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コントラクト・エンゲーム 3_偽解放者編  作者: 亥BAR
第1章 もうひとりの解放者
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第3話 奴からのメッセージ

 小林圭はある日、仮面を被り四階の空き教室で待っていた。適当な椅子に腰をかけ肘をつきしばらく時間を潰す。

 教室に掛けられている時計の秒針が一つ一つ動くのを眺めていた。


「……あれ?」

 そこでふと気づき、自分のケータイに手をかける。だが、慌ててスマホの法を取り出し、時間を確かめた。

 やはり……時計が遅れている。


 もう、空き教室は本当に使われることがなくなったものが多い。時計が遅れていることも気づかれないまま放置されているのだろう。

 探せば、完全に時計が止まっている教室とか、そもそも時計が飾られていない教室とかもありそう。


「……大丈夫か、この学校……。統合待ったなしだな」

 そんなことを呟いたとき、教室のドアが軽くノックされた。それに伴い、圭も口を閉じる。

 しばらくすると、仮面をかぶった森が教室に入ってきた。


「よく来てくれた」

「……何があったの?」


 森は随分と声のトーンを下げて聞いてくる。


 圭は今日の朝、森にメッセージを送っていた。『放課後、解放者としてこの空き教室に来いと。重要な話がある。』と。


「まさか、告白じゃないよね?」

「当然だ」

 はっきりと言い切ると森は仮面をつけた顔をそっぽ向けた。

「もう少し洒落たツッコミでも良かったと思うけど……」


 森のそんなセリフを聞き、少しため息をついた。

「まさかアリス。仮の王を倒し、キングダムのてっぺんに近づいたと思って、ちょっと浮かれているんじゃないか?」


 森は圭の指摘に体を硬直させた。

「まぁ……少しばかり、気は……緩んでるかも」


 その仮面の下から漏れたセリフを圭は鼻で笑った。

「なら、そんなお前に素晴らしい事を教えてやる。気を張り詰めなおすには十分すぎるネタだろう」

 そう言って圭はスマホを操作し、出てきたある画面を森に見せた。


 それはコントラクトに備わっているチャット画面。あるアカウントとのやり取り……。圭は返信していないので、実質相手からのメッセージだ。


 内容はこうだ。

『解放者。君に協力をさせてください』

 そのメッセージを送ってきたアカウント名は『レクス』。


「協力……? このレクスってアカウント……どこかで……」

 森が首をかしげてアカウント名と向き合っている。


「契約したことあるアカウントはしっかり覚えておいたほうがいいぞ。特に顔が分かるなら顔とアカウントはセットで覚えろ。

 こいつはいわゆる……ロミオのアカウントだ」


「……ロミオ? ……ロミオ!!」

 最初はそれでも分からなかったらしいが、数秒おいて気づいたらしい。

 ジュリエットの片割れ。すなわち、エンゲームで仮の王の隣にいた男子生徒。森が知らない言い方でいえば、『田村零士』だ。


 圭がさっきのアカウントを無視していると、続いてきメッセージがこれ。

『相手の放課後、第二普通棟4階。一番奥にある教室で待っています。着ていただけますか? きっとあなた方の役に立ってみせますから』


 森はメッセージに一通り目を通してくれたのか、スマホを圭に返してきた。

「……これ、信用できるんですか?」

「まぁ、できないよな」


 当然だ、あの田村零士。何を考えているのか、分かったものではない。

「だが……正直に言えば、興味はある。奴が何を企んでいるのか、なぜ俺たちと接触しようとしてくるのか。

 なにより、もしやつを手の内に入れることができたら、これ以上にない戦力であることには変わりない」


 こう言うと、森は少し首をかしげた。

「どうしてです? もし、キングダム側の人間を取り込みたいというなら、既にあたしがいる。必要以上に解放者のメンバーを増やすのも……あまりいい手とは思えない……」


 そうか……こいつは、エンゲームでも田村しか見ていないから無理もないか……。だが、田村のあの観察眼は間違いなく有力になるのは圭が知っている。


 といっても、今ここで田村が知り合いだと伝えるのは避けるべきか……。変に森を意識させたら、あいつの観察眼で圭と解放者がつながりかねない。


「そうかも知れないが……、まずは奴と会ってからでも遅くはないだろう。手を組むかどうかの判断はその後決めようと思う」


 森はしばらく顔を俯かせていたが、やがて顔を上げた。

「分かった……それでいこう。で……あたしを呼んだということは、その接触をあたしにやらせるということでいいのね?」


「あぁ、察しが良くて助かる。相手が接触を望んでいるのはアカウント『仮面ファイター5103』だ。そして、あのエンゲームの時は、アリス、お前が『仮面ファイター5103』で通っていたからな」


「そうですよね。分かりました……」


 森が納得してくれたので、圭は自分のスマホを森に差し出した。


「今回はアリス、お前が『仮面ファイター5103として、このスマホを持って接触。

 それでもって、俺のケータイとアリスのスマホで通話状態、そっちは隠しイヤホンで情報の伝達だ」


 そう言って、圭はケータイの電源を入れ、アリスのスマホに通話を流した。森は持たせてあるワイヤレスイヤホンを耳に装着した。

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