第1戦:さくら、挑みます!(4)
第1戦の4を公開します。
さくらの決意はどうなったのか?
4人のほのぼの感を楽しんで頂けたら嬉しいです。
(6)
あの決意の誕生日から1週間経った平日の昼下がり。
ついにこの日が来た。
始めるには少し工事が必要だったので、逸る気持ちを抑えるのが大変だった。
けれど、まさかこんなに早く話が進むとは思わなかった。
機材を揃えるだけでもかなり時間が掛かるはずだったから。
けれどあの日、
「お父さま、お母さま、お願いがあります。
私、フルダイブVRのゲームをやりたいのです。」
思いきって伝えた思い。
それは、
「「え!?」」
両親を驚かせた。
顔を見合わせ、
「どうゆう事なの?」
「分からん。けど自分でそれを見つけた、って事だろ。」
「そうよね。それなら良かったわ。」
「だな。」
言葉を交わし、頷きあうと、父は席を立って部屋から出ていった。
突然の父の退席に、
『え!?お父さま、どちらへ?』
戸惑っていると、
「どうして突然それに興味を持ったの?」
母が優しい声で尋ねてきた。
妹も興味津々(きょうみしんしん)とゆう感じで さくら を見つめている。
2人が喜んでいるようなので、さくら はためらわず話し始めた。
「今日、たまたまテレビで観たのです、”UFT”って言うゲームの映像を。
それで私、」
そこで言葉を区切った。
母も妹も目をキラキラさせている さくら の表情と”間”から次に来る言葉が予想出来ていた。
長く聞いていなかった、さくら が完全復活した証であるその言葉を。
「ハートが炎上しちゃったのです!」
力強く言い切る さくら の言葉に2人は心の中で拍手を送った。
と同時に安堵した。
この言葉が出てくるくらいに"のめり込めるもの"が見つかったのだから。
「それはどうゆうゲームなのですか?」
妹が尋ねた。
「格闘技のゲームです。」
「だと思いました。」
「ど、どうして分かるのですか?」
「だって姉様、格闘技漫画とかもの凄く好きじゃないですか。
そんな姉様が興味を惹かれるゲームなんて格闘技系以外ないじゃないですか。」
言い切る妹に、
「ま、まぁ、そうなのですけど。。
とにかくそのゲームはもの凄くすごかったのです。」
語彙力のない言葉で返した。
そんな事を話していると、父が包装紙に包まれ、リボンが巻かれた少し大きめの箱を持って入ってきた。
そしてそれを さくら の前に置いた。
「父母からのプレゼントだ。」
「開けてみて。」
父と母からのプレゼントと言って置かれた物はよく見ると結構雑に包まれていた。
リボンを解くと包装紙は被せているだけで、簡単に外せた。
出てきたのは少しくたびれた感じのダンボール箱。
を開いて中を覗いた さくら の目が驚きで見開かれた。
中の物を丁寧に取り出し、
「これ、エルドメット。」
見つめながら呟いた。
それはフルダイブVRに必要な物で、さくら が今1番欲していた物だった。
「これ、、何で、、?」
何故自分が今日欲しいと思った物を両親が用意していたのか?
理解出来ず、戸惑いながら尋ねた。
「それは主治医の武氏先生から勧められたんだよ。」
「このフルダイブVRは体に不自由のある患者さんの支援にも使われているの。
この中だと自由に動けるからって。」
「それで さくら にもって言ってくれてたんだよ。」
「半年くらいしたら心の負担が和らいでいるだろうから、って。
なら誕生日がいいタイミングだと思って。」
「けど、さくら から言い出してくるとは思わなかったよ。」
「ほんとよ。どう話そうかって結構悩んでたのよ。
でも、さくら が目的を見つけてくれてほんとうに嬉しいわ。」
2人の温かさにまた涙があふれ出した。
「ありがとう、ございます、お父さま、お母さま。。」
エルドメットを大事そうに抱きしめる さくら を見て、
「そんなすごい物貰ってしまったら私のが霞んでしまいます。」
頬をぷくっと膨らませながら、妹が拗ね声で不満を口にした。
「な〜に、たんぽぽ。
何が霞んでしまうの?」
さくら に頬をぷにっと突っつかれた妹が、
「そ、それは、、。」
少し赤らんだ顔と照れをごまかす様に立ち上がると、ソファの所に見えない様に置いていた紙袋を取り上げ、
「姉様、これ!」
言いながら勢いよく さくら に向けて突き出した。
「これ、私に?」
「誕生日プレゼント。お母さまと選んだの。」
「ありがとう、すごく嬉しい。
開けていいかな?」
「うん。。」
さくら は受け取った紙袋に入っていた小箱を出して、包装を丁寧に外した。
中には白い小箱が入っていて、そっと箱を開けると中に可愛らしい"桜のペンダント"が入っていた。
「すごく可愛い。
ありがとう、たんぽぽ。」
「うん。でも姉様が元気になってくれたのが1番嬉しいです。」
満面の笑顔の さくら に抱き付いた妹も満面の笑顔になっていた。
と、その時 さくら が重大な事を思い出した。
「あれ?今日が私の誕生日でしたら、たんぽぽの誕生日はどうしたのですか?」
さくら より少し早い2月19日生まれの妹の誕生日を祝っていなかった事に気付いた。
今日の日にちすら分からなくなっていたのだから当然なのだが、
「ごめんなさい、たんぽぽ。
近い内に絶対プレゼントしますから。
絶対、ですから。」
さくら が力を込めて伝えた。
「そんなの来年でいいですよ。
明るい姉様に戻ってくれたのが最高のプレゼントですから。」
目に涙を浮かべながら微笑む妹に、
「それでは私の気持ちが納得しません。
絶対、プレゼントしますから。」
もう1度強く伝えた。
「わかりました、姉様。
そこまで言われるのでしたら、楽しみにしています。」
こうして皆の笑顔と共に さくら の誕生日は過ぎていった。
そんな事を思い出しながら、VR世界に旅立つ準備を進めていた。
VR専用端末を起動し、「UFT」のゲームディスクをセットした。
そうしていると、
コンコン!
とドアをノックする音が聞こえてきた。
目を向けると母が、
「これから行くのね。
緊張してる?」
嬉しそうに準備している さくら に声を掛けた。
「緊張は少し、しているかもです。
それよりワクワクが膨れ上がって破裂しそうです。」
心ここにあらず、な様子の さくら を見ながら優しく微笑み、
「初日なんだから、ほどほどにしなさいよ。
あんまり遅くならないように、そうね18時くらいには戻ってくるのよ。」
思いを伝え、少しだけ釘を指した。
「はい、気を付けます。
お母さま、ほんとうにありがとうございました。」
「楽しんできなさい。」
「はい、行ってきます。」
それだけ言って、母は部屋から出ていった。
そしてゲームを始める準備が整った。
車イスを端末の前で止め、車輪を固定して、特殊機能のボタンを押した。
ゲームをする度にベッドに移動するのは大変だから、と付加された機能"スーパーリクライニング"。
椅子の部分が少しだけ角度を残したまっすぐに近い状態になり、座面全体に空気が入ってエアクッションになり、優しく体を受け止めた。
ゆったりした状態でエルドメットを装着し、
「アラーム、18時、セット。」
母に言われた時間に戻れるようにエルドメットのアラーム機能に時間を設定した。
今の時刻が13時半頃なので、およそ4時間半ゲーム世界を堪能出来る事になる。
「さぁ、参りましょう。」
ひとり言ち、体をエアクッションにゆだねた。
極度の"緊張状態"や"興奮状態"だとログイン出来ないので、ゆっくり深呼吸して、気持ちを落ち着かせ、
「接続!」
インターネットへの接続を開始するコマンドを発した。
ヒュイーーーーーン!
小さな駆動音が響き、エルドメットのバイザーに正常に接続された事を知らせる青いLEDが点灯した。
それを確認すると、
「ダイビング!」
フルダイブVR世界に入るコマンドを発し、さくら の意識がゲームの世界に旅立って行った。
如何だったでしょうか?
ついにVR世界に旅立ったさくらを待ち受けるのは!?
次回から第2章に入ります。
さくらのVRデビューを楽しみにして頂けたら嬉しいです。
次回は月曜の12時に更新予定です。
よろしくお願い致します。




