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刺客の正体

 こんな路地裏で戦闘なんて。それに僕の目にはまだ敵が見えない。でも、確かに殺気のようなものを感じる。炎犬の杖を握りしめて、構える。

 カリンも隣で身構える。



「魔力は、しっかり回復してる。あたしが返り討ちにしてやるわ」



 バサッ

 ドサッ



 忍者のような装束の2人が、すぐ脇にある石造りの建物の屋上から落ちて、人形のように倒れる。これが刺客か?

 もう死んでるのか?!なんで?!

 何が起こってる?



 ドサッ



 また1人、上から落ちてきた。何が起こっているんだ?

 ガンダルが厳しい表情をわずかに緩ませる。


 ドサッドサッ

 

 また2人落ちてきた。

 倒れた5人の刺客の頭を不思議な矢が貫いている。氷の矢だ。



「ふぅ。ありがてぇ。ヤードルが来てくれた」


 屋上のどこかにヤードルがいて、刺客を氷の矢で射抜いているのか。なんて心強い味方なんだ。

 ガンダルがよく通る低い声を鳴り響かせる。


「お前は、やっぱり敵だったんだな。キーラ!」

 

 ガンダルが刃を向けた先にスッとキーラが目の前に姿を現した。後ろに刺客を4人従えて。



「やれやれ、敵と言われるのは不本意ですね。まぁ、確かに憎まれ役を買って出ている自覚はあります。

 言っておきますが、私は、人類とピッケルの生存を第一に考えているだけですよ」



 キーラが殺気を隠さずに近づいてくる。

 ガンダルが剣先を真っ直ぐにキーラに向けて、訊ねる。



「どうしてピッケルを狙う?!ピッケルの生存?殺すつもりじゃないのか?」



 キーラが隙を作らずに、じりじりと近づいてくる。

 どこから取り出したのか、怪しく光る人頭大の大きな魔石を手のひらに載せる。



「殺しはしませんよ。生捕りです。生きてさえいれば、四肢がなくても構いませんがね。ピッケルの命に関われば、精霊が助けに来るでしょう?」



 キーラの魔法は、強力だ。それこそアクアーボを使われたら、危ない。もしアクアーボが使われたら、カリンと2人で力を合わせて、対抗できるか。いや、かなり難しいだろう。

 ガンダルの表情が厳しい。



「おいおい、物騒だな。捕らえてどうするんだ?」



 キーラには、余裕がある。

 すでに僕たちは、キーラに追い込まれている。

 でも、近づいてくるということは、近づく必要があるということ。僕たちは、同じように後ろに後退していく。



「安心してください。私は、ピッケルとあなた、人類の味方です。

 邪魔をしなければ無益な殺生もする気はない。

 私は、ピッケルを時空の魔法で亜空間に隔離、封印したいだけ。

 現世と区切られた場所に隔離することで、ピッケルの命を守り、この世界を試練から逃れさせる」



 後退しながら会話をして、時間稼ぎをしても活路が生まれるわけでもない。でも、今は、それしかできることがない。

 キーラも僕らを殺そうと思えばすぐにできるはずだ。でも、そうしない。

 ガンダルがキーラに言葉を投げかける。



「試練が課せられいるのはピッケルだけだろ?時空の魔法?お前がなぜそんな魔法を?」



 キーラが足を止めた。

 袋小路になってしまった。壁を背にして、逃げ場がない。砂利を踏んでガリっと砂が鳴る。

 ギラギラと太陽が眩しい。

 キーラは、建物の影の中で、不敵に笑う。



「あなた方は、まだ知らされていない。だから、ピッケルを野放しにして、行動をともにしようとさえする」



 カリンもキーラを睨みつける。



「あなたに何がわかるのよ!ピッケルはあたしの命の恩人なの!ピッケルがいなかったら、もう死んでるわ!」



「俺もピッケルに命を救われた1人だ!」



 キーラが呆れた顔をしてカリンとガンダルに言い返す。



「そもそもピッケルがいなければ、死にそうになることもなかったのでは?」



「そんな事ありえないわ!あたしが川で溺れ死ぬところを、ピッケルが自分の命を顧みず助けにきてくれたもの!」



 今度は、キーラがカリンを睨み返す。



「川で溺れたことがピッケルの試練のせいだとしたら?」



 カリンが必死に言い返す。



「そんな何もかもピッケルのせいにするなんて、理不尽よ!あたしは、そうは思わない!

 ポッコロ様だって、アウアウ様だって、ピッケルとあたしを助けてくれたわ!」



 キーラが、ふぅと、失望したように息を吐く。



「やれやれ。いいですか?

 他でもない精霊たちが、ピッケルの試練を恐れて封印しようとしているのです。

 ある日、闇の元素精霊アスタロトと時空の精霊パルキオが私に加護を与えました。彼らも女神様からピッケルを守護するように使命をあたえられています。だからこそ、ピッケルを封印しろと命じ、私を使徒にしました。

 氷と雷の精霊もピッケルを封印した方がいいと考え始めています。封印派の精霊がだんだん増えているのです」



 キーラが精霊の使徒?!

 

 やっぱり、強すぎて僕たちが敵う相手じゃない。

 ガンダルの眼がまだ死んでいない。

 何かの策があるのか?何かを待っている。

 ガンダルが質問を続ける。



「なんで封印する必要がある?」



 キーラの手の上の魔石の光がどんどん強く紫に光る。



「あなた方は知らないでしょう。

 調和の元素精霊たちがピッケルが生まれたことによって悪霊になってしまったことを。ピッケルの桁違いの幸運によって調和の要素が変質してしまったのです。

 調和のドラゴンも、急速に弱っています」



 ドラゴンが弱る?僕のせいで?ドラゴンが弱れば、隕石に対処する12体の連携が崩れてしまう。そうすれば、この星が隕石の衝突を避けられなくなるかもしれないってことか?



「そんな事が?!キーラ、本当なのか?僕のせいで?」



 僕のせいなら、大変なことだ。僕は、世界そのものに試練を!?



「そうです。恐ろしいでしょう?

 ピッケルの幸運が世界を試練に巻き込んでいます。強力で危険な幸運です。

 幸運に対して、それに見合う試練が追加で与えられようとしています。それによって世界の調和が破綻しようとしているのです。

 一刻も早くピッケルを現世から隔離、封印しなくては。調和のドラゴンの命も風前の灯火です。

 調和のドラゴンが死んだらどうなります?

 隕石がこの星を破壊するのを避けることができなくなるんですよ?

 あなたたちにとっても、ピッケルと一緒にいるのは、危険です」



 カリンがキーラに噛み付くように言い返す。



「大地の割れ目に向かおうと言っていたのは、嘘なの?」



「嘘じゃありません。大地の割れ目に向かう途中で亜空間に封印する予定でした。でも、予定変更です。

 水のドラゴン、リブレイオスがタイトスと合流しようとしています。

 何かがドラゴン達の予定を早め、狂わせている。

 急ぐ必要があるのです」



「なんで朝は、あたし達の味方の振りをしていたのよ?!このペテン師!」



 キーラの手の上の魔石が力強い光を放ち始める。



「スキがなくて、無理だったんですよ。

 ゾゾ長老は、恐ろしいお人だ。まさか100歳を超える老人があれほどまでに強いとは。強いとは聞いていましたが、桁違いでした。闇の魔法と時空の魔法を使えば対処できるかと思いましたが。

 一瞬でも不審な動きをしたら、私などすぐに殺されてしまいます。お手上げでしたね。

 ピッケルがゾゾ長老から離れている今、あなたを亜空間に隔離、封印します」



 キーラが手を上に掲げると、ヤードルが放ったであろう氷の矢が空中でピタリと止まる。



「シンクーハ!!」



 紫色のフラッシュのような強烈な発光があった。

 キーラが手を振り下ろすと矢が飛んできた方向に戻っていく。

 屋上に人影。ヤードル、あんなところに潜んでいたのか。



「ぐわっっ!!」



 屋上にいたヤードルが自分が放った矢を受けて倒れる!どうやったんだ?未知の魔法?



「彼がヤードルですね。水の魔法と氷の魔法を掛け合わせて氷の矢を作る弓矢の名手。厄介な男です。

 闇の魔法で矢に込められた殺意を反転させました。射手に3倍の殺意を込めて矢を返す魔法です。彼には避けられなかったでしょう」



 ガンダルが怒る。



「そんな魔法でヤードルは死なない!」



「さぁ、それはどうでしょうか?

 さて、邪魔者がいなくなりました。魔石の準備も整いました。ピッケル、まだあなたが力をつける前に、封印します。

 しかし、本当に難しい魔法です。意義や価値を伝える事が発動の条件とはいえ、いちいち説明するのが難儀でしたよ。

 魔石の起動にも時間がかかるし、大技すぎて詠唱までする必要がある。やれやれ、やっと大詰めです」



 キーラが手の平に載せた魔石が太陽のように強い光を放つ。昼間でも眩しいくらいの明るさだ。

 ゾワゾワと鳥肌が立つような嫌な感じがする。



「無数の次元の中から、異なる世界への門を開け、マフーバ!」



 キーラの手元に尋常ではない魔力が集まる。


 ズピピピ!!!


 僕の真下に紫色の時空の割れ目のようなものが現れて、どんどん大きくなっていく。

 まずい、割れ目に落ちる!!!



 ガンダルがガッツポーズで叫ぶ。



「最高のタイミングだぜ!!

 いぃよっしゃ!!やっときた!間に合った!ガッハッハ!」



 ギャァ!!!!



 不意に、空から飛竜が飛んできた。



 なんで?!どうして?!


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