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死の森の冒険

「んー!まだまだだな。

 2年続けても、キキリを育てるのに必要な土の魔力の1/3くらいかな。。。まだまだ時間がかかりそう。

 カリンは、いいな。もうキキリを育てる草木の魔法をパンセナに教えてもらえてさ」


 気がつくと、手は畑作業で、ゴツゴツとしていた。よほどの雷雨でもない限り、傘を差してでも、耕した畑にアスパワドをかけ続けている。

 立派な畑を作るという、アシュリとの約束をちゃんと守っている。

 キキリ畑の薬草の匂いも、すっかり日常になっていた。



「うふふ!ピッケルも修行に励むことね!あ、あたしみたいに毎日魔草の畑作りをコツコツ続けたら、あと1年で土に魔力1000溜まるんじゃない?10歳で畑を完成できたら、立派なものよ」



「そうかな。やってみるよ」



「ねぇ、ピッケル。今朝、散歩してたらさ、ダヨダヨ川の向こうに綺麗な白い花が咲いてるのが見えたんだ。

 一緒に見にいかない?絶対、あの花、魔力があるわ。人類がまだ手にしていないものかもしれないわ!魔草の図鑑でも見たことないもの!」



「そ、それはすごいね。見たい!けど。。。パンセナも、危ないからダヨダヨ川には近づくなって。

 対岸の死の森は、人類未到の危険地帯だよ。死の森に入って帰ってきた人類は、いないんだよ?」



「ははーん。ビビってるわね」



「違うよ!ビビってるのは確かだけど。行くべきじゃないって、言ってるんだ。姉弟子だろ?危険に誘うなよ」



「はいはい。わかりましたよ、弱虫。まだ9歳のお子様だしね。

 なによ。死の森が危険だってことくらい、あたしだってわかってるわ。パスカル村側から向こう岸の死の森を眺めるだけよ」



「カリンだって、まだ15歳じゃないか。それに、背はあんまり変わらないし。

 知ってる?長く深淵を覗く時、深淵もまた等しくおまえを見返すのだって、魔法書に書いてあったよ」



「ピッケルの馬鹿!頭でっかち!もう、知らない!じゃあね、意気地なし!また明日ね!」



 カリンがひらひらした服を風になびかせて、夏の明るい日差しの中、ロム家の館のある丘を下っていく。

 

 まさか、カリン、本当にダヨダヨ川に近づいたりしないよな。いや、カリンなら行く。今朝も行ったって言ってたし。

 放っておけばいい。そうだ。その方が無難だ。でも。。。

危険を避けていれば、それでいいのか?あー!もー!

 ちょうどプルーンが庭の掃除で通りがかった。



「プルーン!パンセナに、カリンを探しにダヨダヨ川に行くって伝えておいて。危ないことはしないからって!」



「ええ?ピッケル坊ちゃま!ダヨダヨ川に?昨日の大雨で増水していますよ!?」



 行こう。


 嫌な予感がするんだ。元の世界でも、何度だってこんなことがあった。人のトラブルに巻き込まれて、尻拭いばかりの試練な人生だったけど、その分、人を助けてもきた。

 自分の身を守るために、逃げていたいわけじゃない。いいさ、きっとなんてことはない。平和にのほほんと川べりで対岸を見つめているカリンを見つけるだけだ。

 対岸がよく見える川べりの場所は、だいたい見当がつく。それだけ、たった、それだけのこと。


 ダヨダヨ川の川べりでカリンを探し回った。いない。そうか、結局、家に帰ったのかもな。その方がいい。



「きゃー!!助けてーー!!」



 お、溺れてるぅ!!!!



 カリンが、なんとかダヨダヨ川の半ばの岩にしがみついてる。しかもほとんど裸で。


 なんでカリンが溺れてるんだ?怪我をして泳げないのか?それにしても川の流れが激し過ぎる。

 プルーンが言っていたように昨日の雨でかなり増水している。


 あぁ。だめだ。これは絶対、助けに行って死ぬパターンだ。川で溺れた人を助けるなんて、子供にできるわけがない。それに対岸は、死の森。



 これは試練なのか?!



 もうそんなことはどうでもいい。カリンを助けないと。

 大人を呼ぶのか?大人なら助けられるのか?それまでカリンは持つのか?



 だめだ!だめだ!


 後悔を背負って長生きするよりも、目の前の今に全てをかけよう。

 人生には、今しかない。過去も未来もないんだ!


 泳ぎやすいように上着を脱いで腰に巻きつける。


 少し上流からダヨダヨ川に飛び込む!


 カリンがしがみついている岩を目指して、流れていく。

 もう理屈じゃない。行くんだ。カリンのところに!



「ピッケル?ピッケルなの?なんで上稞なの?」



「カリン!きたよ!泳ぎやすいように、上着を脱いだだけだよ。助けられるかは、まだわからないけど」



「ちょっと!来たなら助けなさいよ!」


「はは。そ、そうだよね」


「ごめん、ありがとう。

 あたし、足を滑らせてしまって。

 ごめんなさい、ピッケルの忠告をちゃんと聞けばよかったのに!

 あたし、あたし。。。」



「いい。カリン、もういい。

 生きると信じろ。こうなったら、うまくいくと信じるしかない。それしかないんだ」

 

 カリンの手を強く握りしめた。

 動こうにも動けない。川の流れが激しい。岩のワレメになんとか捕まっているので精一杯だ。



「あたし、どうしたらいい?実は、泳げないの。

 服が破れてるの。ほとんど裸だからあんまりこっち見ないで」


 身体能力抜群なのに、泳げなかったなんて。

 カリンにも苦手な運動があったんだ。



「この状況で見ないなんてできないよ!」



「じゃあ、いやらしい目で見ないで!」



 う。どうしたらいいんだ。



「さ、寒いから抱きしめてよ」



「え、あ、うん」


 カリンの冷たい身体を少しでも温められたら。


 いきなり大きな水の塊がやってきて、僕もカリンも岩にしがみついていられずに流されてしまった。


 それから、僕とカリンは、手を握ったまま、川岸に流れ着いた。

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