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リノスの日々

 ロム万能薬のお店ができて、半年が経った。


 結局、お店を作ると決めてから、場所を選んで買ったり、そこにお店を作る手続きをしたりで1ヶ月以上かかった。

 場所が決まれば、レゴレで建物を作るのは、すぐだけど。

 四階建てで一番上を自宅にした。

 壁を厚めにすることで堅牢で静かな生活スペースができた。


 それからカリンのアイディアでピンクの壁に塗装したり、内装を整えるのが大変だった。

 ピンクをお店のカラーに決めて、制服というかフリフリ付きのピンクのエプロンをみんなで着ることになった。

 カリンやアシュリが着ているところを想像すると可愛いけど、まさか自分まできることになるなんて。

 ドワラゴンに家具を作ってもらったり、アレイオスに出来たポムルスのパン工場と契約をしたり、あっという間の半年だったな。


 英雄ロムの歌や劇は、リノスの街でまだまだ人気を誇っている。

 どんどん勝手に続編が作られているから面白い。

 劇の中のロムには、3人の妻と10人の子供がいる。

 羨ましいかぎりだ。

 英雄色を好む、というのはこの世界でも同じらしい。


 時間を見つけて、鬼殺しのダンジョンの地下2階に通って、短剣の練習をする。

 C級ゴブリンダーもちゃんと倒せるようになった。やっとC級が分相応になってきたってことだ。

 地道に続けてきた甲斐があった。

 ダンジョンの宝箱は、あったりなかったり。ランダムで3回に一度くらい出現する。

 なんだかんだ言って、ダンジョン攻略が楽しい。

 今度、ターニュと2階のゴブリンダー3体に挑むつもりだ。

 アイアンゴーレムを作れるようになって、初めて戦闘に役立てるようになった。かなり戦術の幅が広がってきた。


 水晶玉のステータスも上がった。


「種族」

・人類


「魔法」

・魔力 A

・スピード E

・属性 草木D、水F、土C、魂E、時空F


「武術」

・剣術 C


「基礎ステータス」

・パワー D

・知力 C

・素早さ E

・体力 C

・幸運 測定不能


「職業」

・便利屋

・冒険者 B


「前科・勲章」

ドラゴン殺し

魔王の末裔


「スキル」

伝言 荷物持ち 転送 S級情報 結界解除


 魔法のスピードがDからEになったのが嬉しい。

 パワーがEからDに、剣術がDからCにアップした。地道な努力の結果だ。


 鬼殺しのダンジョン2階でゲムルス様がくれた宝箱には、呪われし神速の腕輪が入っていた。

 またまた、死に至るほどの不運の呪い付きだ。その代わり、魔法のスピードと移動のスピードがA級相当まで跳ね上がる。

 女神様もお手上げな幸運持ちの僕には、願ったり叶ったりだ。

 他の人にとっては、大外れだと思うけど。

 水晶玉は、装備した魔道具の効果を反映しないシビアな設計だ。

 それでも冒険者C級からB級になっている。


 目標は、僕とターニュの2人でゴブザーグ3体に勝つこと。そろそろ大丈夫かもしれない。わくわくする。


 そういえば、ナミがずっと眠ったままだ。触れると暖かいかいし、鼓動が聞こえるから生きているのは間違いないけど。


 情報を色々みれるようになったけど、ラカンとガンダルとキーラが見つからない。リノス、マツモトの近くにはいないのかもしれない。

 他の都市に支店を早く作らないと。


 この半年で変わったことが沢山ある。


 ロム万能薬は、大繁盛だ。

 歌や劇のおかげで、ロム万能薬が傷や病を治してくれるってイメージが広がった。

 もちろんターニュも口コミでロム万能薬の宣伝をしてくれている。

 パンセナの作ったキキリのクリームが飛ぶように売れる。

 

 冒険者にはポムルスのパンが定番になった。

 驚異の腹持ちの良さが口コミで広がったのだ。

 スピーラも今となっては、いい友達だ。


 ガブルとナイゼルも常連だ。門番達にもポムルスのパンが手放せないものになっている。

 結局色々試してみたけど、キキリのクリームとポムルスのパンが看板の商品になった。

 アレイオスさまさま、カリンとアシュリのおかげだ。

 

 マツモトでは、アレイオスのドワラゴンが作った炎犬の毛を編み込んだ杖がよく売れる。ファイよりもずっと便利だからだろう。

 残念ながら草木の魔法が使える人がほぼいないリノスでは売れないけど。


 コッペリームは、どこでも大人気。カリンがマツモトにコッペリームの工房を作って、生産している。

 ターニュがつけてくれた値段がちょうど良かったみたいだ。

 

 ゾゾ長老が作ってくれたキュアの魔法陣も大活躍だ。お店に置いて、クリーニングに使っている。

 冒険者達にとって、出かける前にまずポムルスのパンを買い、そして、帰ってきたらクリーニングに立ち寄る場所になった。

 プチンが冒険者のガイドブックにロム万能薬のポムルスのパンを推奨の準備として載せてくれたのもありがたい。


 お店の看板に堂々と「冒険者ギルド御用達」の文字を輝かせている。

 リノスの冒険者ギルドは、難しい試験を合格した立派な人たちの集まりというブランドがあるから、一般の人にとっても価値ある宣伝文句になっている。


 古文書の解読や結界や鍵の解除も引き合いがある。


 運送はまだまだこれからだけど、貿易の方が先に商売になりつつある。

 カリンのひらめきやアイディアがすごい。

 

 アシュリも「このお店こそが万能薬よ!」と言って、いつも喜んでくれている。


 アレイオス、マツモト、リノスだけじゃなくて、ミラノ、アメダバドの冒険者ギルドでもロム万能薬が出店できることになった。

 プチンが紹介状を書いてくれて、話が進んだ。

 出店はこれからだけど、これからが楽しみだ。


 でも、ちょっと忙しすぎる。もう、リノスのお店を1人で切り盛りするのが限界に近づいている。


 そうだ。アレイオスでの賢王パピペコとエタンの話し合いによって、統一国家が樹立された。

 統一国王は、賢王パピペコ。エタンが宰相になった。エタンの筋書き通りだ。

 アレイオスは港街として、商業特区として栄えていくことになりそうだ。



「天気がいいな。あ、おはよう。グラード」


 グラードは、たまにお店にくる猫耳族の羊飼いの好青年だ。


「おはよう、ピッケル。英雄殿は朝から店先のお掃除かい?精が出るね」


「いやいや、早起きが商売の秘訣だとゴーヨンに教わったんだよ。

 グラードこそ、こんなに朝から珍しいね。どうしたの?」


「秋になったから、オスの羊の買い付けにね。朝一番の市場でできるだけいいオスの羊を選ぶのさ。

 秋は種付けの季節だからね。うちは雌が50頭いるから、たくさん種付けできる元気な羊を選ばないと」


 羊のオスってのは、大変だな。いや、幸せなのか。


「そうなんだ。頑張ってね」


「おう。ピッケルも頑張れよ。後でポムルスのパンを買いにいくよ」


「毎度あり、グラード」


 毎日お店を掃除するのが気持ちがいい。こうして馴染みのお客さんも話すこともできるし。

 だから、朝起きて、魔法と短剣のトレーニングをした後で、お店の掃除を日課にしている。


「初めの頃とは、見違えるようだな。ピッケルよ」


 窓ガラスを拭いていると、後ろから声をかけられた。


「おはよう。あ!」


 振り向くとゴーヨンが立っていた。

 ゴーヨンから厳しい指摘ばかり受けるけど、お店ができて程なくして、商業ギルドに登録してもらった。

 

「朝から珍しいね。なんとかお客さんに喜んでもらえるようになってきたよ」


「そうか、よかったな。あなたの万能薬になるお店か、夢があるな」


 お店の入り口に書いた言葉をゴーヨンが読みながらウンウンと頷いている。


「劇や歌が親しまれたおかげだよ。

事実よりだいぶ大活躍な話になっているけどね」


「はっはっは!英雄なんて、実際そんなもんかもな。

 新作劇では、妻が4人、子供が15人になっていたぞ。それに比べて実物は、まだ謙虚でよろしい。

 明日の祝いの席に呼んでくれてありがとう。それを言いたくてね」


 劇の中では、僕の妻と子供がどんどん増えている。。。


「たくさん教わったので。

 このお店があるのは、駆け出しの頃から見守ってくれたおかげだよ」


「商業ギルドも、お前さんのおかげで盛り上がってきたよ。

 他の都市の商業ギルドとお金の交換や貿易のルール決めが進んでいる。

 先行したおかげでリノスの商業ギルドが盟主になったよ」


「ありがとう。助かるよ」


「こっちこそだ。人手が足りないようなら、商業ギルドに求人を出すといい。

 まぁ、奴隷もいいが、世話をしたり、教えるのが大変だからな」


 そう。この世界には、奴隷がいる。それは当たり前に存在して、善か悪かなど考えられもしない。

 そうは言っても、労働力を買い取る奴隷か、必要な時間だけ労働力を借りる労働者かの違いしかこの世界では認識されていない。

 むしろ、良い奴隷主の元なら、奴隷のほうが生活を世話してもらえる分、労働者よりも楽だという人もいる。

 実際、豊かと言える生活をしている奴隷もいるくらいだ。

 そうは言っても、なんとかできたら、いいんだけど。。。


 そういえば、アレイオスでは悪霊が出没するようになったらしい。

 誰かに危害を加えるわけじゃないらしいけど、何かを探しているかのように夜の街を徘徊するのが街の人々からの苦情としてエタンに届いている。

 カリンの話では、僕を探しているのかもしれないと。


 明日の披露宴は、緊張する。

 そんなに大袈裟にしたくないのに、大袈裟になってしまった。

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