ささやかなお祝い 後編
「ねぇ、ターニュ。どうして泣いているの?」
披露宴が終わって、数えきれないくらい挨拶をして、溢れるくらいお祝いをもらった。
やっと僕の部屋に帰ってきて、珍しく2人きりになった。
秋の夕暮れの陽光がリビングのガラス窓から差し込む。
オレンジ色の光が壁に立てかけた、剣を照らしていた。甘い匂いがかすかに薫る。
さっきまでの華やかな賑やかさや喧騒と真逆の、静かな自宅。
「なんでもない」
ターニュの白い肩がフルフルと小刻みに揺れていた。
「どうしたんだよ」
ターニュの両肩に手を添えた。ひんやり冷たい肩。
「幸せすぎたよ。あたしには」
ターニュが僕を見て、泣きながら無理矢理笑顔を作った。
「いいじゃないか。ターニュが幸せなら嬉しいよ」
まっすぐターニュの目を見る。ターニュの瞳の中に僕が写っていた。
「そうね。だけど、あたしって欲張りね」
ターニュが涙を手の甲で拭いた。
「やっぱり婚約者が3人なんて変だよね」
あぁ。目の前のターニュをどうして大切にできるだろう。
「そんなことどうでもいい。何よりも、あたしは、もう悲しいよ」
え?
「悲しいの?」
何が?何がターニュを悲しませているんだろう。
「あたしはずっとピッケルと一緒にいたいのに。お願い。今夜だけ、悲しみを聞いてほしいの。
もう言わないから」
どうしたらいいか分からなくて、ターニュを抱きしめる。
「ターニュ、愛してるよ」
そう。この気持ちを何度でも確かめる。
「ピッケル、ありがとう。あたしもよ。ねぇ、あたしを死んでも覚えていれるくらい。強く強く思って。お願い」
強く、強く。
まるで明日にでも僕が死ぬかのように、ターニュは泣きじゃくる。
「ターニュ。どうしたの?僕はまだまだ生きてるよ。明日も、明後日も」
どうしたんだろう?
「でも100年後はいないの。あたしを置いて、見えないところに行ってしまう。嫌だ、嫌だ、嫌だ」
小さな子供みたいにターニュが泣きじゃくる。
白い手で僕の胸板を弱々しく叩く。
初めて見た。こんなターニュは。
「あたし、今まで生きてきた中で、今日ほど、恥ずかしくて、緊張して、戸惑って、嬉しかった日はない。
生きてるって感じた。今までで一番。
その日をくれたのはピッケルよ」
はらはらと泣くターニュの頭を撫でる。目も目の下も白い肌が真っ赤に腫れてピンク色だ。
ドキッ
心臓を貫くように可愛い。
「ヒック」
ああ、めちゃくちゃに愛してしまいたい。
「ターニュ、僕からささやかなお祝いがあるんだ」
ドワラゴンに作ってもらった希少な白金のリング。4つそれぞれの指に合うものを用意するのが本当に大変だった。
「ほら、手を出して」
戸惑うターニュの前にひざまずいて、ターニュの左手の薬指に白金のリングをスルスルとつけた。
よかった。ピッタリだ。
「え?これ、あたしに?キレイ。。。」
ターニュが指輪のついた指を嬉しそうに色々な角度から確かめる。
夕陽を浴びて、白金のリングがキラリと光った。
「ほら、僕も。左手薬指の指輪は、愛と絆を深めるおまじないだよ」
お揃いのリング。少し恥ずかしいけど、これでいい。
「ありがとう。また泣けてくるよぉ」
「よしよし。大丈夫だよ。僕が一緒にいるから」
泣きすぎて、またヒック、ヒックとしゃっくりをするターニュを抱っこして窓のない寝室のベッドに連れていく。
部屋に入ると小さなファイポの灯りがついた。
「ピッケル、今夜は一緒にいて。あたし、もう泣き疲れたよ」
「分かったよ。そうだよね。ほら、キュール」
緑色のキラキラと光が僕らを包んで、爽やかな薬草の匂いがふわりと薫る。
「ピッケルのキュールなしではもう生きられない。他の人のキュールじゃ嫌なの」
「リノスでキュールを使えるのは、僕くらいだよ」
「ばか。そういうこと言ってるんじゃ。。。」
僕はターニュの口を塞ぐようにキスをした。
ターニュが僕を抱きしめる。
少し乱暴にターニュの上着を剥ぎ取るように脱がす。
甘い匂いがふわりと広がった。ターニュのローズマリーの匂いも。
真っ白な肌にたわわな乳。ピンク色で小さな乳首が硬く締まっている。
夕陽で少し暖かい光を放っている。
綺麗
なんて綺麗なんだろ。
「ねぇ、たくさんして?ピッケルで、あたしを満たして欲しいの」
「ターニュ。大好きだよ」
ターニュの柔らかい胸を鷲掴みにした。
白いおっぱいに手の跡が赤く残るくらいに。
「あぁん、ピッケル。もっと強くしてほしいの。あぁ」
本能が駆け巡って、お互い欲情のままに身を任せる。
高めの声でひゃぁん、ひゃぁんっと初々しい喘いでいたターニュの声や僕の荒々しい喘ぎ声が外に漏れていませんように。
僕らは、暗くなるまで、何度も何度も汗だくで、精がターニュから溢れる出すほど愛し合った。
疲れ果てては、ポムルスの実をかじって、口移しでターニュに食べさせながら。
床には、齧りかけのポムルスが10個以上転がっていた。
明日、これでアップルパイを作ろうか。
「ターニュ、おやすみ」
ターニュは疲れ果てて、もう眠っていた。
びしょ濡れのシーツにキュールをかけて、裸のまま眠るターニュを後ろから抱きしめた。




