「う宙がこんにゃくゼリーだったらいいのに」by 4才のイトコ
「う宙がこんにゃくゼリーだったらいいのに」な〜んて、4才のイトコ(たくとくん)がかわいいことを言うもんだ。
最近幼稚園で天体のDVDを観たらしく、そこで「う宙」なる言葉を覚えたそうだ。怖がって泣き出す子もいたらしいが、テレビの真ん前でめちゃくちゃ食い入るように見ていたらしい。あと、なぜか宇宙の「宙」の時にハマったらしく、お母さんから分けてもらったチラシの裏に、そればっかり書いている。今のところたくとくんが唯一書ける漢字だ。
ただ、まだ4才のたくとくんは宇宙の正体を大きな怪獣かなんかだと思っているらしく、そこにたくとくんが元々大好きなこんにゃくゼリーが絡められて、さっきの発言に至るというわけだ。
…………あれ、今日は珍しく絵を描いているな。
「たっくん、なに描いてるの?」
「う宙。」
たくとくんが白の画用紙に黒いクレヨンをひたすら塗りたくっている。
「えーーっ、この黒いの、ぜえんぶ『う宙』なんだ⁉」
「ちがうよ」
私は思わずズッコケそうになる。
「あれっ違うの?」
「あのねたくとね、こんにゃくゼリーも『う宙』もすきだからね、こんにゃくゼリーになった『う宙』かいてる」
「…………あ、ほんとだ! よくみたらポツポツって、違った色の丸があるねぇ〜〜。…………ん?」
さらにさらによ〜〜く見てみたら、真っ黒に塗りつぶされた下、左右に2つ? 口を開けた大きな顔みたいなものが隠れていた。
「ねえたっくんこれは? だれ?」
「こっちがたっくんで、こっちがおじいちゃん。たっくんとおじいちゃんね、う宙がこんにゃくゼリーだからいっしょにたべるの」
おおさすが4才、それを絵に描いちゃう発想がなんとも微笑ましい。
「いいなぁ、おいしそうだね! 食べたあとはどうするの? もしかして、2人で宇宙旅行かなっ?」
「おじいちゃんが、のどにゼリーつまる。かまないから」
「えぇっ!!?」
「で、そしたらたくとがへんしんしてね『う宙』やっつけてね、おじいちゃんたすけてね、おじいちゃんとよーちえんのみんなに ありがとうっていわれる!」
ちょっと……。自分の名声のために勝手におじいちゃん苦しめないであげて…………。まだバリバリ現役だから。今日も孫の顔を楽しみにしつつ大根とってくるって言ってたから…………。子どもってさ、かわいい顔しといてナチュラルに残酷になるから油断ならないよね。
「でもたくとくんは大丈夫なのっ? ゼリー詰まらないの?」
「うん、たくとはいいの。」
いいんだ…………。まあよくあるよなぁ、ちびっこ特有の『自分だけ無敵理論』。
「ちょっと拓人! 安直にそういうこと言わないんだよ!」
キッチンでずっとお皿を洗っていたたくとくんのお母さん(私の叔母)がやって来た。
こんにゃくゼリーが入っていた空の袋を手にとって、叔母は笑いながら私に言う。
「拓人さぁ〜〜、いっつもゼリー食べるときに私が口うるさく注意してるからかな? 『おじいちゃんおばあちゃんと、たっくんみたいな人はちゃんとモグモグしないと駄目なんだよ〜〜、じゃないと喉にゼリーつまって苦しくなっちゃうんだよ〜〜』って」
「まあそうですよねぇ危ないし。…………たっくん、本当にこんにゃくゼリー大好きなんだねぇ。ふふっ、こうなりゃ将来の夢はこんにゃくゼリーかな?」
だけどたっくんはよく理解できなかったようで、私は噛み砕いてからもう一度質問してみた。
「ねえたっくん。たっくんは大きくなったら何になるの?」
まあ男の子だし、おまわりさんとか、戦隊もののヒーローとか、案外こんにゃくゼリーじゃなかったりして? ……あ! もしかしてもしかすると『お母さんのおむこさん』っ⁉
なーんて小さくにやにやしていたら、
「うーんとね、まん○んらいふ」
「えっ?」
「まんなん○いふ」
「たっくんそれ…………ゼリーじゃなくて会社の名前じゃん!」
まさか袋を見続けて覚えたっていうのか、4才児の単語吸収力恐るべし。隣にいる叔母はかなりツボに入ってるみたいだ。
「アッハハ。きっと『まんなんら○ふの社員になりたい』ってことじゃないかな?」
「な、なるほどぉ…………」
もしかしたら違うのかもしれないけど……。頑張れ、たくと!