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炎犬討伐は死の匂い

 夜明け前、アレイオスの入り口の門前に炎犬が20匹ほど群れている。


 お、多いな。


 こちらはゾゾ長老をはじめとして、カリファ、キーラ、ガンダル、カリン、僕。

 他の魔法使いは地下研究所アゴラスに残してきた。炎犬に立ち向かう実力と勇気があるものなど、ほとんどいない。

 アシュリは、こなかった。

 ゾゾ長老が総督府を守るためにアシュリを留守番にしたからだ。

 残念だけど、気が楽なのもある。変に気負わずに済む。


 実力だけでなく、炎犬に対して数でも負けている。

 炎犬のおかげで辺りは明るく灯されていた。地面が焦げる嫌な匂い。

 炎犬の匂いは、死の香りだ。3年前が頭によぎる。

 せめても救いは、飛竜も他の魔獣の姿も見えないことくらいだ。



「ほーら、やっぱりピッケルの水の魔法、炎犬には効かないじゃない。

 水の壁で炎犬の炎を防げたのが進歩ね。それくらいあたしにもできるけど」



 くっ。カリンに何も言い返せない。悔しいけど炎犬を前にして、誰も有効な攻撃ができていない。カリファとキーラでさえ、水の壁で皆を守るので精一杯だ。

 時折、水の刃を当てるが、全く効かない。

 炎犬がタイミングを変えて3匹ずつ炎の波状攻撃を仕掛けてくる。地獄だ。

 カリファが悲鳴を上げる。



「もう限界です!このままでは、全滅する!」



 ゾゾ長老が鬼のように厳しく叱咤する。



「弱音を吐くんじゃない。

 ほら、水の壁が足りないよ!頭を使って攻撃するんじゃ!

最弱の魔獣より、さらに弱いままでいいのか?!」



 普通ならもう全滅している場面だ。まだ生きている分、3年前の炎犬との敗戦から少しは進歩している。でも、炎犬を倒すには、まだ圧倒的に力が足りない。

 ゾゾ長老があくびをしながら、呆れている。



「だめじゃ、だめじゃ! 

 まったくだらしないったら、ないね!

 そんなんじゃ、100年たっても炎犬など倒せんわい。

 ほれ、死ぬこと以外はカスリ傷じゃ。

 もっと粘らんかい!工夫するんじゃ!」



 カリファが水の壁の隙間から炎犬の炎を受けてしまった。左の肩が燃え上がる。かなりの火傷を負ったはずだ。



「くっ!まだまだ!」



 また、水の壁を作り直していくけど、もう限界だ。

 

「ヒッヒッヒ!では、わしの出番じゃな。

 いいか。炎犬の骨は、鉄の強度に近いほど頑丈じゃ。

 水の刃や水弾を当ててもびくともせんよ」



 ゾゾ長老の言う通りだ。それに防戦一方では、こちらが不利だ。



「アクアウ様が傷一つつけずに、炎犬を倒したことを思い出すんじゃ!そのサンプルを研究したじゃろう?

 炎犬を倒す方法は、3つ。

 まずはこれじゃ。

 最初だけ、詠唱付きで見せる。一回で覚えろよ?

 水よ集まり、塊になれ!アクアーボ!」



 炎犬の1匹が、あっという間に水に包まれて水球の中で一瞬もがいて、すぐに息絶える。

 すごい!瞬殺!

 水球がバシャンと弾けて、びしょびしょで横たわる炎犬。

 あの時と一緒だ。そうか、溺死!



「そう。炎犬は泳げない。

 水に囲まれるとすぐに溺れてしまうのじゃ。

 驚くのはまだ早いぞ。

 ついでに見せてやろう。それ!」



 今度は、無詠唱どころか無言で3匹の炎犬をポンポンポンと一気に水球で包む。炎犬がなす術もなく簡単に溺死する。

 無双だ。強すぎる。炎犬が雑魚に見える。

 SSグレードは、魔力を扱うスピードや威力が桁違いだ。

 しかも、この魔法、対人戦闘でも強すぎる。鼻と口に水を集めたら、人間なんかすぐに死んでしまう。ゾゾ長老が味方というか身内でよかった。



「わしなら一気に何十匹か倒せるわい!ヒッヒッヒー!

あとは、水の刃の攻撃力を100倍くらいにした、わしの水の刃で関節を狙えば倒せんこともない。ちなみに水の刃の古代の名前は、ジェッカじゃ。ほれ!」



 炎犬が一瞬で多数の強力な水の刃でズタズタになって、5匹目の骨が横たわる。



「じゃが、これはSSグレードでやっとできるくらいじゃ。効率が悪い倒し方じゃな。

 残りの炎犬は、お前たちに置いておいてやろう」

 

 水の刃で倒すアイデアは悪くなかったということか。でも、威力とスピードが全然足りないんだ。



「そして、もう一つの倒し方を教えてやろう。

 試すのは初めてじゃが、多分いけるじゃろ。

 ピッケル、水の壁を出すんじゃ。古文書にある古代の名前を使え。そのほうが強い魔法になる。

 ウォーバリーじゃ。」



「は、はい!!」



ウォーバリー、できるかな。やるしかない。



「ウォーバリー。」



 「貧弱、貧弱!そんなんじゃ、一瞬でまた黒焦げになるわい。やり直し」



「ウォーバリー!!!!!!」


「ふん。まぁいいじゃろう。

 ピッケル、お前はガンダルと組め。ガンダルの体にウォーバリーを着せるんじゃ。

 ガンダルは、ウォーバリーの水中で息を止めて炎犬に突撃。

 水魔法をかけた斧槍で押し潰すのじゃ。

 炎犬の関節を狙え。関節部分は、それほど強くない。斧槍でぶった斬れるはずじゃ。

 ほれ、ガンダル、先に走れ!」



 指示を終えると、ゾゾ長老がポムルスをポケットから出して、シャリっとかじる。



「ピッケル、命を預けるぞ!」



 ガンダルが、迷いなく走り始める。



「はい!!!」

 

 こっちは大変だ。

 なんてめちゃくちゃな戦法なんだ。

 早くしないと!

 炎犬が容赦なく炎を吐く。



「ウォーバリー!ガンダルを守れ!」



 鬼の形相で突撃するガンダルを水の壁が包む。

 

 さらに炎犬が炎を吐いて、水の壁が目減りしていく。



「ウォーバリー、もっと!!!」



 水の壁がガンダルを守る。

 でも、水の中ではガンダルが上手く動けない。



「ヒッヒッヒ!いいぞ。

 ピッケル、水の中のガンダルを動かすイメージじゃ!」



 どう言う感じ??こんな感じかな?

 カリンが船を動かしていたみたいな感じかな。カリンにボトラを教えてもらえばよかった。

 いや、少なくとも一度この目で見た。ゾゾ長老の口癖を思い出す。見たら、一回で覚えろ、だ。



 水中で自由自在に動くガンダルをイメージする。頭の中でイメージができては、崩れる。目の前の現実と一致しない。

 いや、まだまだ!

 水の中をぎこちなくガンダルが動きはじめる。下手くそな操り人形みたいにしか動かせないけど、動かせた!



 こんな感じか!行け!

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