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コントラクト・エンゲーム 3_偽解放者編  作者: 亥BAR
第2章 偽者VS本物
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第6話 田村の提案

 圭と次郎、田村の前でテーブルを挟んで座りあった。

「まぁ、ひとまずこの前はどうも、と言っておきましょう」

「え? あぁ、どうも。こちらこそ」


 田村と次郎が頭を下げ合う。まぁ、この挨拶は演説の時の話だろう。

「実は、その演説と関係する話を圭くんとしようと思っていたんです。よかったら、是非次郎くんも聞いていただけますか?」


「それは……、はい。先輩がいいのであれば」

 田村の丁寧な感じに次郎は少しひるんでいるよう。本当に、この人の頼みが断りづらいのは次郎も同じということらしい。


 年上であるのに敬語を使ってくるからという点はもちろんあるが、基本的に本当丁寧なのだ。彼からはまったくイヤミが感じられないとでもいうのか。

 無論、あの不敵な笑みに背筋を凍らせたのは一度や二度ではないが。


「もちろん、圭くんも構いませんよね?」

 だからこそ、圭もそれには頷くしかない。

「はい。で……具体的な話というのは?」


 だから、せめて余計な話をしてこないよう、こっちから巻いてくれるように進めた。すると、田村はポケットから折りたたまれた偽解放者の演説チラシを持ち出してきた。


 テーブルの上に置きそれを広げる。


「結局、圭くんは本当にこの演説は聞きに来なかったみたいですね」

「まぁ、そうですけど……ちなみになぜそう思われたんです?」


 圭だって分かり切っているが、一応聞いておいた。すると田村は笑いながらすぐ先にある窓を指差す。

「ちょうど、演説をここで聞いていたんですよ。ここからだと、辺りをくまなく見渡せますからね。で、見た感じ、圭くんの姿が見えなかったので」


「……なるほど」

 圭は頷きながらチラリと次郎のほうを見た。疑いこそ少しは持っているが、次郎が嘘ついて変なことをしていたことはないという証明でもある。


「やっぱり……関係ないから興味なかったってことなんですか?」

「そうですね」

「まぁ、確かにね……。ガラケーですものね。コントラクトとは毛ほどの関係も見当たりませんね」


 田村は自然な笑いをひとつすると、ぐっと体を圭のほうに傾かせてきた。

「で、そんな圭くんにだからこそ、頼みたいことがあるんです」

 そう言って不敵な笑みを浮かべた。


「……な……なんですか?」


 少し戸惑いながら聞いてみると、田村はテーブルに広げたチラシを指でつついた。

「この解放者を名乗る方々に近づいてもらえませんか?」


「「……は!?」」

 圭と次郎、思わず同時に驚きの声を上げてしまった。


「……解放者に……近づく? 俺が?」

「はい。そして、できれば彼らの目的を探って欲しいのです」


 そうか……そういうことか……。コイツの目的は……。


「待ってください。圭はコントラクトに関係ないと、先輩もいったじゃないですか。なんでそんな圭を巻き込むようなことを!?」

 次郎が前に乗り出してきた。だが、田村は次郎に向きなおし笑みを返す。


「だからですよ。圭くんはコントラクトとは関係ない。すなわち、支配されることはない。逆に考えれば、彼は無敵ってことなんですよ。無論、圭くんがスマホ実はもっているのに嘘を言っていたら、その限りではないですけどね」


「そ……それは……、で……でも……、やっぱり関係ないのに巻き込むのはあんまり、いいことだとは……思えないです」

「まぁ、もちろん、圭くんの判断にすべてを任せますよ。わたしも強引に引き込むつもりはないですから。


 ただ、わたしは圭くんの実力を買っていることだけはわかっていただきたい。君の頭のキレかたは見張るものがあります。

 おそらく、わたしが思う以上に結果を残していただけると思っているんです」


 圭は田村の言葉を聞きながら頷いていた。


 田村の狙いは二つ。


 ひとつはそのままの意味。偽解放者の目的を探るということだろう。そのためには、コントラクトの影響を全く受けない(という設定になっている)圭が最適。

 もうひとつの狙いとして、解放者とただの生徒である圭が同一人物なのかを測れるかもという、ついでの期待が込められているのだろう。


「正直言って……俺だって面倒なことには巻き込まれたくはないっていう思いがあります。それこそ、演説とかやっておおごとになってきているらしい世界にわざわざ、関係ない俺が首を突っ込む理由が……、先輩の頼みだとしても……」


「……まぁ、そうなりますか……」

 田村が残念そうに首をもたげる。


 対して、次郎がさらに身を乗り出した。

「待ってください。まず、なぜそんなことをするんですか? 解放者の目的を探る? 意味が分からないんですけど……」


 おお、そうだ。その質問は絶対しておかなければならない。あくまでも次郎は支配される側の人間として田村と接しているのだ。演説した奴らが偽者だなんて次郎は頭の片隅にもないという設定で話さなければならない。


 対して田村は満足したように笑い首を縦に振った。


「その質問を待ってました」

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