表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/195

ゾゾ・プチン

 コンコン


 ニーチェに案内されて、ギルドの2階の大きな扉をノックした。


 この中にリノスのギルドマスター、プチンがいる。


「どうぞ」


 なかから若い女性の声がした。


ガチャ


 「初めてまして。僕は、ロム・ピッケル。。。。」


 そこに立っていたのは、幼い女の子!年下にしか見えない。と言ってもエルフの見た目と年齢は分からないけど。


「あら、あなたがピッケルね。私は、ゾゾ・プチン。プチンと呼んでいいわ。

 なるほど、確かに人類ね。パバリ王以外の人類をみたのは、初めてよ。シリア砂漠を4日歩いたんだって?」


 パバリ王、やっぱり有名人なのか。ゾゾ・プチン。ゾゾ長老の親族?そんなことありえるか?


「は、はい。

 レゴレでコテージを作ったり、時空の魔法で水を出したりして、なんとか、ここまで。

 どうして、ゾゾの名前を?曽祖母のゾゾ・ミショルを知ってるの?」


 プチンが僕の血液検査の結果が書かれた紙をじっと見つめて読む。


「あら!じゃあ、私の親族ね。

 ゾゾ・カーサについて何か知ってる?」


「祖母は、船の遭難事故で亡くなったと。悲しい出来事だったからか、あまり詳しくは聞いてなくて」


「そう。

 35年前、ゾゾ・ミショルの娘ゾゾ・カーサは、船の遭難でこの魔大陸のメキシコにたどり着いた。

 そこでエルフの戦争孤児3人と出会い助け合いながら生活したの。そして、そのうち1人のエルフと結婚して、7人の子供を残した。末っ子を産んで、すぐに亡くなってしまったけど。

 人類だから強力な魔法使いではなかったけど、生活に使う魔法の天才だった。

 そして、生活の保護者だったカーサに敬意を表して、子供達と孤児たちは、ゾゾを名乗ったの。

 みんなカーサが大好きだった。

 そのうち長男のゾゾ・アレクトスがメキシコに冒険者ギルドを設立し、さまざまな都市に支部を作ってきたのがここ20年よ。

 そして、ここリノスでは、3女の私、ゾゾ・プチンがギルドマスターをしているってわけね」


「そ、そんな。船で遭難した祖母が生きのびて、そんなにたくさんの子供を!

 そのことをゾゾ・ミショルに必ず、必ず伝えなくちゃ!

 喜ぶに違いないよ!」


 なんだか感動して、涙が溢れてくる。 7人の孫のことや育てた孤児のことをゾゾ長老に話したら、なんて言うだろう。


「ふふ。そうだね。伝えたいね。でも、どうやって伝えるつもりかしら?」


 僕になら、できる!


「魂の魔法で、遠隔地と筆談ができる。今はアレイオスとマツモトに限ってだけど」


「時空の魔法で水を持ち歩き、魂の魔法で遠隔地と筆談。

 あなた、とっても面白いわね。確かに戦闘には向かないけど、素晴らしく便利だわ。

 職業で便利屋なんて珍しいけど、確かに間違いない。

 スキル名は、そうだな「荷物持ち」と「伝言」かしら。説明書きを添えて水晶玉に登録しておいてね。

 マツモトに伝言を届けたいときには、お願いするわ。マツモトには末っ子のゾゾ・ショータがいるの。

 ショータは、辺境の大都市マツモトでゼロから冒険者ギルドを立ち上げようとしているわ」


 すごい勇気だな。まさにフロンティアスピリッツ。

 僕も勇気を出さないと!


「僕は、冒険者になりたいんだ!」


「どうして冒険者になりたいの?そんなに弱いのに」


 う。


「情報が欲しいんだ。

 行方不明の仲間を探すために。

 そして、この世界を救うために」


「確かに、情報は冒険者ギルドが一番大切にしているものよ。等級を上げれば上げるほど、得られる情報の質も量も増える。

 仲間を探すのはいいとして、世界を救うってどういうことかしら?」


「10年後、巨大な隕石がこの星、パナードを滅ぼそうとしている。

 その隕石からパナードを守るために12体ドラゴンが長い間、魔力を蓄えて準備をして、今まさに次々と目覚めているんだ」


「ほう。にわかには信じられないような話ね。

 でも、ドラゴンの覚醒は、冒険者ギルドでも確認していることよ。

 それで、それがピッケルとどう関係があるの?」


 正直に言うしかない。


「僕は、この世界の管理者、女神様でもお手上げな幸運を授かった。

 女神様は、僕の幸運を試し、調べるために人類が滅亡する運命にあるパナードに僕を送り込んだ」


 プチンは、椅子に座って、目をつぶって考えごとをしながら手を組んだ。

 そして、ギラっと強い目を僕に向けた。


「その話が本当か、嘘かは、この際一旦置くとして。。。話を続けて?」


「僕の幸運が人類を救うほどの幸運なのかを女神様は、隕石の試練によって検証するつもりだ。

 しかし、僕の幸運は、この世界の調和を乱し、破綻させるほどの幸運だった。

 僕がこの世界に来たことによって、調和のドラゴン、カンカラカンが死んだ。僕がドラゴンを殺したんだ」


「それでドラゴン殺しなのね。あの自然をも超越した巨大なドラゴンを殺したとしたら、それは罪なのか、勲章なのか。。。  

 それでこの女神様がパナードと呼ぶこの星はどうなるの?」


「今のままでは、11体になってしまったドラゴンでは、もう隕石を退けることができない。

 僕の幸運が隕石を退けるためにどう役立つのか?

 そのために何かやるべきことがあるのか?

 僕には、情報が必要なんだ」


「確かに冒険者ギルドにいれば、情報が手に入るわね。なにか知りたい情報があるの?」


「まず、僕と同じようにパナードに散らばった仲間を見つけたい。

 情報を集めている中で、離れ離れになってしまった。きっとパナードのどこかで、必死に生きているはずなんだ。

 あと、光のドラゴンがいる場所のすぐそばに、先代女神様の住んだ館があるらしい。

 そこにいるトトいう名前の異次元のゴーレムに会いに行きたい。きっと世界を救うヒントを知っているはず。

 でも、他にももっとたくさんの情報が欲しい。僕は、仲間も、この世界も救うと決めているんだ」


 ラカン、ガンダル、ヤードル。必ず見つけてみせる。トトにも必ず会いに行く。


「うーむ。狂っているようにも見えるわね。

 こんなに非力で、世界を救うなど、妄言もいいところよ。

 でも、その眼に嘘がないことくらい私にも分かる」


「お願いだ。力を貸して欲しい!」


「ピッケル、あなたは知らないようだけど、あなたでは光のドラゴンに近づくことができないわ。

 マグマの海の先に、強力な結界があって、誰も近づくことができない。それに恐ろしく強い魔獣が何種類もいる。最近は、悪霊まで出る始末なの。

 S級の冒険者でも、わざわざ近づこうとする人はいない」


「だったら、尚更、情報がいる。仲間にも危険が迫っているかもしれない。今聞いた話だって、貴重な情報だ」


「聞いてなかった?困難どころじゃない。前人未踏よ?可能性があるとでも?」


「プチン。僕は、前人未踏を越えて、ここまで来た。情報さえあれば、どうしたらいいかを考えることができる。僕は、諦めない。

 必ず、可能を見つける。希望はいつも、不屈の先にあるんだ!」


「あっははは!気に入った!

 私がピッケルの身元保証人になってあげる。

 冒険者になりたいのね?なったらいいわ。

 ピッケル、あなたは、面白い。

 それに、ピッケルの話が本当なら、冒険者ギルドにとってもあなたが必要ね。

 挑みなさい!ピッケル!

 冒険者ギルドは、世界平和のためにあるのだから!」


「ありがとう、プチン」


「ちょうど明日、登録テストがあるわ。  

 今夜は、冒険者ギルドに泊まるといいわね。私は、まだやることがあるから、もう行くわ。

 次に会うときを楽しみにしてる。幸運を祈ってるわ。ふふふ」

 

 プチンが無駄のない動きで、部屋から出ていく。あの身のこなし、相当な実力者に違いない。


 部屋にニーチェが入ってきた。


「ピッケル、よかったね。プチンが身元保証人になってくれたよ。通行証を作れるようになったから、この手紙を持って、役所に行ってみたら?登録テストにも、通行証が必要だよ」


「通行証!」


 これは、ありがたい。


「私も休憩の時間だから、案内してあげる。明日は、いきなり登録テストね。

 まずは、筆記テスト。税金の計算や冒険者のルールを覚えてね。

 それからダンジョン攻略に行くことになるわ。

 これが筆記テスト用のルールブックよ。

 リノスの登録テストは、難しくて有名なの」


 ぶ、分厚い本だな。しかも、読めない言語で書いてある。

 え?無理じゃない?この辞書みたいな厚さの本を明日までに?!


 ニーチェが意地悪く笑う。


「僕は、諦めない。必ず、可能を見つける。希望はいつも、不屈の先にあるんだ!って、かっこよかったな。下までピッケルの声が響いてきたよ。

 私、キュンとなっちゃった!」


 いや。あのその。それとこれとは。


「あははは。そ、そうだね。ちなみに次の登録テストは、いつなの?」


「不定期だよ。今回は、半年ぶりかなー」


 これは、やるしかない。ルーマンに力をかりて、翻訳して、徹夜でやるしかないか。

 税金の計算は、異国とは言えエタンに教えてもらった知識が役に立つはず。


「よし!まずは身分証を作りに行こう。不審者のままだと、そわそわするよ」


「そうだね!ご飯も一緒に食べよう!美味しいお店、いーっぱいあるよ!」


 ニーチェが僕の手を掴んだぐいぐい引っ張っていく。


わわわ!手を繋ぐ必要ある?!


 こうして僕は、ニーチェとお昼の太陽がギラつくリノスの雑踏に飛び込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ