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ロニーはその後、劇場に呼んでいた役人に連れられて行き、メラン劇場にも後日捜査が入った。
孤児院の子供はやはりメラン劇場に流されていたらしい。エイミーは孤児院で容姿の良い子供を見つけるとロニーにそれとなく伝え、ロニーは劇場の仲間と協力して子供を引き取っていたのだそうだ。
真相を知った孤児院の院長は、涙ながらに劇場から戻って来た子供を迎え入れ、一人一人に謝罪していた。
エイミーはというと、一旦はロニーと一緒に連れられて行ったが、直接子供の売買には関わっていなかったとして、数日後には家に帰された。孤児院の子供についてはあくまで話題として出しただけで、ロニーが勝手にやったことだと言い張るので、それ以上追及ができなかったそうだ。
しかし、ギデンズ男爵の劇場で起こったことはその場にいた人たちはもちろん、街の人々にも噂として広まっており、みんなのエイミーを見る目はすっかり変わってしまった。
「これで子供たちが劇場に流されることも、施設で陰湿にいじめられることもないわね」
アイリスは、その後の詳細を話しに、カティック家までやって来たエリックに向かって言う。
「ああ。一件落着だな」
エリックは笑顔で言った。アイリスも微笑み返すが、ふと、心配事が頭をかすめる。
「エリック様、けれど本当によかったの?エイミーの本性をみんなにばらしてしまったこと」
アイリスが眉根を寄せて尋ねると、エリックは言った。
「それは気にしなくていいと前にも言っただろう。エイミーの自業自得だろ」
エリックは平然とした様子だが、アイリスは素直に納得できなかった。
今は平気そうにしているが、以前作戦会議をしたときのエリックは明らかに動揺していた。アイリスはエリックが無理をしているように感じ、しんみりした口調で言った。
「そうね。確かにエイミーの自業自得だわ。……けれど、悪いことをした人間だからって、その人を心配する気持ちを否定する必要はないと思うの」
「え、ああ、そうだな」
「エイミーとロニーの婚約は、当然だけれど破談になったそうよ。あのね、私、自分の気持ちに嘘をつくことはないと思うの。エイミーのことを励ましてあげたいのなら、行ってきてもいいのよ。エイミーはあんな子だけれど、エリック様みたいな人が側にいれば、正しい道を歩めるかもしれないわ」
励ますつもりでアイリスは言った。しかし、エリックは彼女の言葉に顔を曇らせる。
「……君はそれを望むのか?」
「え?私はというか、エリック様がそう望んでいるんじゃないかと思って」
「……そうか。応援してくれるわけか。僕の方こそ自業自得だな」
エリックはため息を吐きながら、悲しそうに言った。アイリスは彼の言葉の意味がよく飲み込めず、首を傾げる。
「どういう意味?全然わからないんだけど……」
「本当に気にすることないんだよ。だって、僕は最初からエイミーのことが好きでもなんでもないんだから」
「え?」
アイリスは目を丸くしてエリックを見た。
「どういうこと?美しいだの尊いだの、散々言っていたじゃない。そもそもなんでそんな嘘をついたの?」
「いや、それは……」
「そうだ。ロニーとエイミーの婚約発表パーティーのとき、あなたすごい表情で二人を見てたわよ。この世の全てを恨むような顔だったわ。何とも思っていない相手にそんな顔を向ける?」
アイリスはしどろもどろになるエリックに構わずまくし立てる。エリックは遮るように言った。
「それは!エイミーじゃなくてロニーを見てたんだ!突然婚約者を乗り換えるクソ野郎なんていなくなればいいと思って!」
「え、あなたが好きなのはロニーの方だったってこと……!?」
「違う!ロニーが君の婚約者だったからだ!!」
大声で言ってから、エリックは慌てて口を噤む。アイリスは目をぱちくりさせながらエリックを見ていた。
「私……?なんでそこで私が出てくるの」
アイリスはわけがわからないという表情で言う。エリックはしばらく迷うように視線を泳がせた後、観念したように言った。




