表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/195

旅立ちは青空の下ではなく

 ゾゾ長老の館に行ってから5日経って、ついに明日が旅立ちの日になった。

 部屋がある2階の窓の外には、満月と星空がきらめく。タイトス観測所は、廃村になり真っ暗な土地の高台にポツンとある。

 何度も旅の計画を確かめる。

 まずアレイオスから船に乗って、隣のガルダ国の港街ヤゴナにいく。そのあと陸路で、その隣のソトム国にある大地の裂け目を目指す。

 アレイオスでは、3年ぶりにカリンに会う予定になっている。

 カリンの旅立ちの日が思い出される。

  

 エタンが身分証、パスポートのようなものを用意してくれた。ロム・ピッケルの名前は諸国に知れ渡っているので、ユウマ・ピッケルに変えてもらった。ユウマは、元の世界の名前だし、違和感がない。公的なものなので、ロム・ピッケルではないと言う嘘の証明にもなる。この身分証が今日やっと届いて、明日出発が決まった。

 草舟のブーツも足に馴染むようになってきた。

 明日は、晴れる。春の陽気で暖かいだろう。

 朝食に好物のクロックムッシュを作ってもらう約束をプルーンがしてくれた。

 見送りはエタン、パンセナ、ゾゾ長老、召使いのプルーンだけ。

 どんな言葉を伝えたらいいんだろう。言葉にできない感謝を。

 あぁ、ソワソワして眠れない。部屋をうろうろと歩く。



「よく考えたら、アレイオスに行くどころか、村を出るのも初めてだし、楽しみだ。。。なっ!あれ?!」



 地面がひっくり返るような強い揺れ!窓ガラスが割れて、本棚が倒れる!

 立つことも、何かを掴むこともできずに床に転がる。震度5?いやもっとか?



「ひっ!!」



 たまたま掴んだものが杖だった。なんの支えもない!

 ゴゴゴ!

 

 地鳴りと一緒にさらに強い揺れが!

 窓を突き破って、2階から家から飛び出す!



「うわぁぁ!!!」



 意外に地面が近い?館が崩れているんだ!

 月明かりの草むらに投げ出された。



「いててて」



 でも、怪我はしていない。

 暗くて周りがよくわからない。皆、無事だろうか?



「暗いわね。ファイポ!」



 パンセナが無詠唱で灯りをつける。大きめの灯りがついて、月明かりしかない辺りを照らす。



「ピッケル?!大丈夫?エタンは、どこ?」



「旦那様!ピッケル坊ちゃん!あぁ!なんてことでしょう!」



「僕は、大丈夫だ。大地震だな。皆、怪我はないか?」



 良かった。パンセナもエタンもプルーンも無事で。

 タイトス観測所の館が倒壊して、一階がぺしゃんこだ。全員無事は、奇跡と言ってもいい。

 ランプの火から燃え広がったのか、館が炎上して、バチバチと音を立てる。焦げた嫌な匂いがする。



「ゾゾ長老はご無事でしょうか?死の森が燃えています!」



 プルーンがおろおろとしている。エタンがたいまつを手にして、先導する。



「様子を見に行こう!みんな一緒に行動するんだ!」



 バリンッ、ガガガッ!!

 体長20メートルを超える蜘蛛が巨大な足で燃える館を踏み潰して現れた。

 バリバリバリ!!

 でかい!なんて大きさだ!一目で敵わないことが分かる。エタンが迷わず判断を下す。



「な。なんだあれは!見たことがない魔獣だ!なぜここに?もう、逃げるしかない!」



 ダメだ。大蜘蛛がこっちに気づいている。背中を向けたら、やられる。



「父さん、みんなを連れて先にゾゾ長老の館に!

 ここは僕が食い止める!」



 パンセナがパニックになっている。



「ダメよ!ピッケル!あんな巨大な魔獣に敵うわけない!」



「時間稼ぎだけでもしないと、全滅だって!僕に任せて!」



「く、ピッケル!分かった!必ず来い!お前の幸運に賭ける」



「ゾゾ長老の館に向かう時、空にファイガスを1回打つから」



「わかった。ピッケル!生きて合流しよう!空を見ておく!」



「絶対無理はしないで!」



 無理をしなきゃいけない時がある。それが今だ。

 エタンとパンセナとプルーンが、丘を駆け降りていく。



「やってやる。もう、逃げてばかりの僕じゃないんだ」



 僕は、大蜘蛛に対峙する。杖を握り締める。1日1回の大技だ。なによりも、初めて使う。ぶっつけ本番だ。



「ファイガス!」



 無詠唱で、充分な火力を出せた。これなら大熊だって焼き殺せたはず!上出来!

 でも、目の前にいるのは大熊より桁違いに巨大だ。直撃した炎の攻撃が全く効いている気配がない。燃える館を踏みつけるくらいだ、炎は効かないってことか。



「もう少し効いてもいいのに!」



 そんな不満を言っても仕方がないことくらい、分かってる。

 大蜘蛛がひょいひょいと大岩を投げてきた。



「おっとと!なんて力だ!」



 草舟のブーツのおかげで素早く避けれる。というか草舟のブーツが無ければ直撃していた。

 大蜘蛛が地面を突き刺し、巨大な体を使って襲っくる。当たれば即死の攻撃をなんとか避けるしかない。



「これはどうだ!水の刃!!」



 火も通らないし、水魔法も通らない。この大蜘蛛、相当硬い。水の刃が大蜘蛛にぶつかって、ただ砕け散る。

 この大蜘蛛、大きいだけじゃなく、魔獣としても炎犬よりかなり上位に違いない。

 でも、これで大蜘蛛を倒せないことが分かった。

 あ、やばい、身体に白い糸が絡みつく。こいつ、糸まで吐くのか。気がつくと、地面が蜘蛛の糸でびっしりになっている。しかも、水を弾く。

 まずい。このままじゃ、やられる。間に合うか。裏手の魔草畑にファイが5株あったはず!

 蜘蛛の糸が足に絡みついて、うまく歩けない。館の瓦礫に隠れながら慎重に進む。

 よかった。裏手には、火が燃え広がっていない。

 大蜘蛛の巨体が近づいてくる。

なんとか館の裏にある魔草畑にいくと、ファイ3株が無事だった。2株はダメだ。瓦礫に埋もれて取り出せない。



「た、助かった!これでまずは。。。

ファイポ!」



 身体に巻き付いた糸をファイポで燃やしていく。



「よかった。この糸、燃えやすいぞ」



 やっぱり、ファイポの灯りで居場所がバレた。

 大蜘蛛は口から大量から糸を放ってきた。

 ファイポならファイ1株でかなりの回数出せる。

 撒き散らされる糸を燃やしながら、なんとかくぐり抜ける。



「これじゃ、ファイもいずれ切れる。でも、もう時間は稼げたな」



 大蜘蛛が、足で地面やタイトス観測所の瓦礫を突き刺してくる。



 ガラガラッ!



 タイトス観測所の瓦礫が飛び散って危険すぎる。足も危ないが、瓦礫が頭に当たったら、終わってしまう。

 まず、タイトス観測所から離れよう。

 大蜘蛛がゆっくりとこっちに迫ってくる。動きは早くないけど、巨大な分、一気に迫ってくる。

 試しに足を絡め取ってみるか!草舟の腕輪に魔力を込める。



「こうだ!ウイプナ!」



 草木の魔法を使って大蜘蛛の足を絡め取る。辛うじて作戦が効いたみたいだ!

 大蜘蛛の足に太いツルが巻き付いて、大蜘蛛の動きを止めた。

 4年前、死の森で、ポッコロ様が炎犬の足止めをするときに使った魔法!



「グァァァ!!」



 大蜘蛛が咆哮すると激しく動き回り、太いツルを引きちぎる。

 あ、素早い動きもできるんだ。もう手がない。デタラメな強さだ。

 最後に、もうひとあがきするか!



「最後にこれはどうだ!ファイガス!」



 一旦距離を取りつつ、ファイガスを大蜘蛛ではなく、地面に敷き詰められた糸に向ける。

 よし、うまくいった!

 辺り一面が火の海になった。おかげで大蜘蛛が僕を見失っているらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ