カリンと湯煙3人娘
「よし!ナツメ、ソルダム、ピオーネ!出ておいで、カリンに挨拶をするんじゃ」
エイゴン様の木の影から、3人の可愛らしい女の子が出てきた。
「初めまして、カリン。
草木の精霊エイゴン様の3つ子の1人、長女のナツメよ。草木と水の精霊でもあるわ」
ナツメの後ろに隠れて妹2人が恥ずかしそうにペコリ、ペコリとお辞儀をした。
「私、草木と土の精霊ソルダム。よろしくね」
「草木と雷の精霊ピオーネだよ」
おお。こんなにたくさんの精霊と一度に会えるなんて!
ナツメが明るい顔で微笑む。
「カリンもラトタスもお疲れの様子ね。
友達になりたいから、ナツメって呼んでね。
疲れを癒して、魔力を満たしてあげる。
恥ずかしいから黙って見ていてね。
それ!」
ナツメとソルダムとピオーネは、銀色のキラキラしたワンピースをひらひらと舞わせて、湖の上を飛び回ってダンスした。
くるくると飛び跳ねて、まるでダンスをしているみたい。
すると、キラキラと緑色に光る宝石のような蝶がちらほらと集まってきた。
だんだんと、森中から数え切れない光る蝶の群れが飛んでくる。
夕闇の湖面に無数の光が映って美しい。
あたしは、あまりに美しい蝶の群れと3人の舞いに、見入ってしまった。
そして、気がつくと身体の痛みや疲労がなくなっている。
この景色、ピッケルと見たかったな。こんな素敵な夜なのに、ピッケルはどこかで1人なのかな。ほんの少しでも、私の想いが届けばいいのに。
こんなに世界が素晴らしいことを、一緒に感じたかった。
ツーッと涙が頬をつたって落ちる。
生きるんだ。
あたしにも、まだできることがあるはず。
ナツメがあたしの側に近づいてきた。
「ねぇ、カリンも一緒に温泉行きましょ?」
ええっ?!
そんないきなり?!
でも、なんか断れない。
ソルダムが木の枝の上で呼ぶ。
「こっちこっち!早く!」
えっ!あんな高い枝の上に?
どうやって?こっちの枝から飛び移るのか。あたし、こういうの得意だ。
ナツメとソルダムがまるで猿のように木の枝から木の枝に遠心力を使って、ブランブランと飛び移っていく。
でも、それならあたしもできる。むしろ好きだ。こういうのは!
アレイオスではサーカス団にスカウトされたこともあるくらいだ。
私が木々を飛びうる横で、ピオーネが飛んで移動している。
ナツメとソルダムも本当は飛ぶこともできるんだろう。でも、あたしのように枝を飛び移って移動するのを楽しんでいるみたいだ。
ピュンピュンと木々の間を移動していくと、湯煙が経つ温泉にたどり着いた。
確かに気持ちの良さそうな露天風呂だ。温泉の周りにファイが群生していて、キラキラと赤く光っている。
この辺りでは、ファイなんて珍しくないんだ。
ソルダムが驚いてあたしを見る。
「カリン!すごいね。人間なのに、私たちについてこれるなんて」
「ソルダム、カリンには巨人の血がながれているのよ。それも赤い目の。
これくらい当たり前よ。
でも、確かに人間には、無理ね。あはは」
あははは。人間離れしてるとはよく言われる。まさか巨人の血のせいとは知らなかったけどね。選ばれし赤い目というのが未だ謎だけど。
ナツメもソルダムもピオーネも、恥じらいなくスッポンポンになっていく。素晴らしく美しい女体を惜しげもなく露わにする。
精霊たちは、全裸が好きなんだろうか。
あたしは恥ずかしいけど。恥を知らない精霊に恥じらっても仕方ないか。
ええい!
あたしも裸になって、温泉に入る。
自分で言うのもなんだけど、巨乳が4人。湯船に形のいいおっぱいがぷかぷかしている光景は、壮観だ。
温泉からわずかに硫黄の匂いがして、お肌がツルツルスベスベする。
「おお。カリン、いい身体してるわね」
あー!ジロジロ見るんかい!
やっぱり恥ずかしいな。
ナツメが自慢げに言う。
「私は、この身体でピカリ王にたくさん愛されて、10人も子供を授かったわ」
ピオーネが呆れて首を振る。
「またその話?もう一万年前の話よ。
女神様は、精霊にたった1人の男性と交わり愛するように願いをかけたの。
ナツメは、特に人とのまぐわいが大好きだったものね。
確かに気持ちよかったけど。あたしは3人産んだら充分だったわ」
うっとりした顔でピオーネが空を見上げる。
「それでも、いっぱい愛し合ったわ。子供は授からなかったけど、何十年も毎晩エッチしたわ。ピカリ王が死ぬ日も!」
ナツメがお腹を抱えて笑う。
「あははは!何度聞いてもその話、面白すぎる!死ぬ日くらい、我慢しなさいよ!」
ピオーネが顔を真っ赤にして反論する。
「何言ってるのよ!腹上死は、人類最高の栄誉よ」
全然、話についていけないんだけど。
ナツメが遠い目をする。
「素敵な日々だったわ。今は私達、一万年くらい、エルフたちにも会ってないわね。
マツモトでは、私たちの存在は、伝説になってるらしいわ」
ソルダムが笑う。
「伝説どころか、禁忌の森の幽霊みたいに言われてるらしいよ。
20世代も越えると、そんなもんかもね」
ピオーネが不満そうだ。
「ご先祖様に失礼ったらないよ!恩知らずで罰当たり!本当に化けて出てやろうかしら。もっとちゃんと敬わせてやりたいわ!」
ソルダムが聞きたくてウズウズしてるようにあたしに水を向ける。
「ねぇ、そんなことよりさ。カリンもいい女だし、人類で19歳だったら生殖可能だっけ?
彼氏は、何歳なの?」
せ、生殖可能?!なんてことを言んだよ。
「13歳。だけど。。。」
「13歳!それはなかなかね!人類の13歳なんて、ほんの子供じゃない!そんな年下の男の子が好みなの?!」
わわわ!
「いや!中身は46歳なの。前世の記憶があって」
危うくあたしが変態にされるところだった。
「え?46歳?!おっさんじゃない!ってことは、もうエッチしたの?」
うおー!!!
ソルダムもぐいぐいくるな。
どうする?
ええい!
「え。う、うん」
「うそ!すごい!妊娠は?ちょっとまってみてあげるわ」
ピオーネがあたしのお腹に手を当てる。
「ち、ちょっと何するの?」
だんだん慣れて来たけど、精霊にはデリカシーや配慮、人として大切なものが欠落している。そもそも人ではないのだから、言っても始まらない。
ピオーネが心から残念そうに言う。
「あー、まだかぁ」
そうなのか。
ソルダムがあたしの目を見て真剣に言う。
「もっといっぱいエッチして、身体の中に温かい新鮮な種をいっぱい出してもらいなさいよ。ふふふ」
ピオーネも話に乗っかってくる。
「そうよ!若いんだし、毎晩何度もしたらいいわ。いい?限界まで搾り取るのよ!キャハハ」
うわわわわ。やめてくれ!
「ちょっと、ソルダム、ピオーネ、いい加減にしなさい。カリンが恥ずかしがってるじゃない」
ソルダムが不満をナツメにぶつける。
「なによ、ナツメ。あなただって、聞きたかったくせに。
そもそもナツメが子沢山自慢し始めたからじゃない!」
えええと。よし、話を変えよう!それがいい。
「精霊と人は子供を作れるの?あたしの知り合いも水と風の精霊アクアウ様と付き合ってる人がいて」
ナツメが丁寧に教えてくれる。
「精霊と人の子は、エルフになるわね。近くにある街マツモトには、私たち子孫のエルフが5万人暮らしているわ。エルフは人より長生きで1000年くらい生きるのよ。
エルフと先代女神の飼い猫プトレマイオスが交雑して生まれた猫耳種も5万人くらいいるから、マツモトは結構大きな街になってるわ。
ちょっと世俗が乱れて、不健康な生活をしているけど。きっと混じった人間の血のせいね。
愛するピカリ王の血でもあるけど」
おお。そうなのか。
ソニレテ団長とアウアウ様の子供は、エルフになるのか。
マツモト、どんな街なんだろう。
ソルダムが羨ましそうに空を見上げる。
「アクアウは、これから人間と生殖してエルフを産むのかぁ。
いいな!毎晩愛し合っているのね!きっと今夜も!あぁ!きゃあ!恥ずかしい!」
妄想が過ぎるだろ!それに恥ずかしいなんて感情あったの?あたしに山盛り恥ずかしい思いをさせておいて!こら!
なんだかんだと楽しい時間は過ぎて、エイゴン様のところに帰ってきた。
グガー グガー
精霊って寝るんだ。
エイゴン様がいびきをかきながら、気持ちよさそうに寝ている。
ナツメが毛布を持って来てくれた。
「本当にいいの?柔らかいベッドも用意があるわよ?」
「いいの。自分でできることは、自分でしたいんだ」
「その気持ち、分かるよ。ピカリ王もよくそう言っていた。人の命は短いものね。
何かを用意する一つ一つも、生きることの大切な場面なんだ」
おお。たまには人の気持ちに寄り添ってくれるんだ。
彼女たちは、きっと分からないながら真剣にピカリ王の気持ちを考えて、ピカリ王も人の気持ちを理解してもらえるように一生懸命伝えてたんだろうな。もちろん、その逆も。
いいな。そういうの。
あたしとピッケルも、もっと分かりあう時間が欲しいのに。
「ありがとう。ナツメ。ソルダムとピオーネは?」
「カリンと話して楽しかったみたい。もう2人とも寝ちゃったわ。
遠慮なくズケズケと恥ずかしい質問をしてごめんね。悪気はないの」
ありがとう、ナツメ。その言葉が心に沁みるよ。
「いいの。楽しかったよ。ナツメもおやすみなさい」
「カリン、おやすみ」
ナツメがくるりと美しい背を向けて森の中に戻っていく。
湖畔ではラトタスが休んでいた。
平な場所にレゴレでコテージを作る。
ウイプナで机やイス、ベッドなどの家具を作っていく。だいぶこなれて来た。
コテージの中をファイポで暖かく灯す。
コテージにはいると、静かな1人の時間だ。
ふぅ
疲れたけど、楽しかったな。
ピッケルは幸運だから、きっと大丈夫。あたしさえ無事なら、なんとかなる。
ラカンはそもそも元ドラゴンだし、ガンダルとヤードルは歴戦の手練れだ。キーラはどうでもいいけど、しぶとい奴だ。きっと皆どこかで生きている。
はぁ。1人の夜は、寂しいな。
昨日の夜を思い出して、恥ずかしくてうっとりする。あんな夜が、もっと何度も。。。
だめだ。やたら寂しくなって来た。
ラトタスをコテージに入れてやろう。ラトタスがゆっくりとコテージに入って、イスに腰掛ける。
すると、スッと紙と筆とインクを取り出した。ポシェタを使えるんだろう。
行儀よく、インクに筆先をつけて、余分なインクを垂らして落ち着かせる。ピッケルと同じ作法だ。
そして、何やら紙に書き始めた。
なんだなんだ?
ラトタスの筆が走るのから目が離せなくなる。
えっ!
一体何を描き始めるの?




