ピッケルへの依頼
「ダメだな。やっぱりこの店は、すぐに潰れる」
便利屋ブースに座って草木の魔法の古文書を読み返していると、
頑固そうな気難しい顔の猫耳族の老紳士がやってきた。そして、いきなりひどい言葉を投げかけてきた。
なんなんだ。失礼な人だ。素人ながら頑張っているのに。何様なんだろう。
確かに、今日も1人もお客さんが来ていないけど。
ニーチェが慌てて走ってやってきた、
「ピッケル、ちゃんと挨拶しなよ!商業ギルドマスター、ゴーヨンよ」
「おぉ、ニーチェか。相変わらず元気だな。
プチンに用事があってな。ついでに便利屋とかいうのを見にきたが、ひどいもんだ。
子供のおままごとでも、もっとマシなものもあるくらいだ。
便利屋のピッケルよ。この店はなんだ?」
ゴーヨン!この人が。
「なんだと言われても。。。」
「この店の未来像が見えないな。考えてないんだろう。
それにギルドにこんなにたくさんの往来があるのに、誰もこの店が何の店かも分からないし、少なくともまだ誰も求めていない。
毒にも薬にもならない。
だから、誰も来ない。
そして、お前は、暇を持て余して、何もしていない。
客引きさえしないで、本を読んでいる。
まるで、価値が分からない目の前の人を見下して馬鹿にしているようだ。
目の前の人の価値がわかっていないのが自分の方だとも気づかずに」
心を折ってくるな。でも、何も言い返せない。
「未来像。。。確かにそんな大それたものは、今ないけど、自分にできることを1人ずつ伝えていけたらと思って。。。」
ゴーヨンが僕に諭すように語りかける。そうか、この人は、僕に教えてくれようとしているんだ。お店をやるということを。
「それで?
お前はどうなりたい?
何を伝えたい?
この店があるとリノスにどんないいことがある?
お前が世界から求められているものは何だ?
勘違いするなよ、ピッケル。
お前の提供できることは、金の卵だ。
だが、ピッケル自身が何も分かっていないな。
このままじゃ、店もお前もダメだ。
心と眼を開いて、目の前にあることを一つ一つ丁寧に考えるんだ」
「確かに、この店はできたばかりでダメなところばかりかもしれないけど。少しずつよくしていくよ」
「はぁ。なにも伝わっていないな。
上手くいってから未来像を練るようでは、そもそも上手くいかないぞ。
まぁ、言葉で伝えるより、まずはその身で思い知るがいい。
何よりも大切なのは、続けることだ。じゃあな」
ゴーヨンがギルドの2階に向かって行ってしまった。
厳しい。でも、いつかゴーヨンに認められるようなお店を作ろう。
ニーチェが,心配そうに僕を慰める。
「ピッケル、大丈夫?ゴーヨンにボロッカスに厳しいこと言われてたわね」
「ニーチェ、ありがとう。でも、言われたことを助言にしてお店をよくしていくよ」
「そうね。プチンも冒険者ギルドをリノスで始めた時、ゴーヨンにボロッカスに言われたって言ってたわ。
それから世界で2番目に大きな冒険者ギルドになったの。
ゴーヨンが組織運営の先生なのよ。そうは言っても、厳しい人よね」
そうだったのか。
「僕もお店を大きくできるように、頑張るよ」
「その勢いが大切よ。
そうだ、ピッケル。鬼殺しのダンジョンの新しい入り口の開け方を知ってるって言ってたわよね?」
「う、うん」
「情報の価値が上がったわ。最初は、B級の情報だったのに、今はA級になったの。
結局、誰も開けられなかったのよ。A級の冒険者でも。
情報提供の依頼がしたいから、昼過ぎに部屋に来て欲しいってプチンが言ってたわ」
結界の解き方の情報がついにA級に。それもそうだろう。あそこを開けるには、絵図の謎解きもそうだけど、ゴレゴレムか、岩を動かしてパズルを解く怪力が必要だ。
中には何があるんだろう?
前人未到のダンジョンなんて、危険だけど、ワクワクする。
他の冒険者もそうなんだろう。みんなこぞって新しい入り口を開けることに挑戦した。
そして、開けられなかったんだ。
「報酬とかあるのかな」
「もっちろんよ!A級の情報なんて、滅多に手に入らないのよ?
1000万パルから5000万パルが相場ね。それ以上だとS級になるわ。
今回の情報は、プチンが仕切って先遣隊としてパーティを編成するらしいから、少なくとも3000万パルくらいになると思うわ」
おお!それだけあれば開業資金になるな。
「すごいな。僕、開けるよ。すぐできるから」
「ええ?!ピッケルが開けるってこと?強力な古代の結界が張ってあるって話よ?」
「できるんだ」
「すごいわね。だったら、結界解除の手数料も入るわ。
ピッケルの等級も上がりそうね」
それはやるしかない。
確かにゴーヨンに言われたことの何一つ分かっていないかもしれない。
でも、一つずつ目の前に来たことに真剣に取り組むしかない。
求められたことをする。
きっとその中に前に進むヒントがあるはずだ。




