第2戦:さくら、ペアします!(27)
第2戦の27を公開します。
大幅に遅れてしまい、申し訳ありません。
何度か書き直し、かなりいい感じになっていると思います。
バトルの結末、楽しんで頂けたら嬉しいです。
○●○
ギリギリギリ
さくら の腰を虎獣人が締め付ける。
「い、やだ、腰が、腰が、、。」
腰に感じる強烈な痛みが、あの日の事を思い出させる。
自分から″体操競技″が、そして自由が奪われた、あの悪夢の日の事を。
また、何も出来なくなってしまう。
さくら の目から涙が溢れ出し、恐怖感が心を満たしていく。
「やだっ、離して、離してー!」
パニック状態になり、なんとか逃れようとがむしゃらに体を動かし暴れる さくら に、
「離して欲しけりゃ、負けを認め、な!」
楽しげな表情で、さらに力を加えていく。
「いやぁぁぁ!」
さくら の叫び声と共に、HPが一気に残り60%まで削られた。
●○●
「くっ、離すなのですわ!」
痛みに耐えながら獅子獣人の顔面を殴り続けるが、足が浮いた状態では力が入らずダメージを与える事が出来なかった。
「そんな攻撃、痛くも痒くもないぜ。
いや、これはマッサージか。
サービス満点じゃねー、か!」
京姫の攻撃をものともせず、さらに力が加えられる。
「くっっ。」
唇を噛みしめ、必死に耐えながら暴れようとするも、獅子獣人の強力な腕力に締められ、手足をバタつかせるくらいしか出来なかった。
その時、
「いやぁぁぁ!」
さくら の叫び声が聞こえてきた。
位置的に さくら を見ることが出来ない。
けれど、かなり危険な状態なのだと感じられた。
『くっ、あの声、かなり、ヤバい、なのです、わ。
る~ねぇ、何がお、、。』
状況が分からず、ひまわり に確認しようとした時、
『あかん、もっちゃんがパニくってる~。
腰はあかんね~ん!』
頭の中に慌てふためく ひまわり の声が響いてきた。
『腰、なのですわ?』
一瞬考え、すぐに分かった。
さくら が自分と同じ状況なら、腰を締められている。
腰への攻撃は、さくら の現実と繋がってしまう最大の弱点だ。
なんとかしなければ、心が壊されてしまう。
京姫は痛みを堪えながら、
『る~ねぇ、落ち着く、なの、ですわ。
私は、全体が、見えない、なの、ですわ。
状況を、教えて、ほしいなの、ですわ。』
ひまわり に問い掛けた。
『せやった~うちは冷静でおらんとあかんのに~もっちゃんのパニックがうつってもとった~。
ごめんな~。』
『それは、しょうがない、なの、ですわ。
とにかく、指示して、なの、ですわ。』
『ちょっと待ってな~。』
答えた ひまわり は京姫と獅子獣人に目を向けた。
状況確認、思考、攻撃方法決定。
までを瞬時に終わらせた、
『京姫、足閉じて~思いっきり振るんや~!』
ひまわり の声が脳内に響いた。
『なるほど、なの、ですわ。』
すぐに理解した京姫が、意地悪そうにニヤリと微笑む。
足を閉じ、体をギリギリまで反らし、爪先に力を込めて、思いっきり振り込んだ。
ミシ
腰を締められていた京姫の爪先は、それをするのに最適の位置だった。
股間を思いっきり蹴られた獅子獣人が、
「いぎゃ!?」
変な声を出して固まった。
腕の力が抜け、京姫の体が落ちる。
スタっ
と着地し駆け出す京姫の事など構っている余裕もなく、獅子獣人が股間を押さえて崩れ落ちた。
※男性の股間は~現実と同じ痛覚設定になってるんや~。
せやから~蹴られたらめっちゃ痛いんやで~。
by 久しぶりの謎の解説さん
○●○
『だれか、たすけて、、。』
さくら の精神に限界が迫っていた。
もう痛いのかどうかも分からない。
意識が薄れ、途切れようとしたその時、突然頭の中に浮かんできた老人が、
《ここは”UFT”の中じゃ。さくら、”仮想空間”に惑わされるんじゃない。》
さくら に力強く声を掛けてきた。
それは師匠、レイモンの優しい笑顔と声だった。
”この痛みは、本物じゃない”
腰の痛みで忘れかけていた大事な事を思い出した。
『そうなんだよ!』
涙が止まり、目が輝きを取り戻す。
『また、現実に負けちゃうところでした。
レイモン老師、ありがとうございました。』
心の中でお礼を言うと、レイモンはうんうんと頷き、微笑みながら消えていった。
さくら は痛みを堪え、状況を確認する。
自分の額の前に、虎獣人の鼻があるのが見えた。
これは、使える。
さくら は必死に腕を伸ばして虎獣人の体を押し、体を反らせる。
それは腕から力づくで逃れようとしているかのようだった。
「なんだなんだ、まだ悪あがきすんのか。
そんな事しても、俺の腕は外れないぜ。」
余裕で さくら の腰を締め続ける虎獣人は、その行動の”本当の意味”に気付いていなかった。
ふっ
さくら が腕の力を緩め、体が戻される勢いを乗せて、額を虎獣人の鼻にぶつけた。
ぎゃっ!
悲鳴を上げ、鼻を押さえる虎獣人の目には涙が滲んでいた。
「よし!」
解放された さくら がお返しとばかりに鼻を押さえる手を、思いっきり蹴った。
ぐあぁ!
さらなる衝撃によろけ、
どすっ
尻餅をついて、へたり込んだ。
そこに、
「ち~ねぇー!」
京姫が叫びながら近寄ってきて、
「京姫、んんん、、!?」
さくら に抱き付いた。
「ち~ねぇ、大丈夫?」
心配そうに声を掛けてくる京姫の頭を優しく撫でながら、
「心配させちゃって、ごめんね。
わたし、負けなかったんだよ。」
謝り、告げた さくら の表情から力強さが溢れていた。
「良かったなのですわ。」
「それで京姫、あのね、、。」
ぼそぼそぼそ
さくら が京姫の耳に口を寄せ、何かを伝えた。
京姫は小さな頷きで答えた。
その時、
「てめぇら、遊びはここまでだ!」
「覚悟しやがれ!」
回復した、獅子獣人と虎獣人が怒りの籠った声で、さくら と京姫を威嚇した。
◆◇◆
『てめぇら、いつまで踞ってやがる!
このまま負ける気じゃねえだろうな!』
2匹の頭の中に姉の声が響いた。
先程の さくら と京姫の攻撃でどちらもHPが残り10%になっていた。
もう後がない。
『『すんませんした!』』
2匹同時の謝罪に、
『時間切れが近い。
あれ使って、さっさと終わらせな。』
必殺技を許可した。
『『はい、姉さん!』』
同時に返事し、慌てて立ち上がると、
「てめぇら、遊びはここまでだ!」
「覚悟しやがれ!」
さくら と京姫を威嚇した。
そして、獅子獣人は京姫に、虎獣人は さくら に最速で向かっていった。
獅子獣人の噛み付きを混ぜた変則的な攻撃で、京姫のHPが少しづつ削られていく。
虎獣人の引っ掻きと蹴りの連携攻撃で さくら のHPが少しづつ削られていく。
けれど、2人が余裕の笑みを浮かべている事に気付いていなかった。
◇◆◇
『もっちゃん、京姫、動き見えてる~?』
『見えてるよ。』
『見えてるなのですわ。』
さくら も京姫もしっかり相手の動きが見えていた。
それぞれが相手の攻撃を最小限で受けながら、お互いの状況を伺っていた。
『ほんなら~終わらせよか~。』
『オッケーなんだよ。』
『決めてやるなのですわ。』
ひまわり の指示に2人が力強く答えた。
「「せーのっ!」」
さくら と京姫が声を合わせ、獅子獣人と虎獣人を蹴り飛ばす。
ぐあぁ!
攻撃を受けながら上手く誘導していたので、2匹が背中どうしでぶつかった。
立ち上がろうとしている間に、まず距離を取った さくら に向かって京姫が走り出す。
向かってくる京姫を、さくら が両手を組み、軽く腰を落として待ち構える。
京姫が さくら から少し離れた位置で踏み切って、飛んだ。
すっ
さくら が京姫の右足を組んだ両手で受け止める。
ぐぐっ
軽い重みがを感じながら、京姫を獣人達の居る方に押し出した。
タイミングを合わせ、さくら の手を発射台代わりして、軽く曲げていた右足を蹴り伸ばす。
さくら の押し出す力と蹴りが合わさり、体を伸ばしながら半捻った京姫が、砲弾のような勢いで獣人目掛けて飛んでいく。
腕をXにして超速で飛んでくる京姫を、
「これは、」
「フライング クロス チョップか!」
獅子獣人と虎獣人が間隔を空けて、やり過ごす。
「速かろうが、そんな見え見えの攻撃にやられるかよ。」
「やっぱ、お子様だな。」
「そんじゃ、」
「決めるぜ!」
獅子獣人が正面の さくら に、虎獣人が向きを変え、通り過ぎた京姫に、必殺技”獣人咆哮”を放とうと息を吸い込みかけた時、
『罠だ、逃げろ!』
姉の声が脳内に響いた。
だが、遅かった。
京姫が、
クルっ
と前方宙返り1/2捻りで着地するタイミングに合わせ、
「「速度増加、レベル10!」」
さくら と京姫が同時に叫んだ。
「「き、、。」」
消えた、と思う間もなく、
ヒュッ
ゴン!
ゴス!
2匹は床に頭を打ち付けられ、晒された臀部の上に、さくら と京姫の両膝がめり込んでいた。
『RJN~完璧や~!』
ひまわり が歓喜の声を上げた。
さくら の必殺技だった″RJN″をマスターしていた京姫との同時発動で、2匹のHPが0になり、
WINNER、チーム・デュアルスイーツ!
電子音声が勝利チームの名を告げた。
「どやった~?」
「腰を攻撃された時はどうなるかと思ったよ。」
「でも、よう耐えたな~。」
「老師のお陰だよ。」
「ほんま、良かったわ~。」
「だね。
そして次回は。」
「5/8の8時公開予定やで~。」
「間に合うのかな?」
「どやろな~。」
「とにかくがんばるらしいので、お楽しみに。」




