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孤児院の外へ出るなり、アイリスは深刻な表情で考え込んでいるエリックに向かって尋ねた。
「エリック様、一体どうしたの?半年前って言葉にやけに反応していたけれど、何かあるの?」
「……ああ。実は、メラン劇場にも同じ時期から子供がたくさん入ってくるようになったんだ」
「え?」
アイリスは目を見開いた。エリックの言いたいことを理解し、おそるおそる尋ねる。
「それはつまり……、エイミーがメラン劇場に子供を流す手伝いをしているってこと?」
「……わからないけどな。けど、ロニーと関りがあるなら有り得ない話ではないと思ったんだ。だって、子供にあんな言葉を吐く人間が、わざわざ孤児院の子供の引き取り先を探すのに尽力するなんて、ちょっと想像できないだろ?」
エリックは苦々しい表情で言う。アイリスは黙ってうなずいた。
「それにしても、エイミーのことなのに随分あっさりと切り替えられたのね。あんなに美しいとか尊いとか言っていたのに、今はまるで最初から好きじゃなかったみたいな態度だわ。公平でありがたいけれど」
アイリスが何気なくそう言うと、エリックの肩がびくりと揺れた。そうして、急にしどろもどろになって話し出す。
「い、いや……。本当はショックを受けているんだ。けれど、やはり子供に対してあんなことを言うのは許せないし、そういう女性を盲目的に尊いだとか言うのは、道徳に反すると思って……、泣く泣く気持ちを切り替えたんだ」
「まぁ。そうだったの……。そんな葛藤があったのも知らず、あっさりと切り替えたなんて言ってごめんなさい」
アイリスは気の毒そうな顔で謝った。
「いや、謝ることはないんだが」
「いいえ。無神経だったわ。親の取り決めでロニーと婚約していた私と違って、あなたはエイミーのことが本当に好きだったんですものね。葛藤があって当然よ」
アイリスは真面目な顔で言う。エリックはその様子を戸惑った顔で見ていた。
「それより、今はメラン劇場とエイミーの疑惑について考えよう!時期が被っているだけじゃあ確証は持てないから、何か確かめる方法が欲しいんだが……」
エリックの言葉にアイリスも同意する。
「そうね。情報が必要ね。またメラン劇場に行って調べてくる?」
「いや、それは危険だろう。この前フェイとローナを連れ出した時、誰かに見られていた可能性もある。近づかない方が良い」
「じゃあ誰に……」
言いかけたところで、アイリスは気づく。
「そうだ!フェイとローナに聞いてみましょう!メラン劇場にいたんだから何か知っているかもしれないわ!」
「ああ、確かに!」
二人は早速アイリスの家で、フェイとローナから話を聞きだした。
「その人なら知ってる!」
「ロビンと話しているのを見た!舞台の裏でぴったりロビンにくっつきながら俺たちを見てた!」
エイミーの特徴を伝えて会ったことがないか尋ねると、二人は迷わず答えた。ロビンとはメラン劇場でロニーが使っている偽名だ。子供を劇場に流していた証拠とまでは行かなくとも、エイミーはロニーとその場にいたらしいことは確認できた。
「アイリス、あの女がどうしたんだよ」
フェイは真剣な目で尋ねる。全て話してもいいのかと迷いつつ、アイリスは正直に答えることにした。彼らは当事者なのだ。
「実は、その人は私の従妹のエイミーっていうんだけど、その子が劇場に子供を連れてくるのに関わっているかもしれなくて……」
アイリスは事情をかいつまんで説明する。フェイとローナは真剣な顔で聞いていた。
「……そういえば、モリーやニック、それにクリスは別の時期に来たのに、知り合いみたいだったよね。よく三人で前にいた施設の話をしていた」
ローナが考え込みながら言った。フェイは首を傾げる。
「そうだったっけ?」
「そうだよ!全く、フェイは私以外の子ともちゃんと話しなさいよね」
「うるさいなぁ。でも、確かに半年くらい前に来たやつは似たような雰囲気のやつが多かったような」
「だよねぇ」
「ローナ。その話を詳しく聞かせてくれないか?」
エリックはローナに尋ねる。ローナの言うことには、別々の時期に来た三人が、同じ施設に住んでいたような会話をしていたことがよくあったらしい。三人とも劇場に来たのは、半年前より後の時期だという。
エリックはローナの出した名前を書き留めた。




