表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/195

アシュリとの文通

「本当にピッケルなの?無事なの?私は、アシュリよ」


 私は、はやる気持ちを抑えることができずに、挨拶も前置きもすっ飛ばして、大きな紙に言葉を書いた。


 昼だけど、ここは古代博物館。窓のない暗闇の地下遺跡。ファイポの灯火で字を読めるくらいの明るさになっている。


 ルーマンがその文字を読んだ。これで伝わるんだろうか?

 しばらくすると、ルーマンが筆を取って、インクに筆先をつけた。

 ドキドキする。本当にルーマンの向こう、はるか遠くにピッケルが?


 ルーマンの持つ筆の先、描かれる文字のひとつひとつを凝視する。


「アシュリ!嬉しい。アシュリに話したいことがたくさんあるんだ!ピッケルだよ。出発の時は、叱ってくれてありがとう。浅はかな弟子でごめんなさい」


 ピッケルだ。私のピッケルが生きている。よかった。

 遠い異国の地で危険に囲まれていることだろう。

 それでも、今、そこにいる。


「私も素直に褒めてあげれなくてごめんなさい。

 ピッケルがゴサスチ様から授かったゴレゴレムやレゴレは、未来を大きく変えてしまうほど、役に立ってるわ。

 私もそんな魔法を見つけるのが夢よ」


「いつも万能薬になる魔法を見つけるって言ってたもんね」


「そうね。でも、私自身が万能薬になるって決めたの。

人を救うのは、魔法じゃなくて、魔法を使う人だから」


「そうだね。本当にそうだ。出発の日もこんな風に素直に話し合いたかった。アシュリに褒めてもらいたくて、失敗しちゃったな」


「私も頑固だった」


「違うよ。アシュリが叱ってくれたから、今、命があるんだ。

 今もアシュリの教えを大切に、安全を一番に慎重に行動するようにしているよ」


「そう。よかった。本当に」


 涙がサラサラと流れてくる。嬉しいやら心配やら、気持ちがグルグルして大変だ。


 気がつくと夢中で言葉を書いていてた。

 大きな紙が字でほとんど埋め尽くされている。

 ピッケルと言葉を交わすのが楽しくて仕方がない。

 でも、楽しくないことも伝えなくては。


「私もしっかり生きるわ。蛮勇王ガラガラがまた侵攻してくるの。

私も戦うことになる」


「え?アシュリが?戦争に?」


「そうね。人と人の殺し合い。

どうして、人はこんなに死を求めるのかしら」


「北の魔獣の森に炎犬の王、ケルベウスが住んでいるんだ。

 力を貸してもらえるかもしれない。

 ケルベウスが威嚇をするだけで、無駄に人間同士殺し合わずに、蛮勇王ガラガラを退けれるかもしれない」


「どういうこと?

 炎犬が力を貸してくれる?

 魔獣が人に協力するなんて聞いたことがないわ」


「炎犬はね、魔王の飼い犬だったんだ。

 魔獣と会話できるラカンが話を通して、ケルベウスが僕らに力を貸してくれたんだ。

 今も、ケルベウスは味方をしてくれるかもしれない」


「確かに、炎犬を見かけたけど、攻撃されなかったって話が数日前話題になっていたわ」


「可能性があるかも。

 地下に僕の作った砂のミニゴーレムがあるはず。

 ミニゴーレムを連れて、北の魔獣の森に行ってみたら?」


「うまくケルベウスに会えたとして、どうやってケルベウスに事情を話すのよ」


「分からない」


 あははは。分からない、か。それはそうだ。でも、1人でも死ぬ人が少なくなるなら、考える価値がある。


「エタンとゾゾ長老に相談してみるよ。もしかしたらいい考えに繋がるかも」


「アシュリ、無理しないで」


「あら、私はピッケルより随分安全なところにいるのよ。ピッケルこそ、無理しないで。

 私は無事にピッケルに会いたいわ」


「僕もアシュリに会いたいよ」


 なんだかドキドキする。


「私も早く会いたい」


 どうして出発の日にこんな会話ができなかったんだろう。


 古文書で読んだ歌を思い出す。

 旋律や舞が失われて、歌詞だけが伝わる古代の歌。



君が去ってから

声は、風に散りさった。悲しみが枯れた木を濡らせ

どうして君と踊れないの

涙は、海を目指し、地を這い、闇に沈むよ


 この歌には続きがあった。再会を喜ぶ歌詞が。

 きっとこれは愛の歌なんだ。


 そうだ。私はピッケルを愛おしく思っている。その気持ちに素直になれるかどうかは、まだわからないけど。


「おやすみなさい。また明日」


「また明日ね。おやすみなさい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ