マツモトの食べ歩き
ここがマツモトかぁ!
なんか賑やかそうな街だな。大都会って感じがする。
何万年も昔に人類が栄えた時代に街があったとされる場所。
当時の建造物は全て風化して、瓦礫も残っていない。
古代の遺物として保管された建材や素材感を取り入れて、草木の魔法で造られた不思議な造形の建築物が面白い。
エイゴン様がマツモトでの会話に困らないように、言の葉の首飾りをくれた。
これで念話が使えなくで、言葉に困ることはない。
字は読めないけどね。
字はラトタスが翻訳してくれるから大丈夫。ボディーガードもしてくれる。
こんなゴツイ騎士がついていたら、襲ってくるのは余程の度胸がいるはずだ。
目立つのが難点だけど。
ピッケルの話では、街に入るのに門番に捕まって大変だったとか、身分証をやっと作れたとか言ってたな。
まさか冒険者ギルドがゾゾ長老の親族が運営管理してるなんて、驚きだ。
昨日の筆談では、ゾゾ長老もかなり喜んでいた。残念ながら、もうゾゾ・カーサはこの世にはいないけど、その子供たちに受け継がれている。
なんて素敵な奇跡なんだろう。
確かにマツモトの街の入り口には、門番どころか門すらない。
治安がいいんだろうか?魔獣とか襲ってこないのかな。
通りにはたくさんの人が往来している。エルフや猫耳族、身体の大きな種族など様々だ。髪の色や肌の色も様々だし、何よりみんなパッチワークのような不思議な服装で、色とりどりに着飾っている。
派手だけど、おしゃれだ。
それに比べて、あたしの服は地味すぎる。
落ち着いたら、服を買いに行こう!
様々なお店で、服が売られていた。アクセサリーや魔道具、帽子の専門店や下着のお店まである。
もちろん、食べ物屋さんも数えきれない。
麺類のお店やサンドイッチ、酒場もあれば、白いテーブルクロスを敷いた高そうな飲食店もある。
女の子のダンスチームに観客が集まっていた。打楽器の演奏に合わせて、かっこいい歌と激しいダンス。
いいな。あたしもステージに立ってみたいな。
それにこの人の多さ。ガヤガヤとした喧騒にちょっと眩暈がしてクラクラする。
でも、楽しい。刺激に溢れてる。これがマツモトか!
装備を失ったあたしにパバリ王がお小遣いをくれた。
パバリ王の発案でキュロスとの対戦が仕組まれたんだから、ありがたくもらっておこう。
せっかくだから、ちょっと何か試しに食べてみよう。
甘いものがいいな。
アイスクリームのお店やケーキ屋さん、あれ?ピカリ焼きのお店がある!ピカリ焼きは、パスカル村にもあった。ここにもあるなんて、不思議だ。
よし、あの揚げパンにしよう!
サクッとした丸い揚げパンに、黒砂糖をしっかりまぶして、アイスクリームと苺をサンドしたお菓子を何人もの人が食べ歩きをしているのを見た。
お店はどこかな。
あ!
このお店だ。
なんて名前の食べ物なんだろう。いくらくらいかな。。。
ラトタスにお願いして翻訳してもらう。なんか慣れないことばかりで、一苦労だ。
こっぺ。。。りーむ?500オク?500オクって高いのかな。
分からない!初めてなんだから分からなくて当然!
ええい!行ってみよう!これも旅の醍醐味!
「こ、これくださいっ」
「おう!」
野太い声が返ってきた。
うっ!
どうして、こんなに可愛い甘い甘いものを作っているのがアゴヒゲの筋肉ムキムキのエルフのおっさんなんだろう。
そんなことはいい。あたしは、これが食べたいんだ。
「コッペリームだね。お嬢ちゃん、可愛いからミルプリーム、多めにしとくよ。
500オクね」
ええっと。500オク、500オク。どのコインかな。これかな、ええい、まず渡してみよう。
「おお。このコインは10000オクだな。もっと小銭ないかい?」
ええっと、わかんないよ。このコインかな。変な汗がでる。
「これならどう?」
「そうそう。これこれ1000オクだな。500オクのお釣りな。
はいよ!甘くて冷たいミルプリームが溶けないうちにパクパク食べなよ?」
「あ、ありがとう!」
うわぁ!初めての買い物!コッペリーム!
なんかキラキラ輝いて見える!
サクッ
ハムッ
ガブガブ!
うまい!甘い!最高!
ザックリとした熱々の揚げパンに、冷たくて甘いミルプリームと苺の酸味!黒糖もいい!
「ふぁーー!!幸せすぎる!」
ほっぺた落ちる!なにこれ!こんなに美味しいもの初めて食べた!
好き!これ好き!
ミルプリームが少し溶けて、揚げパンに染み込んだ最後の一口がまた美味しい。
夢中で一気に食べ切ってしまった。
あぁ。もう無くなってしまった。もう一個食べたい。よだれが止まらない。
むむむ。
「おいおい、嬢ちゃん、そんなに喜ばれたらこっちまで嬉しくなっちまうぜ。
俺はこの街で1番のコッペリーム職人のクリムトだ。
ところで、よそから来たみたいだが、何しにきたんだ?」
はっ!そうだった!
「あたしは、カリン。冒険者ギルドに行きたいの。
でも、どこか分からなくて」
「おお。
最近この街にも冒険者ギルドってやつができたって聞いたな。あんまり評判は、良くないが。
あの時計台の下にあるらしい」
街の中心あたりの高い時計台をクリムトが指差す。
あそこか。評判がよくない?大丈夫かな?まぁ、まず行ってみよう。
「ありがとう、クリムト。またコッペリーム食べにくるね」
「おうよ!いつでも最高のコッペリームを食わせてやるよ。
しかし、気をつけなカリン。この街は治安があんまり良くねぇ。
奴隷や人身売買のオークション、風俗店もあるし、ギャンブルも盛んだ。
よそ者の若い女の子なんて白昼堂々悪いやつに捕まったっておかしくはねぇ。
冒険者ギルドってのもなんか怪しくてな。怪我人が出たり、危ない仕事らしいぞ。堅気の仕事ではないみたいだ。
まぁ、そのごっつい騎士が護衛についてれば、大丈夫そうだけどな!ガハハハ!」
怪我か、それくらいの危険は冒険者には普通にありそうだけど。よっぽどなのかな?
「クリムト、ありがとう。行ってくる!」
「おう!カリン、またな!まぁ、街の外は弱い魔獣しかないからな。平和な街でもある。楽しんでくれ!」
なんかいい人だったな。
治安が悪いって話だったけど、そうかな?
通行証もいらないみたいだし。
全部木で作られた建物が建ち並ぶ光景は、見事だ。木造の10階建てくらいの建物が無数に林立している。
街の中心な時計台は、20階建てくらいありそう。
どれもきっと草木の魔法で作ったんだろう。
不思議なことにレゴレは一切使われていない。
草木、闇、風の魔法が主流で、土、水、火の魔法を使える人がいないという前情報は、どうやら本当らしい。
人通りの多い大通りを歩いて時計台の下までいくと、ゾゾ家の紋章を掲げた小さな家があった。
きっとここが冒険者ギルドだ。
なんかこじんまりしているな。
そういえば、リノスでは登録テストの筆記試験が大変だってピッケルが言ってたな。
だ、大丈夫かな。
マツモトの冒険者ギルドは、どうなんだろう。
ゴクリ。
急に怖くなってきた。
いや!ビビるなあたし!行け行け!カリン!
「たのもー!!」
あれ?静かだ。がらんとして、誰もいない。
「あのー。誰か?」
ちっこいエルフが奥の部屋から走って出てきた。
可愛い!
「わわわわ!!!どうぞどうぞ!こちらに!!!」
なにこの可愛い生き物は!5歳児くらいがちょこまかと走り回っている。エルフだから見た目で判断できないけど。
「あの。冒険者の登録をしたいんだけど」
「おーーーー!!!!やっと3人目の冒険者!」
「え?」
「あ、いや、違った。
うぉっほん!全世界1000人の冒険者ネットワークにようこそ!
厳しい登録テストをクリアしたものだけが冒険者として世界中の情報網を活用することができる!
世界平和のための冒険者ギルド!
僕はマツモトのギルドマスター、ゾゾ・ショータだよ!」
おお。そうなのか。やっぱり厳しいテストが。
「あたしはカリン。ショータよろしくね。これパバリ王からもらった紹介状なんだけど、これで登録できるかな」
「パ、パパ、パバリ王って、あの生きる伝説、創世のバパリ王!?
ちょっと待って。鑑定、鑑定!」
ショータがムムムっと真剣な顔で紹介状に両手をかざして調べている。手がじんわりと光っている。光の魔法か何かかな。
真剣な顔が可愛い!
「ほ、本物!ほんものだぁ!すごい!さっそく冒険者登録しよう!」
「え?登録テストは?」
「あ!そうだった。登録テスト、登録テストは。。。どうしよう」
怪しい。ここ本当に本物の冒険者ギルドなの?
「ねぇ、ショータ?」
「な、なに?」
「なんかリノスの冒険者ギルドの話を聞いてきたんだけど、大分様子が違うんだけど。。。」
ショータがうなだれてしょんぼりしている。ついに泣き出してしまった。
「ひっく。実は、ここの冒険者ギルドは先月できたばっかりなんだ。実は、僕もこの街に来て3ヶ月くらい。
リノスは、なんて言ったって世界で2番目に大きな冒険者ギルドがある街だよ?
右も左も分からないけど、いつか兄弟たちのような立派な冒険者ギルドにするために、遠く離れたマツモトにやってきたんだ!」
おお。起業家みたいなものか。
「そ、そうだったんだ」
「まだ冒険者が集まらなくてね。
その上、3週間前に登録してくれた2人の冒険者が依頼の途中で大怪我をして、1週間前に退会してしまってね。
評判も落ちて、誰も寄り付かないんだ。
カリン、助けて!お願い!冒険者になって!」
ええー!!
なんか全然ピッケルから聞いていた話と違うな。
「あたしも冒険者になりたいし、いいよ。
一緒にこの冒険者ギルド、大きくしていこう!」
「やったーー!!!じゃあ決まりね!この水晶玉に手を置いて。
登録や情報の売買もできるよ。まだほとんどなんの情報も登録させてないけどね。
さぁ、手を置いて!」
おー!これがピッケルの言ってた水晶玉か。
なんかドキドキするな。
よし!やってみよう!
「それ!」
魔法玉がキラキラと光が強くなる。
「種族」
・亜人(巨人)
「魔法」
・魔力 B
・スピード D
・属性 草木C、水E、土E、時空F
「武術」
・格闘C
「基礎ステータス」
・パワー B
・知力 C
・素早さ B
・体力 B
・幸運 E
「職業」
・拳士
「前科・勲章」
赤い目の巨人
「スキル」
未登録
「ショータ、どう?あたし、強い?」
「よ、弱い。パバリ王の紹介状を持っているくらいだから、てっきりA級かS級かと思ったのに!」
ショータがガックリと落ち込む。ごめんなさいね。そこまでの実力者じゃなくて。
「魔力量はいいけど、魔法のスピードが遅いね。
草木の魔法は、この辺りでは珍しくないけど、水と土は珍しいね。時空の魔法は、未知だね。
パワーはBだけど。。。
総合するとC級だね」
おお!!C級!ピッケルはF級とか言ってたから、大分いい!やったぁ!
巨人の力が少しずつ目覚めているからかな。
でも、パバリ王が巨人の力はまだ覚醒の始まりにすぎないし、赤い目の覚醒はまだまだ遠いって言ってたな。
それに職業は、拳士か。もっと魔法を強化しないと魔拳士にはなれないか。やっぱり、これは悔しいな。
ショータは、大袈裟に不満そうだ。
「うう。冒険者ギルドのトップランカーがC級だなんて、恥ずかしすぎる!」
トップランカーって言ったって、あたし1人しかいないし。トップには違いないけど。
「まぁ、まぁ、元気出して。ポシェタっていう時空の魔法が使えるの。いくらでも物を収納できるのよ。
それにこの騎士、ラトタスは、ゴーレムなの。
あたしの地元アレイオスとリノスを繋いで筆談できるの。伝言を伝えたい時は任せて!それにレゴレって土の魔法で石の建築物を一瞬で作れるわ!」
「おお!すごい!プチン姉さんに伝言ができるんだね。
じゃあ、スキルに【荷物持ち】と【伝言】と【建築家】を登録しておくよ。
よし、決めた!僕がカリンをS級にしてあげる!
はい!まずはC級の冒険者証ね」
おお!これであたしは、冒険者に!ペンダントに小さな銀のプレート。刻まれた3の数字は、マツモトの冒険者登録ナンバーかな。大切にしよう。
ショータとがっしり手を握り合う。
「うん!ありがとう!お互い頑張ろう!」
登録テストとか、なかったな。
まぁ、いっか。これはこれで大変そうだし。
それに何より、楽しそう!なんだか、ワクワクしてきた!




