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アシュリはアレイオスに

「あぁ、もうめんどくさいわね!

 なんでまた引っ越しなのよ!アシュリもそう思うでしょ?」


 埃を舞い散らせながら、荷物を運ぶポンチョが私に不満をぶつけてくる。


「ええ。。まぁ。。。」

 

 私たちゾゾ派の研究所は、王都から追い出されて、新たに建造中のアレイオスという町に引っ越すことになった。


「ポンチョは、前回の引っ越し手伝ってないんだから文句言わないの!2回も引っ越し作業してるのは私とカリファとアシュリよ」



 メルロも文句を垂れている。

 イライラしながらガナシェ伯が指示を出す。



「文句があるならゾゾ派の研究所自体を取り潰してもいいんだぞ!

 新しい研究所があるだけありがたいと思え!

 おい!さっさと荷物を馬車に乗せろ!」



 ゾゾ長老がガナシェ伯を通路の端に押し除ける。



「ほいほい!ちょっとそこをどいとくれ、ガナシェ伯」



「む、むぅ。ゾゾ長老、今日が退去の期限ですぞ。約束は守っていただかないと」



「ヒッヒッヒ!安心しろ。すぐに出ていくわい。

 新しい研究所は地下古代遺跡を利用して作る予定じゃ。古代魔法の研究にぴったりじゃわい!のぅ、アシュリ?」



「えぇ、でもあんまり悪趣味な頭蓋骨とか並べるのはやめてくださいね」



「わかっとる、わかっとる!美しい頭蓋骨だけもっていくわい!

 おぉ、カリン、パスカル村から持ってきた魔法書は、別の箱に入れるから避けておいてくれ」



 やっぱり頭蓋骨、持っていくんだ。また自分の部屋の前に並べるつもりだろう。

 でも、新しい町に移転することで、伝統学派から変な邪魔が入らなくていいのは確か。

 パスカル村からごっそり持ってきた異端の魔法書や古代の魔法書も、ガナシェ伯がゾゾ派を追い出したい理由の1つだろう。



 王都カラメルのククル魔法院では、伝統学派と新説を唱えるゾゾ派との激しい論争が行われていた。

 カリファが水の魔法を習得したことで、一気にゾゾ派が優先になった。

 現在では、主流派を取って代わる勢いがある。

 持ち帰った炎犬のサンプルから、火の魔法の実験に成功しているらしい。ゾゾ長老、恐るべし。

 ゾゾ長老は言うまでもなく、カリファに並んで、ポンチョとパンセナ、そしてカリンの名前が王都カラメルでは新鋭の魔法使いとして認知されるようになってきている。


 その結果、私達6人しかいなかったゾゾ派に属する魔法使いは、400人ほどになっていた。大躍進と言って良い。


 ゾゾ派の活躍が面白くない伝統学派のガナシェ伯がアレイオスへの研究所移設を言ってきた。

 やっと改築が落ち着いて使いやすくなってきた旧研究所を文化財として保存するとかで、退去するようにということだ。

 そのせいでゾゾ派の魔法使いがアレイオスに一斉に大移動する。4分の3の300人は、ゾゾ派を離れて王都に残り伝統学派に戻って行った。

 要するにガナシェ伯の嫌がらせだ。

 去るもの追わず。むしろ、筋金入りのゾゾ派だけが残って清々しい。



 そもそも、アレイオスとはどんな町か。

 タイトスが目覚めた後に備えて、元々魔力が全くないため魔草の生育に向かない代わりに、古代から魔獣が全く興味を示さない土地を探し、計画都市を作ることになった。

 そして、海辺の小さな漁村アーレと農業と古代遺跡の村イオスを合わせた広大な土地で、計画都市アレイオスの建設が開始された。

 大規模な防衛用の外堀や、灌漑用水が引かれて、港が整備されることになっている。20万人が自給自足で移住できる規模の農業、商業、工業、住宅がある計画都市。

 完成するにはまだまだ長い年月が必要けど、急ピッチで建設が進んでいる。

 元パスカル村周辺に住む村民5000人ほどが、ドラゴンから避難するため、そして、アレイオスの建設のために移住した。

 元々王都からも遠く、便利が悪いため寂れた地域だったアレイオスは、空前の大開発に人、物、金が集まり、活気付いているらしい。


「サボってないで、さっさと出ていけ!ほらほら!」


 ガナシェ伯がカリンのお尻をパチンと叩く。


「きゃあ!変態!」


 間髪入れずカリンがガナシェ伯の頬を引っ叩く。さすが、格闘家の娘だ。素晴らしい反応速度。すぐさまアッカンベーをしている。

 ガナシェ伯は、叩かられた頬を撫でながら、怒るでもなくニヤニヤしている。


「ぐふふふ」


 き、気持ち悪い。。。


 ガナシェ伯は、幼児趣味の変態として有名だ。旧研究所をゾゾ派から取り上げるのも、ガナシェ伯が侍らせている若い女魔法使いを連れ込んでいやらしいことをするためだとか言われているが。。。本当なら最低だ。


 私たちは馬車の荷造りを終えて、出発することになった。

 王都の正門にクロロが見送りにきてくれた。


「ゾゾ長老、皆様、お気をつけて。

 アレイオスでは自由に研究所を作れるように手を回しておきます。

 なにかご不自由があればなんなりと」


「ヒッヒッヒッ!クロロ、いつも悪いのぅ。助けてもらってばかりじゃ」


「いえいえ、娘のメルロをお願い致します」


「お父さん、恥ずかしいからやめてよ」


 今回もクロロが助け船をだして、ゾゾ派の新しい研究所を手配してくれた。

 

 新しい研究所が楽しみだ。

 馬車がゆっくりと進み出す。


 馬車の窓からゆっくりと流れる景色を眺めていると、王都から出てだんだん田舎道になってきた。


 ピッケルも修練を地道に重ねているのだろうか。やっているだろうな。ピッケルには、なにか強い信念がある。

 それがピッケルに課せられた試練に立ち向かう心構えなんだろう。

 ピッケルの試練に私たちが巻き込まれているのか、逆に私たちの試練にピッケルが巻き込まれているのか。

 卵が先か鶏が先か。どっちにせよ、私たちもピッケルも試練に立ち向かうしかないのだ。

 ピッケルにもいずれ会うことになるだろう。成長した姿を見るのが楽しみだ。

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