第一話 少年は少女と出会った
誰かの声が聞こえる
「ヒカル、お前の人生はお前が決めろ」
その声が聞こえた途端俺は起きた。
「まただ....」
そう、父親が亡くなってから毎日この声が聞こえるのだ。
「どうせ俺なんかダメだよ....」
そうやって独りで呟きながら学校へ行く身支度をする。
学校へ着くと獣人や人間がいるが自分の席へそそくさと座った。
できるだけ存在を消して。
そうやって授業が終わるまで誰とも話さず終えた。
(俺は空っぽだ)
一日を振り返るとこの感想しかない。
そしてまた寝る。
そうするといつもより鮮明な夢に誘われた。
「ヒカル」
「なんだよ父さん」
「なあに、お前の背中を押してやろうと思って」
父は俺と違って前向きだ。しかしその前に向く姿勢は俺にとっては眩しすぎた。
「俺の背中なんか押してもそのまま落ちていくだけだよ」
ひねくれた回答をしてみると父さんは朗らかに笑った。
「はっは!それはそうかもな!」
「で、なに?」
「お前に勇気をやる、前に踏み出す勇気を」
いつもは明るかった父さんが真面目な顔つきで語りかけてくる。
「ヒカルは自由に生きれば良い、それだけで良いんだ」
そう言われると手の平に紋章が浮かび上がる。
「これは....」
そうして父さんの方へ目をやると微笑んでいた。
「父さん!!」
何故かこれが最後の夢な気がして話そうとするが視界がぼやけて目を覚ました。
「父さん...」
自分の顔に一筋の涙が流れた。紋章も確かにあった。しかし父さんはもう居ない。
「分かったよ、自分が何をしたいのか」
また独り言を呟いていたが以前よりも目は活力に溢れていた。
「俺様に逆らうとはどういう事だ!」
また学校へ行くと凶暴で有名な獣人のフェリスが人間とエルフのハーフの子に暴力を振るっていた。
「暴力はやめて...」
そうハーフの子は言っているが辞める気配はない。
そこで紋章が光ると自分の体が勝手に動いてフェリスを殴りっていた。
「あ?なんだテメェ」
頬に拳がめり込み青筋を立てながらフェリスは言った。
「いや、その..不可抗力で...ごめんなさぁぁい!」
そう言って俺は全速力で走り出した。
「待てゴラァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!」
とんでもない剣幕でフェリスが追いかけてくるが、意外にもヒカル自身は運動神経が高く何とか逃げ切った。
「なんなんだよアイツ1回殴った位でマジで怖えよ」
息を切らしながら早口で俺はつぶやく。
「あのぅ」
背中で誰かが囁く
「うわぁぁあ!ビックリしたぁ」
見ればさっきのハーフの子ではないか
「さっきはどうもありがとうございました」
「いやいやなんて言うか自分も正直助けるつもりなんて無かったていうか勝手に体が動いたというか」
つい早口になって本心を言ってしまう俺。
気になっていた模様をふと見るといつの間にか輝きを失っていた。
「いやそれでも助かりました、お名前を聞いてもよろしいですか?」
「西園寺ヒカルって言います」
「私はネルと言います。ヒカルさん、本当にありがとうございました」
よくよく見るとその子は綺麗な青い髪と黒色の澄んだ瞳をしていて俺は見惚れてしまった。
「まあその..どういたしまして」
感謝された事なんて久し振りだ
「あのぅ、お礼をしたいのですが家に伺っても良いですか?」
「お礼をするなら普通招く側じゃない!?」
心の中で思っているツッコミをついしてしまった。
「あっ」
「すみません!今両親が家に来てて」
なるほど、この子は一人暮らしで色々あるみたいだ。
「こちらこそすみません、ちなみに両親はどんな方なんですか?」
そう俺が聞くとネルさんは歯切れが悪そうに答えた。
「母親は優しくて頼りになるんですけど父親が人の種類に厳しくて…」
「あぁ、僕は普通の人間ですからね」
そう、この世界は差別が酷く未だ色濃い人種差別もあるのだ。
「はい…なのでヒカルさんのお家に行っても大丈夫ですかね?」
「全然大丈夫ですよ!」
そう言ってネルを家まで案内した。
ボロボロで崩れかけの家に。
ネルは家を見ると言葉を失っていた。
「あ、アハハ個性溢れる家ですね」
「苦しいフォローだなぁ」
あまり人と会話しなかった為気付かなかったがどうやら自分には少しツッコミ癖があるようだ。
「まあとりあえず入ってください」
「はい!」
そう言って家へ入ると開口一番ネルが
「これ、お礼の品です!!」
差し出してきた物を見ると分厚い本だった。
「なんですかコレ?」
「魔導書ですよ!学校行ってるのに知らないんですか?」
「いやぁ授業なんか聞いてなくて」
「不良ですね」
「やめてその言葉沁みるから」
よくよく本を見ると紋章があり自分の紋章と全く同じだった。
「これは…」
「ん?どうしました?」
「いやなんでもないよ、それはそうとこれってどういう効果があるんですか?」
流石に気になるので聞いてみた。
「基本的に魔術書は1つにつき魔法を1つ覚えれるんですよ」
「なるほど、じゃあこの本は何を覚えれるの?」
「この本はですねぇ〜」
「はい」
「料理が上手くなる魔法を覚えれるんですよ!」
「要らなくね?」
「何言ってるんですか!一人暮らしにとっては重宝する物なんですよコレ!」
そういってネルはプンスカしている。そして気がつくと2人とも敬語がなくなっている。
「だって料理できるし」
「じゃあ見せて下さいよ」
二時間後〜
「美味ぁ〜い、ハッ!」
「はい俺の勝ち」
「こんなのずるいですぅ〜」
「まあ口にあったようで何より」
内心は手料理を美味しいと言って貰えて飛び跳ねそうなぐらい嬉しかったがそれは隠しておこう。
「なんで飛び跳ねてるんですか?」
「え?」
気が付くと模様が光り自分の体は馬鹿みたいにジャンプしていた。
「なんなんだよこの紋章ー!!!」
第一話 [完]
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