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17 愛の反対は無関心

 さてそんな資料つき手紙を送ったら、アリサのほうから、何とももどかしそうな手紙が返ってきた。


「ともかく思いつくこととか色々あるんだけど、まとまらなくって嫌なんですって」

「考え込むタイプ?」

「そうね。考えるのは好きみたい。ただ、順序立てて考えるというより、あれもこれも浮かんで、何となく方針はあるんだけどとっちらかって困る、という感じかしら」


 その辺りがアリサの弱いところだ。

 順序立てて物事を考えるというのは訓練なのだけど、アリサはその辺りがちょっと弱い。

 出来事から何か予想するのは私よりずっと早いのだけど。


「ふむ。じゃあちょっと彼女に会ってこようかな」


 キャビンさんはそう言い出した。


「いいんですか?」

「まあ、ちょっと空いているし。それにアリサさんの考えをまとめるのに役立てば、その後の方針も立てやすいだろう?」



 そしてキャビンさんは行って戻ってきた訳だが。


「え、男爵を罪に問いたいとかじゃないんですって?」

「ちょっとあれは珍しいというか」


 どうにも。

 私は自分が母に対しての憎しみが原動力だからアリサもある程度そうなのか、と思ってはいた――

 と言うか、それ以外の理由が何処にあるんだ? と思っていた。

 ところが。


「ただ知りたいだけ。憎んではいない。関心もない…… 何かそれって凄いですね」


 オラルフさんもそう言った。


「で、自分の家族はむしろ使用人の皆だ、と言ってましたよ。まあ、確かにそうなんでしょうね。アリサさんは初めから親に捨てられている様なものですから」

「愛の反対は憎しみではない――か」

「何ですかそれは」


 私はキャビンさんに聞いた。


「憎しみという感情は、愛している、もしくはいたからこそ生まれるんですよ。ミュゼットさんが夫人のことが憎いと思うのは、それまで愛してくれたのに、という手のひら返しのせいもあるんじゃないですか?」

「確かにそれはあります」


 私はうなづいた。


「誕生日を祝ってくれることは無いにしても、私は母にそれなりに愛されていると信じていたんですよね。だからあの日急に目を吊り上げて私を使用人の位置まで追い出した母が憎いんだと思います」

「そう。だけどアリサさんはそもそも憎める程愛されても来なかった。だからどうでもいいんですね。で、その一方で一度知りかけたことに対しては貪欲だ。これはどちらかというと、学究肌のひとにありがちなんですがね」

「ああ……」


 確かにアリサにはそういうところがあった。

 一度何かを疑問に持つと延々それについて考える様なところが。

 私はそこまで考えなかった。

 ある程度で切り上げて、とりあえずこれでいいや、ということにしてきた。

 今も、アリサの頼みでなかったらきっとスリール子爵の申し出をさっさと受けているかもしれない。


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