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アシュリの決意

「ヒッヒッヒ!こりゃ見事じゃ。アシュリもご苦労じゃった」


「ゾゾ長老こそ。1人で半分以上の壁を作ってまだ余裕があるなんて」


 私とゾゾ長老は、隔離壁の上に立って、完成した壁を確認していた。


「いや、さすがに眠たいわい。あとゾゾファイガス10発くらいしか出せないな!ヒッヒッヒ!」


 隔離壁の上でゾゾ長老がポムルスをシャリっとかじる。

 私たちが作った王都の隔離壁を朝日が照らす。私の決意も照らしている。

 レゴレを使って人の背丈の5倍はある壁を一夜で作り切った。

 100人の魔法使いと100人の騎士の尽力の結果だ。


 エタンの指示で当初の計画より高めに建設された。

 エタンのことだ、先を見通して何か考えがあるのだろう。


 幸い怪我人はいても、誰も命を失うことがなかった。

 隔離壁の外まで来ていたゾンビ達もできる限り捕獲して、隔離する指示を出している。

 私たちの王都隔離作戦は、大成功だったと言っていいだろう。


 それに、おかげで皆レゴレの建築の経験値が飛躍的に上がった。アレイオスの建造も爆発的なスピードで進むだろう。


 隔離壁の内側で、わらわらと動いている3万体ほどのペカリ・ゾンビ達。


 朝日を浴びて、エネルギー補給のために動きを止める。身体から無数の葉っぱ、足から根が生えて、地中から水分と余分を補給し始める。


 私は、じっと白い花を咲かせたピカリ・ゾンビを観察する。


「ゾゾ長老、彼らを助ける方法に心当たりは?」


「ヒッヒッヒ!わしも同じことを考えておった。

 まだ分からないことばかりじゃ。何か手がかりがあるかな?」


「まず気になっていることが一つあります。

 カリンがパスカル村付近の死の森からペカリを持ち出した時、なぜペカリは、おとなしくしていたのか?

 パスカル村で数日保管していた時も問題がなかった」


「たしかに。

 ゾンビ化が確認されたのは、ガナシェ伯とその息子の研究チームが事故を起こした時からじゃ」


「そう。そして、今回の事態もガナシェ伯の実験が関係しているらしい。

 それにペカリは、本来白い花だったはず。でも、赤い花のペカリがゾンビ達に咲いていることもある」


「ヒッヒッヒ!ガナシェ伯を質問責めしたいところじゃが、当の本人は、おそらくペカリ・ゾンビになっちまっとるじゃろ」


「ええ。でも、研究室には資料が残されているかもしれない」


 ゾゾ長老の目が厳しく光る。


「まさかアシュリ、ククル魔法院のガナシェ伯の研究室に行くつもりではないじゃろうな」


 ゾゾ長老には何もかもお見通しだ。


「私たちも、今回の事故の加害者です。

 ペカリの焼却処分を強行すればよかった」


「それはそうじゃ。ガナシェ伯だけに罪があるわけではない。

 これは魔法使い全体の犯した罪じゃ。

じゃが、そうは言っても危険すぎる」


 私は、自分の思いをゾゾ長老にぶつける。


「行動せずして魔法使いになんの価値があるんですか?

 私たちは、人類の歴史に何か本当に価値があることを残したのでしょうか?

 ピッケルは、人類の滅亡が確定した世界として、このパナードに送り出さました。

 つまり、もともと私たちの魔法では世界を救えないということ。

 その上、目の前の命も救えないで、魔法に何の価値があるんですか?

 いや、魔法なんて関係ない。

 勝算なんて、行動しなければ分からない。

 行動して、自分の選択を正解にするしかない。

 それだけが非力な人間に与えられた偉大な力だと、私は確信します。

 私は、それをピッケルから学びました。

 魔法で全ての病める人を癒すこと、それが私と私の両親の夢でもあります」


 壁の上にカリファとメルロが登ってくる。

 近くで聞き耳を立てていたに違いない。


「アシュリ、まさか1人で行くつもりじゃないでしょうね」


「みずくさいな。私たちも一緒に行くよ。

 ゾゾ長老直伝のファイガスで、ゾンビなんて焼き尽くしてやろう!

 こんなこともあろうかと、私もカリファも魔力を温存してるんだから!」


 いや、そのゾンビを助けにいきたいんだけど。燃やしてどうする。

 私だって、魔力を温存している。壁を作る途中から、もう隔離壁の中のククル魔法院に行くことを決めていた。


「お前たち。そうか。。。

 わしも老いたな。

 認めたくないものじゃ、思考が硬直して、できない理由を探す自分を」


 ゾゾ長老には、私たちが帰る場所を守っておいてもらおう。


「ゾゾ長老は、安全なところで私たちの帰りを待っていてください。

 今回の作戦は、時間が勝負。機動力が必要です」


「すっかりわしも老いぼれ扱いじゃな。ヒッヒッヒ」


 齢100を超えているんだから、当たり前だ。最強の魔法使いとはいえ、短距離や長距離を走るのは無理がある。


「わかった。

 午前中までに、手がかりを見つけるのじゃ。

 昼には退却を始めろ。

 日が傾いたらゾンビ達が動き始める。

 この数のゾンビに襲われたら、ファイガスで燃やしまくっても、無事に逃げることはできないじゃろう。

 それまでに壁の上に戻るしかない」


「わかりました」


「本当に行くんじゃな。危険なだけではない。辛い作戦になるぞ。体力の少ない女、子供ほど、ゾンビになってしまっている。どういう意味か分かっているのか?場合によっては、襲ってくる子供のペカリ・ゾンビを自分のファイガスで焼くことになるんじゃぞ?」


 うっ。いや、それでも!


「はい。だからこそ、少しでも早く行かなくては!」


 私が頷くと、カリファもメルロも頷く。


「はぁ。やれやれじゃ。アレイオスを出る時にエタンが言ったとおりになってしまった。

 わしは、反対したんじゃ。隔離壁の中に行こうとするものなど、現れないとエタンに言った。

 しかし、エタンがやっぱり正しかった。

 隔離壁を作り終えて朝日が昇る頃合いで、ゾンビを救いに王都に行くものが現れるはずだと」


 カリファが驚いて、メルロと顔を見合わす。


「エタンがそんなことを」


「悔しいが、仕方がない。エタンの知恵を授ける。

 ペカリ・ゾンビにはいくつか種類があるらしい。それが何がヒントになるはず、ということじゃ。

 もしゾンビを救えるとしても、早い方がいいはずじゃ。時間が経つほどに、成功は遠のく。

 行くなら、今しかない。

 3人で力を合わせるのじゃ」


 カリファが私にウインクする。


「アシュリだけじゃ、危なっかしいしね」


 メルロが自信満々に言う。


「カリファだけでも慎重すぎてだめね。私がバランスを取る役割。それでいつもうまくいく」


 ゾゾ長老がカリファに小さな袋を手渡す。


「この鍵を持っていけ。エタンがクロロから借りたククル魔法院のマスターキーじゃ。

 内側からカギがかかっていても、これで開けられるはずじゃ。

 慎重なお前に託そう」


 エタンは、私達が壁を完成させた後、ゾンビを救いに行くことを読んでいたのか。

 おそらく誰が行こうとするのかさえ、分かっていた。


 「有志の騎士を募って連れて行け。無理をしすぎるなよ」


 よし、カリファとメルロと私で、ゾンビになってしまった人達を救ってみせる。

 ピッケルとカリンも戦っている。

 私も目の前のできることに全力を尽くそう。



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