ターニュ登場
はぁー。はぁー。
受験番号 303 67点
うげ。
なんか微妙な点数だなぁ。
冒険者ギルドに張り出された点数を見あげる。
300人ほど列挙された他の人の点数を見ると、30点台とか50点台とかが多い。でも98点って人もいるな。
合格か?不合格か?
んー。分からない。
徹夜で勉強して、ポムルス20個くらい食べて自分を励ました。人生で一番ポムルス食べた。
無理矢理頑張って、分厚いルールブックを少しだけ読み飛ばしながらも、読み切った。
試験開始ギリギリまで、ルールブックを読み返して、悪あがきをした。
税金の計算問題が多くて助かった。冒険の知識は、結局、全然追いつかなかった。
あぁ、もうこれ以上できない!
限界突破。一夜漬けとは言え、これ以上ないくらい勉強した。元の世界でもこんなに勉強を頑張ったことはない。
それでやっと67点。
あぁ。自分の凡人さが悲しい。エタンだったらきっと一度ルールブックを読んだだけで、もっと高得点を出しただろう。
ふっ。でも、後悔はない。自分のベストを尽くした。
隣の猫耳の青年がぼやく。
「3回連続不合格だ。。。最初に受験してからもう3年。そろそろ諦める時かな。。。はぁ」
周りでは、不合格に悲しむ人がたくさんいる。合格を喜ぶ人がほとんどいない。
そもそも、どうやってみんな自分の合格不合格を判断しているんだ?
慌てて、ルールブックを取り出して、改めて読み返す。漁るようにページをめくりまくる。
気になる1行を見つけた。
あれ?
こ、これは?!
大事な1ページを読み飛ばしていた。普通これって、一番最初に書いてない?!こんな中途半端なページに!
合格ライン65点
うぉーーー!!!
やったぁ!!合格点!ギリギリだけど!いいの!これで!
腰から崩れ落ちて、膝立ちになる。自然と涙が流れてきた。
頑張ったよ。ほんと。
「お!ピッケル、どうだった?」
「なんとか合格したよ。ギリギリだけどね」
「よく頑張ったね!リノスの登録テストの筆記は、難しいからね。
今回も筆記で受験者305人のうち250人落ちたよ。
本当に頑張ったね!」
ニーチェにヨシヨシされて、涙がまた出てきた。そんなに難しい試験だったの?無茶振りじゃないか。鬼すぎる。
うぅ。カリンも冒険者登録しに行くって言ってたな。大丈夫かな?
「よしよし。疲れ果てている場合じゃないよ。
次のテストは、ダンジョン攻略。ランダムで決まる3人から5人のパーティでダンジョンに行くの。
持ち帰った魔道具と倒した魔獣の素材や情報の価値、それと水晶玉で表示するステータスから総合的に等級が決定するよ」
そうだ。カリンの心配をしている場合じゃない。
パーティか。できれば5人の組がいいな。そして、ゴリゴリの武闘派と組みたい。なんせ、僕は便利屋。僕の魔法も剣も、今はまだ戦闘では役立ちそうにない。悔しいけど。
いずれ鍛え上げて、戦闘でも頭角をあらわしてみせる。
ダンジョン攻略の概要が冒険者ギルドの壁に書いて張り出されている。
・難易度C級、鬼殺しのダンジョンを攻略すること
・期限は3日後の日没まで
・生きて帰ること
・自信のないものは、辞退者リストに名前を書くこと
し、死ぬこともあるってことか。
ニーチェが驚いたようにつぶやく。
「ひぇー!今年はC級ダンジョンかぁ。いつもはD級とかE級なのにな。
これは辞退者が結構出るかもな。
筆記合格の権利は、次回以降の登録テストでも有効だし」
そ、そうなのか。
「ピッケルは、どうする?
もしかしたらプチンがピッケルを試しているのかも」
おぉ。またしても試練。どうして皆、僕に試練を与えたがるんだろう。
「行くよ。試練には慣れてる」
不定期開催の登録テストの次回なんて待ってられない。
「さすがピッケル、かっこいいね!いってらっしゃい。パーティのメンバーがあっちの掲示板で分かるわよ」
えっと、この掲示板か。
12
147×
286×
303
お!4人のパーティだ!あれ?この×印ってなんだろう。嫌な予感が。
ニーチェがため息を漏らす。
「×は辞退者よ。結局今回ダンジョン討伐に挑戦するのは、20人ね。まぁ、いきなりC級ダンジョンだものね」
C級ダンジョンってそんなに危険なのか。しかも2人パーティになってしまった。
「12は、誰だろう?」
いかにも戦士らしいエルフが突っかかってきた。
「もしかして、あなたが303なの??
C級ダンジョン攻略にこんな弱っちい奴と2人パーティなんて、考えただけで、疲れるなぁ。
んー、でもあなた、顔が可愛わね。
役に立つなら、あたしと同行するのを許してあげようかしら。
あたしは、エルフの剣士ターニュ。あなたは?」
うわー。エルフ。茶色の髪に色白肌。目元も口元も美形で端正だけど、当たりが強いな。
気だるい喋り方が、セクシーではあるけど。苦手なタイプだ。どうしよう。
優しかったり、甘えん坊だったり、ドジっ子だったり、そういう可愛らしい女の子とは、縁がないな。
「僕は、便利屋ピッケルだよ」
「はぁ?便利屋?何それ?弱そう」
いきなり弱そうと言われてしまった。否定をできないのが悲しい。
「回復したり、時空魔法で物を収納できる。それに魂の魔法を少しだけ」
ミニゴーレムがポケットから出てきて、ペコリとお辞儀をする。
「珍しいことができるのね。
まぁ、いいわ。
そもそも1人でも行くつもりだったし。
足を引っ張るようなら見捨てるから。疲れるし。それでもよかったらついてきて。
これがゴーレムか。初めて見たわ。
でも、何それマスコット?戦闘の役には立ちそうにないわね」
ミニゴーレムが役立たずと言われて、抗議している。
「よろしく。役に立つように頑張るよ」
「まぁ、荷物持ちくらいにはなりそうね。あたしは、疲れやすいの。楽させてくれるなら、ありがたいけど」
に、荷物持ち。確かにプチンにもそう言われたな。
まぁいい。ダンジョン攻略のためだ。なんでもやってやる。今に見ておれ。
それにターニュは、戦闘が得意みたいだ。相性は、悪くない。
「で、その収納する魔法って、ピッケルが死んだらどうなるの?全部出てくるの?」
え?
「分からない」
だって、ポシェタを使っている魔法使いが死んだところをまだ見たことがない。
「はぁ?じゃあ、助けるしかないじゃない。これだから魔法って大嫌い」
「ターニュは、剣士なの?」
「そうよ。
そもそもエルフや猫耳族で魔法が使える人は、少ないわ。
しかも、ほとんどが生活するのに役立つ魔法が使えるくらい。戦闘に使える魔法が使える人なんて、ほとんどいない。
その上、魔法の取扱いが難しくて、未熟な時に魔法を制御できなくて死ぬ人も多いしね。
たまにとんでもなく強い魔法使いもいるけど。それは剣も同じこと。
魔法と剣に優劣なんてないの。
あたしは、剣を極めて300年よ」
300年!さすがエルフ。長命なんだな。見た目は同じ年くらいなのに。
ニーチェがターニュを見つけて、大声で喜ぶ。
「孤高の剣士ターニュ!ついに筆記を合格したのね!10年7回目の挑戦だったわね」
「うるさいわね、ニーチェ。こんな筆記テスト、簡単よ。余裕で65点だったんだから!
それにエルフにとって10年なんかわずかな時間よ。待ったうちに入らないわ」
僕よりギリギリの点数じゃないか。
ちょっと負け惜しみに聞こえるけど。
ニーチェは、とにかく嬉しそうだ。推しの冒険者候補なんだろう。
「うんうん。とにかく嬉しいし、期待してるわ。あたしも年も近いから、応援してるの。
もともと剣の実力はA級だもんね」
え?そんな実力者なの?ってかニーチェも何歳なんだろう。
「どうしてリノスの登録テストの筆記はそんなに難しいの?」
「死傷者を少なくするためと情報を規制するためよ。冒険者の等級によって得られる情報が制限されているの。
いくら強くても、情報の危険度を判断ができないとすぐに死んでしまうから」
なるほど。貴重な情報を得るためには、等級を上げる必要があるんだ。
「冒険者ギルドってケチよね。情報を牛耳ってさ。
みんな価値ある情報をギルドに預けて、秘密を守ったり、売買したりしてるのよ」
ニーチェが反論する。
「昔は、もっと簡単に登録できたのよ。
でも死者が続出して、冒険者がすごく少なくなったの。冒険者ギルドの評判もすごく悪かったしね。
冒険者が生き残って増えていくようになったのは、筆記を難しくして入り口を厳しくしてからよ。
その代わり等級を上げれば情報をどんどん得られるようになる」
その情報がほしい!思わずグッと拳を固める。
「そうなんだ」
ニーチェが僕の両手を包むように握る。
「ピッケル、気をつけて。
ダンジョンに入らずに、ダンジョンを攻略して魔道具を持って出てきた人を襲って横取りする奴が毎年必ずいる。
きっと、今年はいつもより多くいるはずよ。
ダンジョン内もだけど、帰り道にも気をつけてね」
確かに。卑怯だけど、いい作戦かもしれないけど。。。
僕は、正々堂々自分の足でダンジョンを攻略するんだ。
経験を積むんだ。
強さでは敵わない相手もたくさんいるだろう。でも、生き残る術は、力だけじゃない。
経験と情報で、仲間を見つけて、世界を救ってみせる。




