~姫の救出~
等間隔に灯された松明が揺らめく地下通路を、狐人族特有の狐耳にライトブルーの髪を短くショートにし、可愛らしい顔立ちをした少女が黒いローブを身に纏い、足音一つ立てずに駆けていく。彼女の名前は「はちゃ」。別けあって結成されたチーム、リッターオルデンの女盗賊だ。
彼女が駆けていく先は、少し開けた場所となっており、このチームの指揮官であるルナールが、簡易的に作られた机に地形図を広げて、今まさに作戦会議の指揮を執っているところだ。彼もはちゃと同じ狐人族特有の耳をしていて青い髪にやさしそうな顔立ちをしている。背が高く皆からの指示も厚いリーダー的な存在だ。
彼の隣にはいつも参謀役として、黒髪に紅眼をし、いつも不敵な笑みを浮かべた「けいてぃー」が、地形図を指示して見解を述べている。その場所には、開けた空間に大きな城と城下町が描かれていて、王城へ渡る跳ね橋の所にある扉と、それを渡った先にある扉を交互に指でなぞっていた。
「ルナール、ここの扉までだったら俺とはちゃで闇夜に乗じて近づきカギを開けることは容易だと思う。だが、問題はそのあとだ。中から出てくる敵の数は相当なものだと予想され俺たちはほぼ確実に捕らわれるか殺されるかだが、いったいどうする?」
ルナールはどんな人の言葉も軽んじて受け取らない性格だ。軽視していた言葉が思わぬ落とし穴を隠し持っていることも経験上あるからだ。
「そうだね。ここを突破すれば、確実に敵の本体と真正面からぶつかり合うことになる。ここにいる皆はよく招集に応じてくれたとは思う。だが、相手は一国を乗っ取るほどの敵だ。そんな相手に国を取り戻すための戦争をしようとしている俺たちは間違っているのかもしれない。だからこそ、勝つための戦いをする」
ルナールはここに集っているメンバーを安心させるために最後の部分をひときわ大きな声で伝える。 刀を抱くように腕組みをした鬼族の族長「ユンボ」は壁にもたれかかり、瞑っていた瞳をゆっくりと開けながら低く渋い声で今のルナールの発言に対して続きを促す。
「ルナよ、お主のことじゃ。勝つための戦、その作戦も用意しておるのじゃろ?」
彼の切れ長の眼には鬼の名にふさわしい青紫色の瞳を備えていて、彼の額からは鬼族特有の角が二本上向きに突き出している。彼は見た目こそ怖いが、誰に対しても優しく、しっかりとした分析ができる頼れる仲間だ。
ルナールがユンボの方を振り向こうとしたところで、女盗賊、はちゃが駆け足で戻ってきた。だが、はちゃは、何につまずいたのか足をもつれさせて盛大に顔から地面にダイブした。
ダイブした時に「ふぎゃ」という変な声が聞こえた気がしたが、彼女がどこか抜けているのはいつものことなので、ここにいる全員笑いながら温かな目で見守っている。
ルナールも顔を上げ、ほほえましく思いながらも彼女の心配をする。
「はちゃ、大丈夫か?」
顔を上げたはちゃの鼻からは、盛大に赤い血が垂れ流れていた。それを見たけいてぃ―が「バーカ」と罵りながら、お世辞にも綺麗とはいいがたいハンカチを渡している。彼が実はすごくいいやつだということをみんなは知っているのだ。
はちゃは「ありがとう」と嬉しそうにはんかちを受け取りながら、へへへとけいてぃ―に笑って見せた。そして立ち上がり一歩ルナールの方へ近づき調査の報告をする。
「ルナール、言われた通り城の周りを探ってきたよ! やっぱり城の守りは正面が一番厳しいみたい。周囲にある城へ通じる地下通路はどれも見張りがいた」
はちゃはドジな部分が多々目立つが、仕事は完ぺきにこなしてくる。だが、説明は楽観的でいつも細かい所の説明にかけているのである。けいてぃ―は、またかというような感じで一つため息をつき、はちゃに追加質問をする。
「いや、どこが入りやすそうだったかとか、敵の数が少なそうな場所だとか色々あるだろ」
未だ止まらない鼻血をハンカチで押さえながら、はちゃは説明を付け加える。
「あ、ごめんごめん。言い忘れてた! 地下水道の入り口は唯一見張りの数が少なかったよ! そこからなら簡単に入れると思う」
地下水道といえば、城の北東に広がる森の中にその入り口があったはずだ。ただあの森には、最近ゴブリンの集団が居ついたということだったが、今のリッターオルデンのメンバーなら何の問題もなく突破することは可能だろう。
問題があるとするなら、この通路にリッターオルデンのメンバーを総動員することはなかなかに厳しいということだ。現在のメンバーは総勢二十七人いる為、全員で行動すると敵にこちらの行動がばれる可能性がある上に、そもそもが地下道自体そこまで広くはないからだ。
もしここから潜入するならば、地下道に向かうメンバーを決める必要がある。ルナールは顔を上げ、この部屋のそれぞれの場所に居座るメンバーの顔を一人ずつ確認し、潜入に誰を向かわすか思案する。
はちゃにハンカチを差し出していたアサシンであるけいてぃ―は、暗殺においてはかなり秀でていて、はちゃと組んだ潜入捜査など今までに失敗したことがない。だが今回の作戦に二人だけではさすがに危険だ。
そこへ、彼の考えを読んだ茶の葉がルナールの隣へと歩み寄り、意見を述べる。彼女の背中まで伸びる桜色の髪は少し癖毛でうねりながらも、先端がいい具合に巻いている。彼女は猫豹族であるため、頭から猫特有の耳が顔を出している。
おっとりとした顔立ちを裏切らない柔らかい優しい声音をしていて、その雰囲気にぴったりの回復の要であるヒーラーだ。
「ルナ君、アサシンである「かっち」師匠も潜入に向いているのでは?」
おもちろトーク
ルナール 「ついにリアプロが始まったね」
けいてぃ―「彼女、お茶行かない?」
ユンボ 「リアジュウユルスマジ」
ルナール (このメンバー、先行き不安だ)
お読みいただきありがとうございます(^^♪
ここでは「ゆるふわ」こと、ルナールです(=^・^=)
ついに投稿開始しました「リアリティ プロエリウム」!
配信アプリ リアリティ。そのメンバーが力を合わせて魔の者に立ち向かっていく物語。それぞれが個々の味を出し、その場面場面での緊張感や臨場感が少しでも伝わればいいなと執筆しています。
出来る限りそれぞれの活躍を描いていきたいと考えておりますが、物語の構成上、登場頻度にばらつきが生じることご了承ください。
タイトルに使用したプロエリウムとは、ラテン語で「戦い」などの意味があり、リアリティメンバー力を合わせ魔に立ち向かっていくという意味になっております。
投稿頻度は、週一を目指して出来る限り頑張っていきたいと思いますので、皆さん応援よろしくお願いいたします(*'▽')※遅延する場合もございます。