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ピッケルとナミ

「熱いな。これが砂漠か。普通なら干からびて、とっくに死んでるな」


 ギラギラと容赦なく照りつける強烈な日差しの下を杖をついて歩いてもう丸3日。進めども景色が変わらない。ずっとずっと赤い砂と岩の砂漠。

 布を頭と顔に巻きつけて、目だけ布の隙間から出す。強すぎる日光と熱風と砂から目や身体を守らないと。


 魔法が使えなかったら、生身の人間が生きることなど到底できない過酷な環境。

 まだまだ魔法でできることが少ないけど、元の世界の自分よりも遥るかに生存能力が高くなっていることを砂漠が改めて教えてくれた。

 確かに魔法使いになったんだと、実感する。

 今、元の世界に戻ったら最強の人類だ。


 昼は、ジリジリと残酷な直射日光。夜は、ブルブル凍えるほどの低温という気温差。水場もなく、狩猟採取できる動植物もほぼ皆無。


 飴玉くらいの大きさの石を口に入れておくと、唾液が喉を潤してくれる。

 

 水も食料もポシェタにあるから大丈夫。特にポムルスの滋養強壮、体力回復、解毒の力がすごい。

 健康で体力が万全な状態を維持できることほど、ありがたいことはない。

 草舟のブーツも足を軽くしてくれる。

 夜は、筋トレと魔法の鍛錬、ガンダルに教えてもらった素振りの型の練習をする余裕もでてきた。

 肌寒い砂漠の夜は、トレーニングにぴったりでもある。


 しかし、何と言ってもミニゴーレムだ。

 魂が時空を越えるという意味がほんの少し分かってきた。

 なんと、僕のミニゴーレムが、遠く離れた身体に転移できることが分かったのだ!


 マツモトにいるカリンのラトタスだけじゃなく、なんとアレイオスの司書ゴーレムであるルーマンの身体に転移できる!!!


 これは、大発見と言っていい!


 残念ながら、しゃべることができないけど、筆談ができる。

 一体ずつしか動かせないから、日中はラトタスにカリンの護衛をさせている。

 夜は、筆談でカリンと会話したり、アレイオスのゾゾ長老に相談したりできる。なんとアシュリとも話せる!


 ちょうど時差があるから僕が眠っている間は、ゾゾ長老がルーマンを運用して研究している。

 カリンが朝のとき、僕は昼、アレイオスが夜って具合の時差だ。


 時差って概念をみんなに伝えるのが大変だった。たしかに、今まで必要なかったことだったし、地球が丸いことさえ意識していなかったのだから。


 カリンと筆談できるのもありがたいし、何よりルーマンが博物館の膨大な知識から重要な情報を教えてくれる。

 未だにカリン、ガンダル、ヤードルの消息が不明のままだけど。

 今は、無事を信じて祈るしかない。


 アシュリとの筆談は、毎回なんだかドキドキする。でも、筆談だとお互い素直になれるから不思議だ。


 今、僕がいるのは、シリア砂漠。

 ルーマンのおかげでアレイオスがある位置はブラジルの辺りだと分かった。カリンがいる場所は、日本の松本だ。

 そうは言っても、ルーマンの知識を得てミニゴーレムが書き出した世界地図の陸地の形は、僕が知っているものとはかけ離れていた。

 300メートルほと海面が上昇していて、日本が水没して細くなっていると思ったら、未知の大陸が隆起して内陸部まで水没した中国と地続きになっていた。


 ブラジル周辺は、大陸から離れた島になっていた。世界地図から見たら、ちっぽけな島だ。


 そして、メキシコあたりからヨーロッパが大陸で繋がっている。

 日本からユーラシア、アメリカ大陸が陸続きになって、巨大な超大陸になっている。


 もうなんの情報もなかった1日目とは違う。

 ルーマンのおかげで、僕とカリンの現在位置も、世界地図も分かっている。

 情報というのは、世界の見え方を決定する重要なものなんだ。改めて、ゴレゴレムに感謝だ。


 カリンと話した結果、カリンはカリンでアレイオスに自力で帰る方法を探すことになった。


 僕は、シリア砂漠を抜けて、光のドラゴン、ルミネリスがいる辺りに先代女神の館がある。そこにいるトトという異次元のゴーレムに会いにいく。

 それからアレイオスに帰ってカリンと合流する予定だ。


 早くカリンに会いたいけど、2人で決めたんだ。その代わり毎日筆談をする。遠距離恋愛なんて、不安しかないけど。


 それには、まずこのシリア砂漠を抜ける必要がある。あと丸5日は、歩き続けなければならない。

 

 ポタポタと落ちる汗からも純水を取り出して自動でポシェタに貯水する。

 こうしておいてよかった。出なければ、もう水がなくなってきていただろう。


「ねぇ、ピッケル」


 ん?

 

「ねぇってば!」


 え?


「私よ!ナミよ!」


 お!?ナミか!!!

 わわわ!


 慌ててバッグの中を確かめて、慎重にナミを取り出す。波の模様が入った拳大の卵。


「おはよう。

 ずいぶん暑いし乾燥してるわね。私をゆで卵にする気?うかうか寝てもいられないわ。

 ちょっと冷やせるかしら」


 おおう。そうか。そうだよな。


「ご、ごめん。水ならあるよ。ぬるいけど」


 卵に水をかけると、すぐに蒸発してしまう。


「澄んだ綺麗な水ね。すぐになくなってしまうけど、ないよりいいわ。ありがとう」


「ど、どういたしまして。

 おこしちゃったんだね。

ナミのこと、少し分かったよ。他の惑星から来て、この星に水をもたらした水龍なんでしょ?」


「あら?バレちゃった?

 もう少しミステリアスな卵でいたかったんだけど。

 まぁいいわ。正体が分かっても、まだ孵化するまでだいぶ時間がかかるの。

 でも、お話しくらいしてあげるわよ。」


 おお。お話ししてくださるのね。なんだか上から目線が気になるけど。


「もう少ししたら、オアシスがあるはず。ナミを冷やしてあげれるといいんだけど」


「あぁ、懐かしいわね。

 そのオアシスは、一万年前に私が作ったの。近くにリノス村があったわ。今もあるかは、知らないけど」


「ええ?一万年前にナミが?」


「そうよ。コフィとスピカと来たときにね。話せば長くなるわ」


 1人で歩き続けるよりも、話し相手がいる方がこんなにも楽になるなんて。


「そんなことよりピッケルとカリンは、あの後どうなったの?」


「だから、大きな猿の魔獣が現れて、この星の離れた場所に飛ばされたって言ったじゃないか」


「ばかね。そんなことはもう聞いたわよ。だから、あのあと2人っきりの夜はどうなったのかってことよ?

 卵の中にいても、ピッケルとカリンの頭の中が色気づいていることくらい分かるのよ」


ええ?!うぉ。恥ずかしい。

でも、一番恥ずかしいときは、寝てたのか。それはよかった。


「ええと、その」


「キスはしたの?」


「し、したよ」


「ほう。やるわね。それで?その先は?」


あぁ、恥ずかしい。

ええい、言ってしまえ!


「したよ!」

 

「あら、まぁ!」


あら、まぁ!じゃねぇ!恥ずかしいったらないぜ。


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