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~姫の救出~

 柚月の言葉にたまちゃんが愛竜であるルヒルの上から反応する。


「何とも言えんね。当たったような感触はあったんやけど、あのスピードといい、得体のしれない敵ということを考えると」


 そこまでたまちゃんが言葉にした段階で、皆がすぐに異変に気が付いた。さっきルヒルが放った火球が当たって黒焦げになった地面に、人の形をした黒いもやが立ちあがるのが見えたからだ。


 敵であるそれは、空をつんざくような咆哮をあげると、今度は刀を右斜め下に構えながら地面の上を飛ぶように移動してきて、こはく達めがけて振り上げる。だが、弱っているのか、その姿は眼で追うことが出来るほどに遅く、今のこはく達のレベルからしたら脅威とはなりえない。


 こはくは、馬上から冷静に相手の太刀筋を見極め、一撃目の突きで相手の刀をはじき返し、連続した二撃目の突きで敵の胸辺りを貫いた。槍が何か得体の知れない者に刺さるぐにゃりとした感触が手に伝わってきて、少しだけ嫌だと思ってしまった。


 こはくが貫いたその敵は、ゆらりと数歩後ろに半ば倒れるように下がったかと思うと、必死に立ち上がろうとしては形にならずといったことを繰り返している。今こはくが胸を貫いたのが致命打となったのだろう。


 柚月が隙なく矢をつがえ、いつでも放てるように構えている中、エクウスを飛び降りたこはくがいつ反撃が来ても良いようにそっとその敵に近づく。


「苦しいの? ごめんね。今楽にしてあげるから」


 そう言うなり槍を一閃。敵の首を落とすイメージで振り払われた槍と一緒に、その敵も跡形もなく黒い煙となって消える。こはくは槍をもとのペンダントの形に戻して、今止めをさした敵のために祈りをささげた。 


 柚月は、敵が消え去るのを見届けてから武器の構えを解き、肩の力を抜いて一つ息を吐き出す。思いのほか緊張していたようだ。たまちゃんは、渋い顔をして色々と思案しているようだった。


「こはく、柚月さん、俺は森の中を探索してみる。かっちが目の前にいる敵に襲われているのだとしたら、なるべく早く見つけ出したい」


 たまちゃんの声が届いているのかどうか定かではなかったが、こはくは両手を胸の前で組み祈りを捧げ続けていたため、柚月が代わりに返答した。


「そうだね。僕もかっちは早く見つけ出した方がいいと思う。彼女の実力を疑うわけじゃないけど、真正面から戦う戦闘職ではないかっちが一人で戦う相手としては少々強い気がする」


 そこへ祈りを済ませて戻ってきたこはくが、二人の顔を交互に見比べて真剣な面差しで二人の意見に賛同する。


「私もその意見に賛成! やっぱりかっちの性格や職種を考えると森の中を向かってきている可能性が高いと思う。正直この暗闇で、敵が待ち構えているであろう森へ入るのは自殺行為かもしれないけど」


 今ここにいるのは、柚月さんとたまちゃんと自分。三人だけで、この広い森からかっちを見つけ出せるとは思えない。ここはやはり増援を呼んだ方が懸命な判断なのかもしれない。


「柚月さん、エクウスに乗って仲間を呼んできてほしい! この任務においてかっちの存在は必要不可欠、だからといって任務を遅延させる訳にはいかないから、戦力を裂きたくはないけどかっち捜索班と任務遂行班に分ける……選抜メンバーはそちらで決めてもらいたい」


 柚月は慣れない感じでエクウスに跨り、こはくとたまちゃんの顔を見てひとつ頷く。こはくはエクウスの顔を優しく撫でながら「柚月さんをお願いね」と優しく声を掛けていて、エクウスもそれに呼応するかのように軽く(いなな)いた。






 柚月を乗せ、走り去っていくエクウスを見送り、持ってきていたカンテラにお得意の火の魔法を使い明かりを灯す。こういったときに魔法が使えると何かと便利だ。辺りを明るく照らし出す光魔法も存在するのだが、こはく、たまちゃんには光魔法の特性がないためその魔法は使うことが出来ない。


 二人は、目の前に広がる森へと足を踏み入れた。一歩足を踏み入れただけだったが、ひんやりとした空気が肌を撫で、地面を覆いつくす落ち葉と土の感触を足で確かめながら、カンテラで照らされ数メートル先しか見えない真っ暗な森に視線を送る。本当に明かりが届く範囲は狭い。


 気を引き締め、首に下げたペンダントを片手に呪文を詠唱する。すると、手に握ったペンダントが光り輝き、穂先が三又に分かれた槍が出現した。薄白くぼんやりと光るそれは、この暗い森の中では大変に心強い存在だ。森の入り口を振り返ると、開けた場所でドラゴンのルヒルがちょこんと座り、ご主人であるたまちゃんの帰りを待っている。


「飴ちゃん、森で槍を振るうのはリーチが長すぎる分扱いが難しそうやな。自分はこの斧一本やし」


 たまちゃんは、こはくのことをべっこう飴にちなんで『飴ちゃん』と呼んでいる。彼は普段ドラゴンに乗っている為あまり武器は使わないのだが、こうしてルヒルが踏み入れない場所へ入るときなどは斧を装備していることが多い。


 剣や槍にも挑戦してみたことがあるらしいのだが、本人(いわ)く、どこかギターに似た形状の斧が一番振り回しやすいとのことだった。

~おもちろトーク~

柚月   「たまちゃん、斧がギターに似てるって……」

たまちゃん「なんとなくやけどね」

こはく  「……武器を選ぶ理由よ」


いつもリアプロをお読みいただきありがとうございます。

今回のお話はいかがだったでしょうか?

夜の森に入ったことがある方ってどの程度いるのでしょう?('ω')ノ

筆者は森へキャンプなど行くので知っているのですが、月明りも全くと言っていいほど届かないため明かりが無ければ本当に何も見えないんですよね~((+_+))


筆者は昨日まで東京に行っていたのですが、なかなかに有意義な時間を過ごすことが出来ました! あと渋谷の人の多さにバタンキューだったことは内緒です(笑)


いつもいいねや評価、ブックマークやご感想などありがとうございます。

執筆していく上での励みとなっており、心強い限りです。また、小説以外での質問なども受け付けておりますので、気軽に感想覧へご記入いただければ、お応えできる範囲でお応えいたします。


今後とも「リアプロ」をよろしくお願いいたします。

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