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朝市の食べ歩き

 休日の朝市がこんなに賑やかだなんて。都市建設の労働者とその家族で3万人集まってるとは聞いていたけど。王都からアレイオスに避難してきた人も朝市に来ているんだろう。


 ガナードに転生してからずっと田舎暮らしだったから、あまりの人の多さに面食らう。

 さまざまな屋台が出て、食事だけでなく、服屋や雑貨、調味料や家畜まで提供している。スパイスや肉やパンの焼ける香ばしい香りが満ちていた。音楽を演奏している人やその周りで踊ったり歌ったりしている人もいる。


 仕事を求めてゴリアテ国、マルキド国からも労働者が集まる国際都市。

 食材、料理、音楽も多国籍のものが入り混じっていて面白い。

 そもそも全てが異世界の僕にとっても、すべてが新鮮で刺激に溢れている。


 夜は、飲屋街に変わるというから、さらに盛り上がることだろう。


 今来ているジョイス市場の朝市は、サッカーのコート2面分くらいの広さに屋台が所狭しとひしめいて、通りは人で溢れている。毎週の休日に朝市が3ヶ所で開かれて、ジョイスが中位の規模だというから驚きだ。1番大きな魚市場のトトラム市場の朝市が、今日は、お休みらしい。


「なんでガンダルもついてくるのよ!」


「カリン、逆だろ?刺客が街にいるのに、なんでピッケルがアゴラスから外出できたと思う?

 俺がドワラゴンの魔道具屋にピッケルを連れていくってんでアゴラスからの外出許可が出たんだ。それにカリンがついてきたんだろ?

 感謝されてもいいくらいだ」


「あたしが言いたいのは、そういうことじゃないの!」


 カリンがローブの下にフリルのついたワンピースを着ている。草舟のブーツも女の子らしいデザインにしてもらったみたいだ。草舟の腕輪も。


「まぁまぁ、カリンもガンダルも落ち着いて。僕が朝ごはんをご馳走するからさ。

 2人のおすすめの屋台を教えてよ。右も左も分からないんだ」


「俺の1番のおすすめは、魚市場の海鮮丼だな。春の青魚がうまいぞ。だが、ドラゴンが海上に現れてから海に飛竜が集まって、怖くて漁に出れないらしい。

 漁船が朝から一隻も出てないってよ。仕方ないが、魚が食えないのは、どうにかしないとな」


「トトラムの朝市もお休みだもんね。それでいつもよりジョイス朝市に人もお店も集まっているのね。

 焼きたてクロワッサンにチーズとスモークフィッシュ、春野菜のマリネを挟んだサンドイッチが食べたかったな」


「ジョイスの朝市ならコーヒーと一緒にクロックムッシュが食べれる店がおすすめだな。カリンは、知ってるか?」


「もちろんよ!パッキンスの店でしょ?クロックムッシュって、ピッケルが教えた料理よね。それが今は、アレイオスの朝の定番になってるのよ?

 それか、豚や鶏のスープに炊いたお米や麦を入れて食べるお粥のお店もおすすめよ。寒いから身体も温まるしいいかも」


「おう!朝粥がいいかもな!俺も好きだ。リーシェンの店がいいだろう」


「そうね。こってりならリーシェンの店、あっさりならヤンローの店がいいわ。どっちも人気店よ」


「そ、そうだね。じゃあ、今日は、あっさりにしようかな」


 なんだかんだでカリンとガンダルも馬が合うらしい。仮装のために、フード付きのコートを着て、3人で朝市を歩いていく。

 あの宝石屋はぼったくりだとか、あのソーセージ店は他の朝市にも店を出して繁盛してるとか、カリンとガンダルが色々な情報を教えてくれて楽しい。


 各国の各地から集まった人種も色々だ。髪の色が色々あるだけじゃなく、身体が大きい人や耳が尖った人、背の低い筋肉質の人もいる。肌の色も様々だ。

 どの人も人類に分類されているとのことだが、元の世界のりも幅広く多種多様な人がいる気がする。

 出身国や地方によって、かなり個性が分かれるらしい。


「あぁスープがしみるね。春の野草と煮豚も美味しい!結構しっかり味がついているんだね。麺も好きだけど、粥もすごい美味しいよ。カリン、ガンダル、ありがとう。アレイオスの朝がこんなに楽しいなんて」


「労働者は、濃い味付けが好きだから、しっかり味がついてる。それに量も大盛りで、安いんだ。朝市は賑やかで楽しいよな」


「あたしは、小盛りで充分よ。それに頼んだらその場ですぐに出てくるのがいいわよね。あとで甘いものも食べよう!」


 ヤンローの店前の路上には簡単なテーブルと椅子が30席ほど並べられて、満席だ。

 値段も300イエから400イエで安い。

 休日だけあって、家族連れも大勢いる。店の厨房は、大忙しだ。


 周りでは、ドラゴンの話ばかり飛び交っている。タイトスだけでなくて、海上のドラゴンまで出たにしては、みな落ち着いていた。

 ドラゴンの進路からアレイオスが外れているのもある。

 そもそもアレイオスがドラゴン対策の避難用の都市として計画されている場所だからというのもあるだろう。

 エタンがいるからアレイオスは大丈夫、という声も聞こえてきて、我が父ながら誇らしい。

 エタンが総督の初仕事として炎犬を討伐したことも、もう知れ渡っている。

 ドラゴンは敵じゃない。隕石からこの星を守ってくれるんだという、声も聞こえてきた。

 確かにそうだ。人類は、隕石からこの星を守るというドラゴンの使命の邪魔をせず、生き延びればいい。

 飛竜を目撃した人も大勢いるようだ。飛竜が山の上に何頭も群れているという方が、遠くのドラゴンより恐怖になっているみたいだ。


 腹ごしらえが済んで人心地ついていると、少し離れたテーブル席で喧嘩が始まった。どっちかがぶつかってきたとか、貸した金返せとか、そんなことを言って騒いでいる。隣の席の赤ちゃんがギャン泣きしている。


「ちっ、仕方がねぇな。

 おい!お前たち、店の迷惑だ、表に出な。

 どっちがどうかしらねぇが、これ以上店で騒ぐなら、副騎士団長ガンダルが間に入ろう!」


 立ち上がったガンダルの地鳴りのような大きな声が店中に響くと、一瞬で静かになった。赤ちゃんさえも泣き止む。

 喧嘩していた2人は、ガンダルに睨まれて、おどおどしている。


「お、俺たち本当は、仲良しなんです!な、兄弟!

 ドシド、ガンダルは、やべぇって!」


「お、おう。ちょっと興奮してお騒がせしちまったみたいで。失礼しやした!行こうか、メンガ」


 2人は、すごすごと食器を片付けて、出ていく。

 店主がガンダルにお礼をしに出てきた。


「ガンダル様、いつもありがとうございます。みんな喧嘩っ早くて。でも、悪い奴らじゃねぇんです。

 ドシドとメンガは、店の常連なんです。夜も喧嘩しながら2人で一緒に酒を飲んでますよ。

 何も家族連れもいる朝っぱらから喧嘩することもないでしょうに。

 騒ぎが大きくならなくて助かりました」


「おお、ヤンロー。なぁに、いいってことさ。店が繁盛していて、何よりだな。また、夜飲みにくるよ」


 ヤンローがガンダルに酒をご馳走する約束をして、足早に厨房に帰っていく。


「ちょっと怖かったかけど、ガンダルがいて助かったわ。あたし、喧嘩は嫌よ。たしかに、街を歩いていると、物騒で怖い時があるわ。暗くなったら出歩かないもの」


「こんなこと日常茶飯事だ。

 治安がいいとは言えないが、みんな他所者同士、ぶつかったり喧嘩しながら、ガチャガチャやってるのさ。

 野暮で粗雑だが人情味があって、俺は好きだな。

 夜は、もっと騒々しいぞ。夜出歩かないのは、賢明だな、カリン。若い女の子には、危ないぜ」


 そりゃそうだよな。ここは都市開発の真っ最中。気性の荒い肉体労働者も大勢いる。


「そろそろ魔道具屋ドワラゴンの店が開店するころだ。丘の上に行こう。

 ゾゾ長老からの注文も預かってるしな。ゾゾ長老から昼過ぎまでに帰れと言われてるんだ。遅く帰ったらめちゃくちゃ怒られるぜ」


 大男のガンダルが小柄な高齢者のゾゾ長老を恐れているのが面白い。たしかに、気持ちは分かるけど。


 アレイオスの小高い丘の上には、東側の商業区画と西側の行政区画がある。総督府があるのは丘の真ん中だ。丘の後ろには山脈が連なり自然の城壁になっている。

 

 途中、ピーニャというエッグタルトとコーヒーの店に寄ったりしながら、丘を登っていく。新鮮な卵を使った焼きたてのピーニャは、甘くて美味しかった。

 ジョイス朝市から徒歩で40分ほど登った。


 丘の上から港や居住区、市場のあたりを見下ろす。3年でこれほどの規模の街が急造されたなんて圧倒されてしまう。まだまだ建設中とは言え、すでに充分大都市になっている。


 丘の上は、都市が計画される前からある旧イオス村の古い建物が多いらしい。500年以上前からある建物もザラにあるというから驚きだ。地下に古代遺跡があるのもわかる気がする。


 人通りのない静かな狭い路地を歩いて、石造りの階段をぐねぐねと登って、やっとドワラゴンの店に着く。

 石積みの壁の店の重厚な木の扉には、見事な金属細工が付けられている。


 これが魔道具屋ドワラゴンか。。。

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