第1章 自分を変えたい
読んでくれてありがとうございます。10章くらいになる予定です。
「今日こそ、彼女に告白するぞ」
朝、鏡の前で自分の姿を確認しながら、そう心に決めた。俺の名前は、高橋健太。高校3年生で、平凡な成績と容姿の持ち主だ。しかし、一つだけ自慢できるものがある。それは、ナノマシンだ。
ナノマシンとは、人間の体内に埋め込まれた微小な機械のことである。人間の外見や能力を自由に変えることができる。例えば、髪の色や目の色、肌の色や骨格、筋肉や体脂肪、身長や体重など、あらゆる部分を自分の好みに合わせて調整できる。また、人間の五感や知能、記憶や感情、免疫力や代謝など、あらゆる機能を強化することもできる。スマートフォンと連動しており、スマートフォンの画面で自分の設定を変更することができる。
ナノマシンは、未来の世界の必需品となっている。普及したことで、人間は自分の外見や能力を自由に変えることができるようになった。しかし、その代償として、人間は自分の本当の姿や個性を忘れてしまう危険がある。人間の自己認識や自己表現を曖昧にして、人間のアイデンティティーを奪ってしまう。
俺は、ナノマシンを使って自分を変えることに抵抗はなかった。むしろ、ナノマシンを使って自分を変えることが好きだった。なぜかと言うと、自分に自信がなく、本当の姿や個性が嫌いだったからだ。自分を変えることで、周りに合わせて人気者になりたいと考えている俺は、スマートフォンを常に手放さなかった。依存症のごとく自分のスマートフォンで自分の設定を頻繁に変更した。
俺は、自分を変えることで、彼女に告白しようとした。彼女の名前は、佐藤美咲。俺のクラスのマドンナで、美しい容姿と優しい性格の持ち主だ。俺は、彼女に一目惚れした。彼女に近づこうとした。彼女の好みや興味に合わせて自分を変えた。彼女と仲良くなろうとした。
しかし、彼女に告白することができなかった。彼女に告白する勇気がなくて、機会を逃した。彼女に告白することを延期し、諦めた。
しかし、今日は違う。彼女に告白する日だ。彼女に告白する最後のチャンスだ。彼女に告白しなければならない。なぜなら、卒業式だからだ。
家を出る前に自分の設定を最適化し、保存した。
「よっし。」
自分を変えた。自分を変えることに慣れていた。いや、たぶん依存していた。満足した。疑問を持たなかった。自分を変えることに罪悪感を感じることはなかった。
自分が何になったのか、わからなくなっていた。