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ピッケルの決断

「ええ?ゾゾ長老、僕はそんなこと全然考えていないよ。誰かを率いる志なんて、もっていないし。

 ただ、生き延びたいだけなんだ。。。」



 そう。そうなんだけど。。。それでは、ダメだ。何もかも自力で、解決できるくらい強くならないと。。。


 ゾゾ長老が、がっかりしたように視線を落とす。杖と装備と札を自分の手元に引き寄せた。こんな僕に渡すのが、もったいないとでも言うかのように。


 別にくれないなら、いらない。。。

 いや!違う、言いたいのはそんなことじゃない。

 僕は強くなって、みんなを守るんだ!でも、言葉が出てこない。


 ゾゾ長老が心から残念そうに言った。



「相変わらず、呑気じゃな。器の小さな男じゃ。

 まだ目には見えないが、もう戦争が始まっておる。

 魔法技術の革新は、これまで人類が足を踏み入れることができなかった地域への領土拡大を可能にする。

 プリンパル国は、国王ザーシルが凡庸かつ弱腰じゃ。いずれ外からか内からかは別として、失脚するじゃろう。

 ゴリアテ国とマルキド国がまだ何にも知らないと思うか?ぜーんぶ知っとるよ。スパイを通じて、筒抜けじゃ。

 魔法の発見は、今や激しい競争状態じゃ。ゴリアテ国もマルキド国も水魔法、火魔法の開発まで追いついてきておる。

 この炎犬の骨がついた炎の杖も、いずれ各国で量産化されて、性能も向上するじゃろう」



「そ、そんな。。。」



「いいか、ピッケル。

 戦争では、どちらの志が優れているかなど必要ない。戦争が決めるのは、どちらが生き残るかだけじゃ。

 生き残りたいなら、強くなり、王になることじゃ。さもなければ、王族や貴族の邪魔になって、お前が殺されることになる。

 女神様から試練を課せられているだけでなく、精霊と通じることができるお前を恐れるものがどれだけいるか?

 お前が力をつける前にさっさと始末してしまいたい王族や貴族が、王都カラメルに山ほどおるんじゃ」



「うっ」



 何も言い返せない。

 そうは言っても、過激すぎる。国家転覆にとどまらず、人類統一の大義名分のもと、戦争をしろと。まだ13歳の子供に。。。



「それで、死にそうなったら、また精霊に助けてもらうのかい?

 ピッケルよ。お前は、そんなに弱くていいのか?エタンに比べて賢さもない。その上、戦う気力も、意気地もないのかい?

 大いなる力には、大いなる責務があるはずじゃ。それを果たす気があるのかい?

 読み書き計算が生まれてすぐに出来たところから見ると、お前さん、前世の記憶があるんじゃろ?

 それで、元の世界と年齢を足して何歳よ?

 軟弱だねぇ!

 どうせ前世でも軟弱だよ!

 それで自分の試練で死にかける度に誰かに助けてもらおうってか?

 自分の怠慢だろうが!」



ダンッ!!


 イラついたようにゾゾ長老がテーブルにこぶしを叩きつける。

 その衝撃で、冷めて冷たくなった紫色のお茶がティーカップから半分こぼれて、僕の服にかかる。

 いや、待てよ。僕は元の世界からカウントしたら精神年齢46歳だろ?

 どうかしてるのは、僕の方だ!いつまで子供のふりをしてるんだ!

 

「もう誰かに殺されるのは嫌だ!

 僕は、魔獣を倒して、ドラゴンとだって協力してみせる。

 人類の王なんて小さなこと言わないで、ゾゾ長老、僕がこの星を守る。隕石も試練も、僕が弾き返してやるんだ」



 あれ?なんだろう。気が強くなって、心に秘めていたことを口走っているぞ。



「おお。ピッケル。。。

 星を守る。お前は、そんなことまで考えていたのか。器量が小さいのは、わしのほうじゃったか。。。

 長く生きているもんじゃわい。ひ孫がこんなに高い志を!!

 だが、簡単ではないぞ。

 覚悟があるのか?強くて固い覚悟が必要じゃ」



「全てを力に変えること。そう女神様が言ったんだ。

 そう、僕には、それしかない。やってみせる!」


 勢いあまって、コップに残った紫のお茶の最後の一口を飲み切る。


 ぷはーっ


 冷めても酷い味だ。でも、くせになるかも。


「全てを力に変える。。。

 め、女神様がそうおっしゃったのか。

 その通りじゃ!

 さすが女神様が選んだ男。行け!民を導くのじゃ!

 わしも各地の同志に伝令を送らねば、ピッケルの檄文を!」



 ゾゾ長老が感涙して、僕の手を握る。そして、杖と装備と札を持たせて、あれよあれよと家の外に僕の背中を押す。



「バタンっ」



 玄関のドアが閉まって、気がつくと外に立っていた。

 もう少しで満ちる月の下、コウモリが元気よく飛び交っている。あれ?いいのかな?なんか上手くいったのかな。

 なんだか楽しい気分だ。

 ちょっと乗せられて強気で言ってしまったような?まぁ良い。嘘は言っていない。言えて、良かった。

 きっと元の世界でも、こんなことを言う勇気はなかった。元の世界の自分より、前進できた。自分の力で。

 ダヨダヨ湖に向かった時、何もできずに悔しい思いで食べた熊肉のほろ苦さを思い出す。

 あの日から、やっと一歩踏み出せたんだ。

 ゾゾ長老の贈り物ももらえたし。

 きっと旅は楽しいものになるさ!


 ウヒヒヒ!


 しばらくゾゾ長老の館の前でふらふらしていると、手紙を持った鳩が何十羽と館を飛び出して行った。

 各地のゾゾ派に手紙を届けるんだろうか?これはもう前に進むしかないな。なんて書いてあるんだろう。

 まあ、よし、良い感じだ。


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