第一話
102.3.00
とあるファンタジーな世界の話。
ある国が運悪く消滅した。
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102.2.99
カナルの国の王族は異端の罪に問われて首を狩られた。
ただこれは誰かが仕組んだことで真実じゃない、だがそれを知る者はいない。
少なくともこれを仕組んだものはそう思ったはずだった・・・。
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102.3.25
天気は晴れ、隣国に運悪く消えた国の王女が眼帯をして歩いていた。
貧相な布を一枚まとい下着は着ず、護身用のナイフを握りながら歩いていた。
持ち金は少なくやっと見つけた仕事は食堂のウエイトレスだった。
「シャル、休憩」
「ん、わかった」
シャルと呼ばれた眼帯少女は、先輩のウォナに休憩の合図を受け
裏の寮に戻っていく。
小さな食堂、リトルスマイルにやとわれ数週間。
カナルの王族シャルロッテはシャルと名乗り皿洗いで日銭を稼いでいた。
あの日以来シャルの体に不思議なことが起こっている。
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102.2.98
カナルの王族は異端と噂され、噂は行動を起こし無責任な暴動がおこる。
噂の出どころは大臣の数人であり、軍を持たず戦争を起こさないその思想についていけなくなったらしい。
大臣数名は嘘の正義と嘘の悪を作りそれを戦わせ大臣にとって都合のいい歴史を作った。
その犠牲にカナルの王族はされた。
カナルの王族は5人、シャルは三女であり最後に殺される運命だった。
冷たい牢屋の中、服も着させてもらえず固く薄い布を布団にし寝ていたが、男に怒鳴られ起こされた。
「なに・・・」
「異端の王族シャルロッテ、最後の晩餐だ・・・」
袋に詰められたパンと野菜のクズで作られた薄いスープ。
最後の晩餐にしてはあまりにも貧相である。
「こんなのいらない、殺すならさっさと殺せば」
「・・・せっかく用意したのにな、まあいい、望み通り殺してやる・・・ついてこい」
牢の鍵を解かれクロスボウを突き付けられながら暗い階段を歩かされた。
暫く上に上がると光が目を射す、汚い歓声が沸き立ち耳を劈く。
「両手をあげろ」
言われるがまま両手をあげ、十字架に縛られる。
縄が食い込み皮膚を刺激する。
「最後に言いたいことは?」
「真実も知らず騒ぐ連中をいつか殺してやる、お父様もお母様も異端じゃない!」
「構え!!」
クロスボウを構えた10人がシャルロッテのいたるところに狙いを付け
殺すことに集中している。
「撃て!!」
全身に矢が刺さる。
痛みが全身に回るがまだ死ねない、残っている意識を集中して
目の前にいる連中を睨む。
すると目の合った一人がイラついたように二発目を放った。
そしてその矢は右眼に刺さった。
「おい!何かってに撃ってる!」
「こいつ、死にぞこないの癖に俺を睨みやがった」
「そんなわけがないだろう」
「ほんとうだって!!」
まだ聞こえる憎き連中の声。
まだ死ななない、いったいなぜ?
心はとうに諦めた、後は死を待つだけなのになぜまだ声が聞こえる?
『目の前の連中を殺したいか?』
頭に言葉が流れてくる。
一体誰の?
右眼は開かず左眼も開ける気力が無い。
声の主を確かめるすべがないが、どこか穏やかな声だ。
言っていることはとても物騒だが。
『聞こえているのに無視は良くない』
「どうしてそんなことを聞くの?どうして助けるの?」
『貴様が自分で持ってる力を使わずに息絶えようとしているからだ』
「持ってる力?」
『お前、気づいてないのか?』
「知らない」
『ならば教えてやる、まず右眼を開けろ、そして壊したいものをすべて壊す想像をしろ』
「もう右眼は開かない」
『やってみなきゃわからない。さあ!』
右眼を開けようと全神経を集中させた瞬間、周りから聞こえていた歓声が絶叫になり、そこで意識が途絶えた。