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妖の島へいらっしゃい 〜花杜の守巫女見習いは大忙し  作者: と〜や
第二話 猫

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9.変わったことは……

 これで終わり? と心の中で思っただけのはずだけれど。


 八日坊様は体を起こすと、わたしを睨みつけた。……うん、プリザード発生させて周りを凍りつかせるの、やめようか。

 えっと、もしかして表情に出てるかな?

 慌てて開けっぱなしだった口を閉じて八日坊様になんとか笑顔を向ける。

 そこ、引きつってるとか言わない! 引きつってても笑ってりゃ大抵なんとかなるって、同じ専攻のコが言ってたし!

 でも、あんまり効果はなかったっぽい。

 マジで寒いからやめて欲しいんだけど。

 八日坊様の後ろで体を起こした狐面の巫女は、肩を揺らしているらしい。……もしかして笑ってる?

 というか、八日坊様の影でわたしの顔、見えてないよね?

 ってことは、わたし、まさかポロリしてたっ?

 ……ヤバイ。マジで声に出ちゃってた?


『祐希』

「はははい」


 うわあ、声が震えてる。決して怖いわけじゃない、はず。


『お前も笑うな』


 八日坊様が後ろにほんの少しだけ首を傾けて言うと、狐面の巫女は口元を袖で隠した。……いや、どっちにせよ狐面で隠されてるんだし、わざわざ隠さなくても見えないけど。

 すると巫女は居住まいを正すとわたしの方を向いた。

 ……うん、狐面は完全に目も口も覆っていて、どっち見てるかなんかわかんないんだけど、そんな気がしたんだよね。


『大変失礼をいたしました。先代様と同じことを仰るもので、つい……』

「え、おばあちゃん?」

『いえ。今代ではなく先代でございます』


 あー、三毛猫さんの言う『先代』と同じか。

 へえ、ひいおばあちゃんも同じ感想だったんだ。

 仏壇の上にかかってる朗らかな笑顔を思い出せば、なんか納得できる。


 というか、この巫女さんも先代を知ってるんだ。まあ、妖は長生きだもんね。知っててもおかしくない。


『ともあれ、次代様が決まってようございました。これで皆も安堵いたしましょう』

『余計なことを喋るでない』


 狐面の巫女さんがころころ笑うと、八日坊様は再び後ろにある顔を向ける。

 いやいやいや、余計なことじゃないと思うんだけど。

 前に河童さんにも言ったけど、今だってわたしは守巫女じゃあない。

 巫女さんの言葉を借りれば『次代の守巫女』に認定されたまでのことで、守巫女としては何にもしてない。

 ……いやまあ、河童さんみたいにやってくる妖の話を聞いたりはあるんだけど。

 ……あれ。

 最近、一切来てない気がする。

 いつからだろう。

 最後に来たのが河童さんで……それから来てない。

 それまで週を開けずに何かしら来てた気がするんだけど。


『それにしても、次代様はなかなか肝の座ったお方ですわね。お名前は何とおっしゃるのでしたかしら』


 不意に話を向けられてはっと顔をあげれば、八日坊様と目が合った。不機嫌オーラびしばし出して、また周りが凍りついてるんだけど?

 でも、巫女さんの話を遮ったりする気はないらしい。

 首をひねりながら、後ろの狐面の巫女さんに視線を移す。

 ていうかわたしの名前、知ってるよね? 八日坊様が呼んでたし。


「教えてもいいけど、巫女さんのお名前も教えてくれる?」


 すると、ほほほと笑い声が響いた。……なんか天狐様っぽい。狐の眷属はみんな似てくるのかなあ。

 あ、八日坊様が額に手をやってため息ついてる。えー、これダメ回答だった? それとも口調がまずかったとか?


『この場で妾の名を聞いた者はそなたが初めてじゃの』


 先ほどまでの口調とまるで違っていて、わたしは目を見開いた。まるで天狐様だ。

 醸し出す雰囲気も、八日坊様ばりの威圧も、明らかに『ただの巫女』なんかじゃないことをありありと知らせてくる。

 多分……天狐様と同じかそれ以上。天狐様より上ってことは、神様確定じゃない!

 ヤバい、詰んだ。

 神様に名前を聞くとか、ありえない。神罰降りそう。だって、天狐様だって本当の名前じゃないもの。


『まあしかし、簡単に名を明け渡さなかったのは及第点かの』


 狐面の巫女さんの言葉に、ほっと胸を撫で下ろす。八日坊様も、深々とため息をついていた。

 初めて会った時だったっけ。簡単に名を明け渡すなって八日坊様にコンコンと怒られたんだよね……。あの時の耐久一時間説教はマジ辛かったもん。

 以来、こう聞き直すのが癖になっちゃってる。人に対してもやるから、変な奴って思われてるのは知ってるけど。

 まあ、正解だったみたい。よかった……。


『が、妾達も名を簡単には明かせぬでの。……そうじゃの、桜狐(さくらこ)とでも呼んでくりゃれ』


 あ、喋り方も天狐様と同じになった。これも狐の眷属の特性なのかな。


「桜狐様ね。わたしは祐希。あの、一つ聞いてみてもいい?」

『かまわぬぞえ』


 わたしは目の前に置かれたままの白木の盆に視線を走らせる。


「さっき飲んだの、うちの井戸の水と同じものだよね? あれ、何の意味があったの?」


 すると、桜狐様は肩を震わせ始めた。笑ってるみたい。


『狐の』

『ああ、すまぬ。つい。……あれはこの島の地下水じゃ。そなたの井戸水と同じものよ』


 やっぱり正解だったっ!

 でも、うちの井戸水飲んでもあんなことにはならないけど?


『で、じゃな。……先ほど飲んでもらった水にはな、呪いがかかっておる』

「え」

『嘘を申すな』


 八日坊様の横槍に、桜狐様がころころ笑う。笑い上戸なのかな、もしかして。


『あながち嘘とも申せまい? 祐希とやら。この島の地下水が霊水と呼ばれておるのは知っておるな?』

「あ、はい」


 河童さんに教えてもらうまで知らなかったけどね。


『花杜の湧き水が地下水に混ざることで、島の地下水は霊水となっておる。先ほど二人に飲ませたのは、花杜の湧き水での。最も効果がきつい』

「効果?」

『そう。……あの水はの、()()()()()()()()()()のよ』

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