平和な日よ、続け
死の森の事件から一年後、僕のキキリ畑の土もやっと魔力1000に達して、キキリの栽培が始まった。
パンセナがキキリを育てる草木の魔法を教えてくれて、キキリがぐんぐん育っている。
草木の魔法は、土の魔法に負けず劣らず地味だけど、生育を早めたり、収穫した魔草の日持ちを長くしたりできる。
なんというか、平和だ。こんな毎日がずっと続けばいい。
僕の未踏の地への野望は、死の森を体験してあっさりと挫かれた。あそこは人類が行っていい場所じゃないんだ。もう恐怖しかない。希望どころか、絶望しかない。試練への対抗も必要だけど、自分から死地に行くのは、避けないと。
それ以来、僕もカリンも地道に魔草の畑を毎日をコツコツ耕し続ける毎日を過ごしている。
特にカリンは、自分で育てたキキリを使って、パスカル村で怪我をした人をキュアで治すことを始めた。修行も兼ねているが、好評だ。
もともとアシュリがやっていたことでもある。
まだ僕は、魔法使いとしては見習いも見習いだし、1人では、何もできない子供。
でも、毎日地道に続けていることを積み上げて、できることが一つ一つ増えたり、次の段階のことができるようになっていく。
それにカリンとの距離が近くなった。なんというか物理的な距離が。カリンがロム家の館に住むようになったんだ。住み込みで魔草畑の世話に励んでいる。
平和な秋の朝、穏やかな1日が始まった。
「おはよう、プルーン。お、朝ごはんは、クロックムッシュだね!やった!」
「はい!パンセナ様がパンをお焼きになったので。。。」
「ちょっと、ピッケル!私も作るの手伝ったのよ!心して食べなさい!」
カリンがひらひらがついた可愛いエプロンを着ている。
たしかに、いくつか形がいびつ。。。ではなくて、味のある形というか。。。こっちから食べるしかない。
カリンの熱い凝視のもと、むしゃむしゃとほうばる。
あ、いや、美味しい!これはクロックムッシュ!間違いない。
「カリンのクロックムッシュ、美味しいよ。今日もキキリ畑の世話をしようかな」
最近、パスカル村ではクロックムッシュが流行っている。もともとは僕がプルーンに作ってもらったところから、伝わっていったらしい。
「ピッケル、あたしのキキリ畑の間引き手伝ってよ」
「自分でやりなよ!でも、クロックムッシュの御礼に、今日だけ手伝ってあげる」
「なによ、その言い方!まぁ、でもいいわ。よろしくね」
「ピッケル坊ちゃまも、カリン様もキキリ畑が順調そうで、素晴らしいですね。日々の努力の賜物です」
「ありがとう、プルーンさん。
いつも応援してくれるから、励みになるわ!料理も色々教えてくれて、ありがとう!
ピッケル、またクロックムッシュまた作ってあげるからね!」
「カリン、ありがとう。。あれ?」
カタカタカタカタ。
「あ。また地震。最近多いね。あたし、怖いわ」
元の世界では、地震はよくあった。小さい時に大きな地震も経験した分、ちょっと地震には敏感かもしれない。
グラグラ
パリンとお皿が一枚床に落ちて割れる。
「きゃぁ!」
カリンが悲鳴をあげる。
「お皿が割れるなんて、不吉ですね」
そう言いながら、プルーンが割れたお皿を片付ける。
元の世界の感覚だと震度3くらいかな。
エタンが執務室から出てきた。
「この3日で30回目の地震だな。回数が異常だ。
昨日、地震の記録と川の水位の変化を王都カラメルに報告したんだ。早ければ明後日、調査団がパスカル村に来るはずだ。それまでに大きな変化がなければいいが」
「エタン村長、ダヨダヨ川の水位に異変が?」
「なんだカリンは、聞いてないのか?
地震が頻発するようになって、昨日からダヨダヨ川の水位がどんどん下がっているんだよ。
このまま干上がるようなことがあれば、農作物や家畜を育てられなくなるだけじゃない。死の森との境界線がなくなって、水が苦手な炎犬でも、簡単にパスカル村に来れるようになる。そうなったら、パスカル村は、おしまいだ」
「そ、そんな。どうしたら?父さん、何かできることはないの?」
「自然の大きな変化の前では、人類は無力だな。今のところ、どうすることもできん。
王都カラメルから調査団がきたら、対策を練ろう。ピッケルも一緒にくるといい。なぜかゾゾ長老がピッケルを同席させろと言っているんだ」
何で僕が??
「なんで、ピッケルだけ?!」
カリンが小声で不満を言っている。
嫌な予感がする。




