第三話 目覚め
「母さん?」
俺がそう言ったのも間違いではない。
何故なら目の前に五年前の転移で行方不明になった母親がいたからだ。
「え?」
そうネル困惑するのも仕方ない、ヒカルが彼女の母親の事を母と呼んだのだから。
「ネル、この男の子は…」
「ああ!紹介するの忘れてたね、今日私を助けてくれた西園寺ヒカルよ」
「はじめましてヒカル君、ネル・イロアスよ」
え?もしかして覚えていないのか?俺の事を。
もしそうなら転移の影響か…
「はじめまして、西園寺ヒカルと申しますネルのお母様」
先程とは違う呼び方でヒカルは呼ぶがネルはそれを疑問に感じた。
「あれヒカルさっきは母さんって…」
「いやあれはネルのお母様が俺のお母様と似ててつい…」
「動揺して自分の母親も様付けしてるわよ」
「ふふっ、面白い子ね」
「お前が細かいツッコミするからイロアスさんに笑われたじゃねーか!!」
やべっ、名前で呼んじゃった。
ヒカルは後悔するが反応は優しく。
「もし名前で呼んじゃった事を気にしているなら大丈夫よヒカル君」
そう言いながらイロアスさんは優しく微笑む。
ああ。やっぱり母さんだ。
ヒカルは確信した。
しかし同時にあの頃の母さんでは無いこともわかってしまった。
「すみません。しかし助けてくれてありがとうございます」
でも何で俺達が危ないって分かったんだ?何か理由があるはずだ。
ヒカルは聞くことにした。
「そういえば何で俺達が危険な目にあっているってわかったんですか?」
「それはこの子が…」
イロアスさんがネルを見ながら言う。
「ネル、教えてくれないか?」
「分かったわ」
そうネルは答えておもむろに上の服を脱ぎ出した。
「ちょっ…何やってんだよ」
「これを見て」
「え?これはまさか!」
服を脱いだネルの背中にはヒカルと同じ紋章があり、淡い光を帯びていた。
ヒカルも気になり自分の紋章を見ると同じように光っていた。
「この紋章が教えてくれたの、ヒカルが危ないって」
「でもなんで俺と同じ物を」
「今日の朝夢を見た後にこの紋章があったの」
ヒカルは状況を飲み込めずにいた。
するとネルが答える。
「これは選ばれし者の証」
「選ばれし者…」
「この国【アズラ】に伝わる伝承よ、別の世界から来たヒカルは知らないと思うけど」
話を聞くとどうやらこの紋章を持つものは強大な力を有し、この世界で言う【勇者】も持っていた紋章らしい。
「でもなんで俺がそんな大層なモンを」
「誰が持っているかは置いておいて二人この紋章を持っていることが問題よ、これは本来一人しか持ちえないモノなのよ」
「もしかして俺を殺して無理やり一人にする気じゃあ」
「そんなことするわけないでしょ」
ネルはそう言うがヒカルは疑わずにはいられなかった。
「それとお前喋り方変わってないか?」
ヒカルはネルの最初会った時の気弱そうなイメージとは違う強気な喋り方に違和感を感じ指摘した。
「ああ,あれ?猫被ってたのよ」
「ハァーーー!?てことは〜ですぅとか言ってたのも作ってたのか!?」
「そうよ!何か悪い?」
「カァーーー!あの喋り方ちょっと可愛いと思ったのに騙された気分だわ!」
「ちょっ可愛いってアンタ…」
ネルは思いもよらないジャブを喰らい頬を赤らめていた。
「そういや貰った魔導書にあった紋章も同じだったけどもしかして」
「そうよ、あれを創った人も選ばれし者」
「でもなんで最初会った時に紋章の事を言ってくれなかったんだ?」
「その事を言えば動揺してしまうと思ってね」
そうイロアスさんが会話に入り言った。
「それともう少し確証が欲しかったのよヒカル」
「それでダイアウルフ討伐の件で確信に変わったと」
「そう、倒れているヒカル達を見た時は焦ったけどね」
なるほど。これでネルを助けた時に紋章が光った理由も分かる。
俺達二人の紋章が共鳴し更に紋章自身が意志を持ってネルを助けたんだ。
「大体は分かったがまだ混乱してる、一先ずルアと俺を家に返してくれないか」
隣のベッドで寝ているルアを見ながらヒカルは言う。
「いいわよ、元からそのつもりだったし」
その後手配された馬車で家まで帰ってきてボーっとしながらヒカルは夕食の干し肉や野菜を食べ、風呂に入り就寝する為に布団に入る。
父さん、母さんが見つかったよ。
でも記憶は忘れてて俺が知ってる母さんじゃ無くなってた。
「俺が絶対記憶を取り戻す・・・」
そうヒカルは呟き自分の決意を固めて瞼を落とした。
この世界では異世界から転移してくるのは稀にあり、
転移してきた人は【迷い人】と呼ばれています。
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