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コントラクト・エンゲーム 3_偽解放者編  作者: 亥BAR
第1章 もうひとりの解放者
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第1話 久しぶり

 絶対に破れない契約を行うアプリ、『コントラスト』。その騒動に巻き込まれた圭たちは巷の噂を利用し、解放者として動くことを決意。

 打倒キングダムという目標を掲げ、かつて王と名乗り接近してきた女子生徒を倒すことに成功。


 そして、今度はキツネの仮面をかぶる、真の王と名乗る人物がついに現れるようになった。


 果たして、あれは本当にキングダムのリーダーなのだろうか……、ただ、少なくとも仮の王のスマホには、確かに「真の王」という名前で連絡先が登録されていた。

 仮の王も直接会ったことがないということなので、その真相を確かめようがないが……今回ばかりは、かなり可能性は高いと見ている。


 少なくとも、あのキツネは、キングダムのリーダー、すなわち真の王か、仮の王に直接契約を結ばせに来た影武者か、その二択にしぼり込めると考えている。


「やっほー、圭。来たよ」

「……亜壽香……これはまた、随分と久しぶりに会った気がするな」

「へへ~、まあね」


 圭に向かって手を振る女子生徒、幼馴染の亜壽香。変わらない黒髪ストレートをふんだんに揺らしている。


「で、何勝手に俺んちに来てんだよ」

 そう、ここは圭の家。しかも、ばっちり圭の部屋である。ちなみに、スマホにもケータイにもそんな連絡は来ていない。


「えぇ? 大丈夫、おばさんにはちゃんと挨拶してるよ!」

「そういうことじゃねえ! あと、そのグッドサインやめなさい」


 圭は念のためスマホの電源を落としポケットにしまった。

「一応さ、俺たち高校生だろ? あんまり男子の部屋へ勝手にあがるもんじゃ」

「お客さん、来てるけど……お水もでないの?」


 やったね、圭は軽く怒りを覚えた。


 で、下にいた母からジュースをもらって、部屋に上がっていった。

「てめえ、しれっと嘘ついてんじゃねえよ」

「え、なに?」

「母さん、お前が来てること、知らなかったぞ?」

「あれ? バレた?」

「バレたじゃねえ!?」


 やったね、圭が覚えた軽い怒りが強い怒りに進化した。


 チョコンと圭の部屋に居座り、ジュースを飲む亜壽香。なんというか……もうすごい。正直言って、圭ならもう、亜壽香の部屋にはもちろん、家にも入る勇気はなくなりかけてるんだがな……。


 なんというか、幼馴染といえど、男女ってのがな……どうも……。


「お前、俺んち来るの、抵抗ないのか?」

「抵抗? なんで?」

「いや……なんで……って」


 そうはっきり質問し返されると何とも言い返せない。

「なんか、用事が?」

「ないよ」


 ほんとこの人、なんで圭の部屋にいるんでしょう?


「でも、まぁ、強いて言うなら。本当に最近会ってなかったからかな? さっき言ったように、本当に久しぶりな気がするよ」

「まぁ……それに関しては……な」


 というか、普通ならそういうものじゃないだろうか。幼馴染だとかいって仲がよかった男女も、中学や高校という時期を得て、どんどん離れていくもの。むしろ、圭たちは、その傾向になる時期が遅かったほうだと思う。


「なんかさ、ちょうど……圭がスマホを持ち始めた頃からだよねぇ?」

「……っ!? ……なにが?」

「えぇ? 顔を合わせるのが少なくなってきているのが、だよ?」


 まぁ、それは……否定しない。

「たまたまだろ?」

 たまたまじゃないのは自分も分かっている。特に解放者として動くということになってからは、亜壽香とはほとんど接触することがなくなっていた。


「たまたまぁ? 圭がぁ、スマホを持ち始めてぇ……あたしと離れ始めた? うん、女の匂いがするね」

「……ご想像にお任せしよう」


 そういう勘違いなら嬉しい限りだ。なんか、言い方がもう、ババくさいのは気のせいにしておこう。


「というか。どちらかといえば、お前だって俺から離れていっているんじゃないのか?」

「え? あたしが? 圭から?」


 本当に心外だとでも言わんばかりに驚く表情を見せてくる亜壽香。だが、それは本当に素の表情なのだろうか。


「だってよ。俺が前と同じ時間通りに家でても。ここ最近は、お前が家の前でまっていること、なかったよな?」

「あれ? えぇ~と、……そうだったっけ?」

 そうだよ、とセリフの変わりに視線で突きつける。


 実際、前は大概俺が登校で自宅を出ると、玄関の前で待ち伏せでもしているがごとく、亜壽香は立っていたのに。

「あぁ……そう言われたら……そうかも……ねぇ。あたしも、最近、ちょっと忙しかったかも」


 なんともあやふやな答え。かも……て、自分では離れてるって意識もないってわけか? でも……忙しい?


「あれか、バイトでも始めたのか?」

「あたしがバイト? なんで?」


 違ったらしい。だが、あまりに予想外な反応。そこまで首をかしげるほどのことを言ったか?


「いや、だってさ。ほら……その……金……」

「……うん? あぁ! 借金のこと! あぁ……、と。あれはもうちょっと待って! 一段落してから……ね?」

「いや、別に期限までに返してくれりゃあいいよ。催促してるわけじゃねえから」


 つい、そこまで言ってしまったが、妙に重い空気にするのはどうしても避けたくて、その話はすぐに打ち切った。

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