2人は太陽の下に
ミニゴーレムが鍵を小脇に抱えて、一生懸命に走っていく。走る背中が小さくなって、どんどん見えなくなる。
でも、何も起こらない。もうそろそろ魔法陣の中央の神殿に着いた頃だ。
頑張れ!ミニゴーレム!
しばらくすると、地面が小刻みに揺れ始めた。
地震?!
こんな洞窟中で?!危険すぎる!
紫色の魔法陣が短く点滅する。それから眩しいくらい強く白く輝き出した。
揺れがどんどん大きくなっていく。大きな岩が天井から崩落し始めた。
ラカンがお座りしている姉のケルベウスによじ登る。
「危ない!ケルベウスに乗って避難するぞ!我に続け!」
まだ行けない!
「まだミニゴーレムが戻ってない!」
目の前に大きな岩が落ちて割れる。こんなの当たったら即死だ。
キーラも姉のケルベウスによじ登る。
「ピッケル、これ以上は危険です!」
くっ、仕方ない。
僕もケルベウスの背中によじ登る。
ガウ、グワ、グル
姉のケルベウスが崩落する岩を避けながら、ジャンプを繰り返して、カリンたちの元を目指す。
弟のケルベウスもついてきた。よかった。動けるようになったんだ。
ミニゴーレムは?姿が見えない。
崖の上でカリンが大きく手を振る。
「ピッケル!ここよ!」
姉のケルベウスが大きくジャンプして、洞窟の中の崖の上に着いた。
弟のケルベウスもヨレヨレしながらなんとか崖の上まで登ってくる。
天井から大きな岩がドサドサ落ちて行く。もう少しで生き埋めになるところだった。
でも、ミニゴーレムが。。。
まだ弱っている弟のケルベウスの背に小柄なカリンと僕が乗る。
身体の大きいガンダルとヤードルが姉のケルベウスによじ登った。
どんどん大きな岩が落ちてくる。
ここも危ない。早く外に出ないと。
ガウ、グワ、グル
ワウ、ブルン
2体のケルベウスが吠えて、出口を探しながら走る。
4人を背に乗せた姉のケルベウスが出遅れる。走りにくいのは当然だ。
途中で岩壁が崩れて、姉のケルベウスと洞窟の中で離れ離れになってしまった。
振り返る余裕もなく、地上を目指すしかない。
光が差し込む滝の流れる場所から弟のケルベウスが地上に這い出る。
正午の太陽で目が眩む。
ま、眩しい。
命からがら地上に帰ってきた。
ケルベウスがお座りをして、滑り台のようにカリンと僕が滑り降りる。
みんな、無事かな。
ミニゴーレムは?
カリンが頭に乗った岩のカケラを手で払い落とす。
「危うく生き埋めになるところだったね。みんな無事かな。。。あれ?ミニゴーレムは、どこ?」
弟のケルベウスの真ん中の顔が口をパカっと開けると、中から鍵を持ったミニゴーレムと1.5メートル四方くらいの大きさの黒い箱が出てきた。
戦利品を誇るようにドヤ顔のポーズを決めている。
よかった!
ミニゴーレムが僕に向かって走ってくる。
ギュッと抱きしめる。よくやった!よくやったよ、ミニゴーレム!埋もれなくてよかった。
バウ、ワウ、ブルン
ケルベウスの弟も喜んでいるみたいだ。
ミニゴーレムが黒い箱に飛び乗って、ぴょんぴょんはねる。
「これが神殿の中にあったの?」
ミニゴーレムがウンウンと頷いて、両手で鍵を僕に渡した。
黒い箱には、鍵穴がある。
カリンが鍵穴を確かめる。
「ピッケル、鍵を差し込んでみたら?」
「大丈夫かな。危ないものがでてきたら?」
「その時はケルベウスに乗って逃げればいいのよ」
確かに。そうか。
「じゃあ、開けれるかやってみるよ」
鍵を差し込んで回すと、ガチャっと音がして、箱がキラキラ輝き始める。
中から、台座に座った人型のロボットと小さな黒い箱がもう一つ入っている。
この人型ロボット、形は違うけど古代博物館のゴーレムと雰囲気が似ている。5本指の作りがそっくりだ。
西洋の騎士が装備するフルプレートアーマーに似た、明らかに戦闘用の形状をしている。
ミニゴーレムが騎士ゴーレムをじっと見つめている。
それから、操り糸の糸が切れたみたいにミニゴーレムがバタンと倒れた。
そして、騎士ゴーレムがギギギギと軋む音を立て始めた。
カリンが驚く。
「まさか!騎士ゴーレムに乗り移ったの?でも、なんか動けないみたいね。。。」
そうか、魔力がないんだ。
背中を見ると、蓋のついた穴がある。
博物館のゴーレムと同じだ。ここに魔力がある素材をいれてみよう!
足元に落ちていた弟ケルベウスの抜け毛を束ねて、騎士ゴーレムの背中の穴に入れて蓋を閉める。
騎士ゴーレムがまたギギギギと音を立てると、ゆっくり台座から立ち上がる。
おお!!!動いた!
なんかかっこいいぞ!男のロマン!
何ができるのか、強いのかどうか、分からないけど、なんだか胸が熱くなる。
あれ?ってことは博物館のゴーレムも同じやり方で動かせるのか?
しかも、離れていても?
カリンがあっけに取られている。僕と違って、あまり感動がないみたいだ。
「こっちの小さい箱も開けて!ピッケル!」
おお、もうこっちの箱に関心が移っている。
まだまだ、騎士ゴーレムが気になるけど。。。仕方ない。
手に持って小さい黒い箱を調べてみても、どうやら危険な感じはしない。
よし!警戒しながら開けてみよう。
鍵を差し込んで回すと、またガチャっと音がする。そして、同じように箱がキラキラ輝き始める。
中から拳大の卵がコロンと出てきた。この卵は、なんだろう。波のような模様の見たことがない卵だ。
卵を両手で丁寧に抱き抱える。
カリンが卵をじっくり見ている。
「図鑑でも見たことがない卵だわ。でも、すぐに危険な感じはしないわね。まだ分からないけど」
騎士ゴーレムがウンウン頷く。
カリンがよだれを垂らしている。
「この卵、美味しいかなぁ。食べたら新しい能力に目覚めるとか?」
いや、ちがうでしょ!
「古い卵食べたらお腹壊すよ!カリン」
いやいや、それも違うか。食べて力を得るようなものじゃない。だってこの卵。。。
「温かいんだ。ほんのわずかだけど、動いている気もする。きっと生きてる」
カリンが驚く。
「えっ?」
どこからか声がする。
「なによ、騒がしいわね。起こされたと思ったら」
カリンが卵を指差す。
「卵よ!ピッケル」
卵を見つめる。
「はじめまして。クフフフ。
お熱い2人ね。
でも、まだまだ寝足りないわ。おやすみなさい」
え?
卵がしゃべった!?




