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11 スリール子爵が結婚できない理由

 夫人はそう言ったが、やはりまだ子供の私には理解できなかった。

 なので後で弁護士の立場どう思うか、と事務所で二人に尋ねた。

 無論二人ともこの偶然には喜んだ。


「スリール子爵は結婚と本当に縁が無くてね…… いい人なんだけど、じゃあ同じくらいの身分の女性からすると、どうなんだろうという気持ちになったのかもしれないなあ…… いいひとなんだけどね」


 キャビンさんはそう言った。

 オラルフさんも。


「それに彼自身もその気があるなら、それなりに社交界に顔を出せばいいんだが、そういうことが好きではなさげだしね。同じ様なタイプの女性とか、大人しいとか、質素な生活で充分というひとは全く居ない訳ではないだろうが、先代先々代で資産を食い潰してしまっているということが、なかなか周囲の同格か少し下くらいの家からは敬遠されるんだろうなあ」

「だったら実業家と組んで、ということもあるんだけどね。爵位はやっぱり大きいし。でもそういうのをどうにも好きではないひと達でねえ」


 聞けば聞くほど、まあ自分自身であの生活にしていったんだなあ、と私は思った。


「でもあの家は過ごしやすそうでしたよ」

「うん、実際中流階級からだったらね。充分なんだけど。そこで子爵という身分が逆に枷になるんだね。あれでも王室に呼ばれる時には呼ばれるんだ。中流の女性がそれに耐えられるか、ということなんだ」

「それは…… アンバランスですね」

「それも上等! くらいの女性だと、じゃあ今度はあの質素で居心地の良いゆったりとした生活に耐えられるかというとまた。その辺りのバランスがだね」


 私は苦笑した。


「それこそ、男爵の成り上がりの方がシンプルに金目当てだの何だので入り込みやすい、ということはあるんでしょうね」


 そこまで言って私はふと思った。

 母は私を産むために男爵と関係を持ったんだろうか。


「まあ、堕ろしてしまうことは表向き良いことではないし、身体をも壊すしな」

「そうなんですか」


 アリサの母はお産で亡くなっている。

 だがお産でなくとも身体には厳しいと。


「人によるけどね。あまり淑女にする話ではないけど。でも君はそういう話をして欲しいんだろう?」


 オラルフさんはそう生真面目に言う。


「母が私を使用人扱いにしたのは、そもそも私に初潮が来て、子供が産める女になったから、そういう女は屋敷に二人は要らないから、という訳のわからない理由なんですから。そのことを今更口にしてどうのもありませんから」


 ふう、と二人は微妙な表情になった。


「けどどうも今ひとつ理屈にならない理由だよね、それは」


 キャビンさんは眉を寄せた。


「アリサさんは判るよ。前妻の娘が気に食わないってのはよく聞く。だけど君を邪険にする理由がわからないんだよね。だいたい十三年間はちゃんと育ててたんだし。急にがらっと変わる理由がよくわからない」


 なるほど、外から見るとそうなんだ。

 あの屋敷の中ではそれもありだ、という空気があった。

 つまり母にそれを納得させる様な何かがあったということだ。

 そう悶々と考えているうちに、男爵家に謎の大きな壺――いや、瓶が届いたという知らせがあった。

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