婚約破棄~異世界王子が現代日本で生きる~
俺は王子だ。
正確には王子だった。
ある日、俺の国はモンスターの軍勢に攻め込まれ。
国中の民が死に絶えた。
俺は宮廷魔術師の力により、安全な場所に転送されるはずだった。
それがどうしたことだろう。
俺の眼前に広がるのはガラス張りの高層建築物に、所狭しと行き交う鉄の塊。
どこだここは?
この町は見たことも聞いたこともない光景だった。
そこら辺を歩いている人間たちは奇異の目で俺を見つめている。
俺からしてみればそいつらの格好も変な格好であるのだが。
「ねえねえ、お兄さんどこから来たのお」
酒の混じった息づかいの女性が馴れ馴れしくも声をかけてくる。
「俺はフィレントの王子だ。それよりもここはどこなのだ」
「フィレントー?そんなくにあったっけ~?」
舌足らずな言葉で女は俺に絡んでくる。
「そんなことよりお兄さん、それよりも今から私と良い事しよ?安くしとくよー」
「良いこととはなんだ」
「良いことっていったらアレよ。アレ」
「わからん」
「もう、しらばくれちゃってー」
女は俺に腕を絡めながら近寄ってくる。
待て、近い。
その距離は近すぎるぞ。
俺は慌てて女の腕を振りほどき距離をとる。
「あら、かわいい」
女は俺のおそらく紅潮している顔を見ながらそううそぶく。
「お兄さんならただにしといてあげる」
女はそう告げると俺を無理やり引っ張って行き。
宿のような場所で寝屋を共にすることになってしまった。
「昨晩はお楽しみでしたね」
女はシーツで裸体を隠しながら俺に問いかけてくる。
お前が無理やり楽しんだんだろう。
俺は自分からは手を出していないぞ。
楽しんでいないかといわれると楽しみはしたが。
しかし、俺はなんてことをしてしまったのか。
こんな右も左もわからない土地で女に手を出してしまうとは。
だがここはしっかりとけじめをつけなければならない。
俺は元とはいえ一国の王子だ。
「なぁおまえ」
「なんですか?」
「婚約してくれ」
「え……何でいきなりそうなるの」
「そりゃ、あんなことをしたらそうなるに決まってるだろう」
「えー……でも私、まだ身を固める気はないんだけどなあ」
「頼む。こんなことをしてしまったせめてもの償いだ」
「……」
女はしばらく黙りこくっていたが。
「そこまで言うならいいわよ」
「本当か!」
「なんてね。私は婚約する気はまだありませーん」
ものの数秒で婚約は破棄されてしまった。
しかし、そんなことでは困る。
俺はこの女と婚約して見せる。
俺は一国の王子なのだから。
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