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第1戦:さくら、挑みます!(1)

第1戦の1を公開します。

ここからがさくらの始まりとなります。

本格的なバトルに突入するのは少し先になりますが、導入部楽しんで頂けたら嬉しいです。

第1章


(1)


体操競技世界選手権大会での事故から半年程の月日が経過していた。

落下した時の体勢が悪く、腰椎ようついを損傷した さくら の両足は動かなくなってしまった。

体操競技はおろか、日常生活すらもままならない体になってしまったのだ。


リハビリを続けて車イスで生活出来るようになるまで約3ヶ月。

最低限の日常生活を手助けなしで出来るようにはなった。

けれど、ただ日々を”生きている”だけの状態になっていた。


体操競技への未練はあったのかも知れないが、すでに気持ちは整理されていた。

やっている時は楽しかった。

けれど”全て”とゆう訳ではなかったらしい。


”親や妹には出来るだけ迷惑をかけない”


そんな思いから、部屋にこもりがちになっていた。

買い物もネットで出来るご時世なので外出の必要もなく、パソコンで動画を観たり、電子書籍で読書したりして日々を過ごしていた。

以前、腕の骨折で練習出来なくなっていた時期にハマり、大好きになった”格闘技漫画”やジャッキー・チェンの映画。

それらは一時ひとときの楽しさを与えてくれるだけだった。


そんな無気力に過ごしていた日々が”衝撃の出会い”で一変した。


それは、とある晴れた日の午後の事だった。


『はぁぁ、、。

 嫌になるくらいのいお天気ですね。

 ますます気が滅入めいってしまいます。。』


雲ひとつない快晴の青空は さくら の心を曇らせるだけだった。

どんなに天気が良くても、色々手間が掛かり疲れるだけなので外出する気にはならなかった。


はぁ。。


さくら は溜め息をつきながらリビングルームに移動した。

父は仕事、母は買い物、妹は学校、と家族はみんな出掛けていて、今家に居るのは さくら だけだった。


テーブルに置かれていたテレビのリモコンを取り、テレビをけた。

見たい番組があった訳ではなく、気をまぎらわせられる”雑音”を出したかっただけだった。

その時、


「”君も頂点てっぺんを目指して見ないか!”」


テレビからそんな言葉が聞こえてきた。


頂点てっぺん、嫌な言葉です。。」


不快感をあらわにしたつぶやきがこぼれた。

それは聞きたくない単語のトップ(ワン)になっていた。

あの”最悪の日”の事を思い出してしまうから。


不快な気分になりチャンネルを変えようとした。

けれど、画面に映っていた映像に目を奪われてしまった。


「”体を動かすのが苦手でも大丈夫!ゲームの中ならどんな事だって出来るんだぜ!

  さあ、君もゲームの世界にダイブして、VR格闘で頂点てっぺんを目指そう!”」


それは入院していた頃から話題になっていたフルダイブ・ヴァーチャル・リアリティー・ゲームの宣伝だった。

ゲームに興味のなかった さくら は聞き流していた。

知っていたのは”ゲームの世界に入れるらしい”とゆう事だけだった。


「何なの、ですか、これは!?

 凄すぎ、です!」


画面に映っている映像は さくら の想像を遥かに越えていた。

現実と区別が付かない3D映像の凄さ。

闘技場で繰り広げられる激しいバトル。

それは大好きな”格闘漫画の世界”そのものだった。


流されているのはフルダイブVR格闘ゲーム「UFT」の第1回最強決定戦のダイジェスト映像だった。

様々な格闘技を駆使して戦っているのは屈強な男性だけではなかった。

老若男女、巨漢の男から幼女まで、幅広い年齢層の選手たちが、現実では出来ないような技を使って闘っていた。

それは人間の運動能力を超えていた。


さくら は目をキラキラさせ、その映像に心をうばわれていた。


「”「UFT」が第2回最強決定戦を開催するぞ!

  各レベルで頂点てっぺんを目指そう!”」


締めの言葉でCMが終わり、レトルト食品のCMに変わっていた。

けれど、さくら は放心状態で画面を見つめていた。

心臓が体操競技の試合の時よりドキドキしていた。


しばらく画面を見つめていた さくら は唐突とうとつに、


わたし、ハートが炎上してしまいました!」


熱のこもった声を上げた。

それは さくら のハートが燃え上がる程奮起(ふんき)した時に口にする言葉だった。


さくら はテレビを消すと大慌てで自室に戻り、ノートパソコンの電源ボタンを押した。

はやる気持ちに起動時間がもどかしく感じられる。


起動すると「動画サイト」を開いて「UFT」の動画を検索し、一覧に表示された動画を片っ端(かたっぱし)から再生していった。

再生される試合は強者同士の激しいバトルから素人同士の微笑ましいバトルまで様々だったが、そのどれもが さくら の心を揺り動かし、失った”生き甲斐”が見つかったのだと感じられた。


すぐさまネットでフルダイブVRを始めるのに必要な機器の情報を調べた。

色々調べてみたが、やはりそこそこ値の張る物だった。

自分が貯めている貯金では全然足りていない。

けれど、この気持ちをおさえる事は出来そうになかった。


「お願い、するしかないです。」


両親には凄く負担を掛けているのは分かっていた。

入院している間に家はバリアフリーにリフォームされていて、あらゆる所が車イスで生活しやすいようになっていた。

こんな状態になったのは自分の過失ミスなのだからと、なるべく負担を掛けないよう大抵の事は自分で出来るようにしていた。

なので”お願い”すれば聞き入れてくれるだろう。

けれど、


「しばらく”お小遣こづかいなし”くらいは覚悟しないとです。」


さくら はただで”お願い”しようとは思っていなかった。

日常生活で掛けてしまっている負担を考えると、わがままはダメなのだ、と。

決意を固めた さくら は動画鑑賞を再開した。


目を輝かせ、ワクワクしながら動画を観まくり、のめり込んでいった。


(2)


「ただいま~!」


帰宅した母がたくさんの食材が入った買い物袋(マイバック)を玄関に置きながら さくら に声を掛けたが、返事がなかった。

退院して家に戻ってからは親に負担を掛けないように自分の事はほとんどこなしてくれていたけれど無気力に、ただ日々を過ごしているだけの娘を見ているのはつらかった。

普段は挨拶あいさつ他愛たあいない日常会話くらいだったが、返事をしないとゆう事はほとんどなかった。

何かあったのかと思い さくら の部屋に向かった。

部屋のドアはいつも通り開いていたので、


「さくら、るんでしょ?」


声を掛けながら部屋の中をのぞいてみた。

さくら はパソコンで何かの映像を観ているようだが、その後ろ姿から楽しんでいる感じが伝わってきた。

こんな雰囲気の さくら を見たのはあの大会以来だった。

母の顔が自然とほころんでいた。


「良かった。

 これなら今夜のイベントは楽しくなりそうだわ。」


小さくつぶやくと嬉しそうに食材を持ってキッチンに入り、調理を始めた。

今夜が”特別な日”だとゆう事をすっかり忘れている娘のために。

如何だったでしょうか?

出会いは突然って事でさくらの挑戦が始まります。

さくら、気に入って頂けたら嬉しいです。

そしてさくらが作り出す新格闘技を楽しみにして頂けたらと思います。

次回は月曜の12時更新です。

よろしくお願い致します。

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