第1戦:さくら、挑みます!(21)
第1戦の21を公開します。
なんとか1時間遅れで済ませました。
遅くなって申し訳ありません。
ちょっと内容を整理するのに時間が掛かってしまいました。
リアルとゲームの違いを本業がシステムエンジニアでプログラマーの作者が考察し作り上げたシステム。
分かりやすく書けたと思ってます。
理解し、楽しんで頂けたら嬉しいです。
(8)
”師匠イベント”開始から3日目の朝。
「よし、いいじゃろう。
”ラジオ体操第一”は完璧じゃ。
3日で仕上げたのはお前さんが初めてじゃよ。
優秀な弟子を持てて、わしゃ嬉しいわい。
後は忘れんように、毎日最低3回はやるんじゃぞ。」
レイモンに褒められ、
「はい、ありがとうございます。
ちゃんとやり続けます。」
さくら が元気に答えた。
「では、次の段階にいくかの。」
「はい、よろしくお願いします。」
元気に返事し、しっかりとお辞儀しながら、
『いよいよ組手でしょうか?
もう”どきどきライジング”ですぅ。』
さくら が心の中でわくわくしていると、レイモンが”音楽操作板”を操作し始めた。
『あれれ、また音楽を掛けるのでしょうか?』
そんな事を考えていると、
「ラジオ体操第二~。」
チャンチャチャチャン、チャンチャチャチャン、チャチャチャチャ、チャンチャチャン♪
聞いた事のある軽快な前奏が流れ出した。
「え、え、え~っ、、第二は覚えてないですぅ!」
わたわたしながら、いくつかうろ覚えの動きをやってみた。
やり終え、おそるおそるレイモンを見ると、
「はぁぁぁぁぁ。。」
思いっきりため息をついていた。
「ううう、すいません。。
(小学)3年生くらいまではやってたと思うのですが、全然覚えてなかったです。。」
「ま、そうじゃろうと思っとったがな。
なにせこれまででまともに出来た弟子は1人だけじゃったからのう。
そう言えばあやつは第三も完璧じゃったわい。」
「そんな”ラジオ体操オタク”なお弟子さんがいたのですか?」
「居ったぞ。
今は”Sランク”になっておる。」
得意気に語るレイモンに、
「そんなすごい人でも”師匠イベント”を経験したって事ですよね?」
さくら はそんな事を尋ねていた。
「あやつも最初はお前さんと同様に”悩み”を抱えとってな。
なかなか勝てなんだ。
ま、わしの指導の賜物って事じゃな。」
自慢げなレイモンに、
「なら、私も強く、なれますか?」
おそるおそる尋ねてみた。
「それは、お前さん次第じゃよ。
強くなりたいなら、まず”第二”を完璧にするんじゃな。
では、始めるぞ。」
「はい、よろしくお願いします。」
さくら は元気に返事すると、レイモンに厳しく指導されながら”第二”を3回繰り返し、なんとか一通り覚える事が出来た。
「ま、こんなもんじゃろ。
では、負荷運動を始めるのじゃ。」
「はい、行ってきます。」
返事をして、さくら は池周りランニングを開始した。
最初は5周20分だったのが、今では5周15分で走りきれるようになっていた。
今日は少しペースを上げ、5周13分を目標にしている。
そして走っていると、また頭を過る。
あの日のレイモンに言われた事が。
「"指導を素直に受け入れる"のは良い事じゃ。
じゃが、"指示に対して自身の判断ですぐ動く"のはよろしくないのう。」
それは長年、体操競技をやっていて身に付いていたものだった。
世界レベルにまでなっていた さくら には"指示"はきっかけ、"指導"はすり合わせになっていた。
新技の指示とゆう"きっかけ"を元に技をイメージし、やってみる。
指導される事でイメージとの差異を"すり合わせ"る。
そうゆう練習を続けてきたので、そう反応してしまうのだ。
「ランニングの時、お前さんを試したんじゃよ。」
「どうゆう事、ですか?」
「"UFT"では全力を出してはダメなんじゃ。」
「全力を出す、なんて普通の事じゃないですか。」
さくら は訳がわからないと、レイモンに詰め寄った。
「ここには実体がないからのう。」
「え?
あるじゃないですか、ここに。」
自身の体を指差す さくら に、
「それがフルダイブVRの初心者が必ずしでかす失敗なんじゃよ。
その姿はゲームが作り出した虚像に過ぎん。
疲れたり、痛みを感じたりしていると、そう錯覚してしまうんじゃ。」
静かに言い聞かせた。
「現実では脳と体が直結し、情報を交換しておる。
故に体の状態はすぐに脳に伝わり、負荷を軽減させようとする。
じゃが、"UFT"では脳からの指令をプログラムが判断し、体が動いているかのように"思わせている"だけじゃ。
プログラムは負荷値を計算し、脳に"疲れた"と思わせ、体の動きを鈍らせおる。
全力で動くと負荷値が一気に上がり、規定の最大量を超えると脳に一気に負荷を掛ける。
そうゆう"仕組み"になっておるんじゃよ。」
さくら はレイモンの話を真剣な表情で聞き入っていた。
そして、ここに居る自分とゆう存在がただのデータなのだと思い知らされた。
「それでは、どうする事が最良だったのでしょうか?」
さくら は間違いを認め、受け入れると、素直な気持ちで問い掛けた。
「"負荷を掛け過ぎずに掛ける"じゃ。
規定の最大量を超えんよう、長時間負荷を掛ける。
そうする事で能力値を増せるんじゃ。
ただのう、規定の最大量は個々に設定されとってな、自分で見極めんといかんのじゃよ。
その辺の詳しい事は後で"ルールブック"を読んでおくんじゃな。」
「はい、わかりました。
いろいろ考える事が多いですが、しっかり覚えます。」
さくら の表情が明るくなり、目の中に炎が見える、ような気がする。
そんなやる気に満ちあふれている さくら に、
「それと、もうひとつ。
これはお前さん自身に関する事なんじゃが、、。」
真剣な表情を向け、
「何か"抑え込んどるもん"があるようじゃな。」
レイモンが告げた。
その言葉には当然、思い当たる事があった。
走りながら、
「いつまで怖がってるのでしょうか。。」
呟きが漏れる。
その事はゲームを始めて直ぐに気付かされた。
"体操競技の技が出来ない"
ゲームを始めた翌日、自室の訓練部屋で床運動の演技をしようとした。
が、体がまったく動かなかった。
どうやら脳が体操競技を"拒絶"してしまっているようだった。
それは試合の時にも枷になっていた。
ただ転がって避ける、とゆう事すら出来なかったのだ。
それをレイモンに指摘された。
これを克服する事が さくら の最優先事項のようだ。
けれど、何の進展もないまま、ラジオ体操と負荷運動の日々が過ぎていった。
そして7日目、最終日の朝を迎えた。
如何だったでしょうか?
理解して頂けたでしょうか?
リアルとゲームの違いとさくらの内面の問題。
修行編で描きたかった部分です。
これを踏まえて修行も終盤。
次回は金曜の12時更新予定。
よろしくお願い致します。




