 あたしは、仮装というよりステージ衣装だ。これも今日のために用意したものだから、着るのが楽しみだ。


 いよいよ、夜のメインイベントに向かうために、家をでる。

 夕闇の通りは、無数の灯りで飾られて、お祭りの雰囲気でいっぱいだ。


 街中は、色とりどりの光で溢れ、仮装した人々が笑い合い、歩き回っている。 

 子供たちは興奮し、大人たちは楽しい雰囲気に包まれている。


 ショータと合流して夜の街を楽しむ。ショータの仮装は、まるで宇宙からやってきたような輝く宇宙人だ。


「ショータ、その宇宙人の仮装、手が込んでるね!自分で作ったの?」


「ありがとう、カリン!

 そうそう。既製品に手を加えて作ったんだ。

 カリンの衣装も素晴らしいよ。ピッケルに見せたかったね。」


 ちょっと露出が多くて恥ずかしいけど、アシュリと決めた衣装だ。舞台映え優先!

 ドワラゴンに頼んで、燃えない素材で作った、特注品だ。


「本当にね。ステージ、みんなに楽しんでもらえるといいけど、何よりあたしが楽しみなの!」


 仮装した人たちと一緒にパレードに参加し、街を練り歩いてから、食事を済ませた。それから街の外れにある炎犬の家に向かった。


 炎犬と一緒に舞台に向かう。ダンスショーの時間が迫っている。


 スポットライトで照らされたステージ脇で呼吸を整える。


 バウ!

 ブルルル!

 キャン!


 ピバウが少し緊張してるかも。ピブルとピキャンは、はしゃいでいる。

 母親のピバウは慎重て、ピブルはバランスがいい。ピキャンが気まぐれで、いつもふざけている。

 今日は、ちゃんと演技できるかな?


 炎犬と共にショーを披露する準備が整ってきた。

 観客たちの歓声と拍手が響く中、音楽が流れ始める。


 ステージ上で、炎犬のダンスパフォーマンスが始まる。


 最初は静かな音楽が流れ、スポットライトがあたしに当たる。

 優雅に見えるようにゆっくり歩みながら、炎犬のそばに近づく。


 緊張して、ちょっと足が震えてる。

 大丈夫。落ち着いて、楽しもう!


 炎犬たちが炎をまとった姿で立ち、力強いポーズをとる。


 観客席から「おお!」「わあ!」「きゃあ!」と歓声と恐怖が混じったようなリアクションがあった。


 よしよし!迫力充分!


 炎犬たちと目を合わせ、リズムに合わせて同時に手を伸ばし、空中で交差する。


 炎をまとった炎犬が宙返りをしながら、あたしの上を飛び越えていく!


 次に、徐々にリズムを速め、身体を動かし、炎を強める始める。


 音楽が力強い太鼓に変わっていく。

 あたしが手拍子をすると、観客もリズムに合わせて手拍子をしてくれた。


「カリン!カリン!カリン!」


 いい感じ!


 軽やかなステップで炎犬の周りを舞い、炎犬が炎をまとって輝く姿であたしを追いかける。


 音楽が盛り上がるにつれて、動きも激しさを増す。

 炎犬の背後からジャンプし、ピバウの背中に飛び乗る。炎犬は驚くことなく、あたしを優しく支えながら、共に円を描くように踊り続ける。


 ピブルとピキャンも楽しそうなあたしの周りを飛び跳ねながら舞っている。


 よかった!炎犬たちも楽しそう!


 ピキャンが観客の頭上に向けて炎を吐く。


 ゴォォオォ!!


「おおぉぉ!!」


「カリン!カリン!カリン!」


 観客は大興奮だ!

 だけど、それ演目にないんだよ。勝手にやりすぎ!ピキャン!

 すこし羽目を外すくらいなら許そう。

 ピバウに目配せすると、ピバウがピキャンを甘噛みして止めてくれた。


 ありがとう。変な汗がでたよ。

 

 そして、クライマックスに近づくと、炎犬が炎をより強く燃やして、あたしは、その炎の中で踊り続ける。


 楽しい!


 炎の中でステージの上が光り輝いている。この光景が観客たちを魅了できているだろうか?

 きっとちゃんと伝わってる!

 あたしと炎犬たちの楽しさが!


 最後に、音楽が静まり、スポットライトが炎犬とカリンに集中する。

 ポーズを取り、観客が大きな拍手と歓声をくれた。


「カリン!カリン!カリン!」


 はぁはぁ!やったー!気持ちいい!


 ふぅ!大成功!

 ステージ上で炎犬たちをよしよしする。

 炎犬は息を切らしながらも幸せそうに笑い合っているみたいだ。


 あぁ、でもあと一仕事!

 冒険者ギルドの宣伝と大切な告知をしなくっちゃ。

 これで冒険者ギルドに強者が集まってくるはず。


「みなさん、あたしと炎犬たちのダンスを観に来てくれてありがとう!」


「カリン!カリン!カリン!」


 拍手と共にあたしの名前を呼ぶ声が聞こえる。ファンができたのかな?


「みんな、いつもロム万能薬に来てくれてありがとう!」


「カリン!カリン!カリン!」


「ロム万能薬の隣にある冒険者ギルドからお知らせがあるの!

 チェンマイで第1回の冒険者ギルド主催、9大都市対抗、世界強者決定戦の開催されることなったわ!」


「カリン!カリン!カリン!」


「腕に覚えのある人は、3ヶ月後の予選に来てね!

 各都市1名選出、予選通過の賞金5000万オクだよ!」


 金額を聞いて、ドヨドヨと観客たちがざわめいている。


「おい、5000万オクかよ。。。」


 観客たちがステージの上を指をさす。


 ドシン、ドシンとスフィンクス2頭がステージ裏に現れた。スフィンクスが金ピカに塗装されている。


 派手すぎる!


 スフィンクスがステージ両脇にお座りして、ボイスパーカッションを始めた。そんなことできるんだ。。。


 ゴォォ!!

 

 赤と銀色に塗られたラトタスが飛行体型になって、その上に金色の派手な衣装を着たピーちゃんが乗って、大喜びの観客の上を飛び回る。


 ラトタスにあんな使い方が!いいな。次のステージパフォーマンスに取り入れよう。


 また音楽が鳴り響いて、観客は絶叫しながら大興奮だ。


 そして、ピーちゃんが観客の頭上を飛び回りながら、ラトタスのポシェタから金色の紙吹雪をばら撒きまくる。


 スフィンクスのボイスパーカッションもノリノリでアゲアゲだ。重低音から高音まで織り交ざって、聞いてるだけで踊りたくなる。


 もうカオス状態!

 

 狂乱した観客が叫びながら踊りまくる!


 炎犬が空に向かって火を吐いて、火柱を上げた。


 観客が大歓声で応える。


 バウ!

 ブルルル!

 キャン!


 なんかもう大変なことになってしまったけど、告知もできたし、まぁいいか。

 狂乱の夜は、まだまだ続きそう。


 よぉし、あたしも!

 ポシェタから大量の水を出して、龍の形に整えた。

 ボトラで操りながら踊りまくる観客の上をぐるぐる飛び回らせる。


 炎犬達が必死に水の龍に火炎を浴びせかける。


 あははは!


 なんかすごいことになった!


 マツモトの仮装の夜は、激しすぎる。


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