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鼻99〜全てを捧げし者〜  作者: みきお
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第4話 ござる


それから、しばらく世間話をしながら歩いていると、森から抜けることが出来た。


少し高い場所にいる様で、小高い丘の様な所に出た。


「お。どうやら森を抜けたみたいだな。」


地平線が見えるほど広い景色の奥に建物も見える。どうやら居住区があるようだ。


まだ序盤だしわかりやすくなってんのかな。


そんなことを考えていると、聖さんが話し出す。


「そう言えば、どうして私はこんな服をきとるんじゃろ…。年甲斐も無く婆がこんなかわいらしい服を着るなんて、恥ずかしいのぉ。」


なんだか恥ずかしそうな表情をしている。


聖さんの服装は確かに現実世界で着ていればコスプレだと言われてもおかしくない服装だ。それを実年齢88歳の婆さんが着ているとなると、羞恥心を感じても仕方がないのかもしれない。


まぁ、実際の見た目としては銀髪の美少女がかわいい服を着ている様にしか見えない訳だが。


「大丈夫。聖さんとても似合ってるよ。俺が保証するぜ!」


俺は彼女に向かって親指を立てた。


「そ、そう言われてものぉ。婆は恥ずかしゅうてたまらんわい。早う着替えたい。」


聖さんは恥ずかしそうに顔を背けた。


…かわいいな…。


でも、彼女の実年齢は88歳。


どうなんだこれ?


「そう言えば、戦斗さんも奇抜な服を着とるの。それが今の若者の流行りなのかい?」


そうだった。俺の服装もコスプレと言って相違ない。


現実にいたらかなり痛い奴だろう。なんたって赤いタキシードに黒マントだ。


鼻血使いというワードと照らし合わせれば、まだかっこよく見えるが、単に赤いタキシードだけだとクソダサい。


なんだかすごく恥ずかしくなってきた。


とりあえず26歳の男が着る服ではない。アニメのキャラでも着てたらすごく目立つ服だ。


しかし、彼女に先ほど言った手前。あまり自分の服装を否定するのは良くない。


「ま、まあね。格好いいだろ?この赤。俺を象徴する情熱の赤さ。」


うわ、くさっ!ってかダサっ!

俺何言ってんの!?


言ってからかなり後悔した。


普段の俺なら決して言わない言葉だ。


しかし、この奇妙な環境がそうさせたのか、俺はガラにも無くキザな言葉を吐いてしまった。


そして、それを聞いた聖さんがどう反応したのかというと。


「ほぇ〜。私には若者の好みは分からんが、なんだかかっこええのぉ。情熱の赤。いい響きじゃ。」


なぜか好感触。聖さんは少し頰を赤らめながら言った。


元が可愛いのでその仕草もすごく可愛らしく見える。


…天使か。


しかし彼女は88歳。あまり踏み込むのはやめておくことにしよう…。


「そうだ。聖さん疲れただろ?少し休憩してから行こうか。」


「そうじゃな。久しぶりにこんなに歩いたのぉ。今日は不思議と体が軽い。まるで若返ってみたいじゃ。」


本当に若返ってるんだけどな。


まぁ、そんなことは置いておいて、俺がここで休憩を申し入れたのは勿論彼女の為ではない。


先ほどの先頭でHPを消費している俺は非常に体が重く感じていた。しかも眠気がすごい。体が休息を求めているのがわかるのだ。


これ以上体を酷使するとやばい。そう感じた為、休憩を申し入れたのだった。


え?どうして自分が疲れたって言わないのかって?


そりゃあ、美少女と一緒にいるのにカッコつけない訳ないだろ。


まぁ、そういうことさ。


俺は草原に突き刺さっていた巨大な岩に寄りかかって座った。


聖さんも俺に習って座る。


この草原にはこの岩みたいに所々大きな岩が不自然に落ちている。そして、その周りにはすでに草が生え揃っているクレーターができている。


想像するに、この岩達は過去、上空から落ちてきた様に思えた。


この辺の山で噴火でもしたのかな?


そんな事を考えていると、ふと眠くなってきた。


「ごめん聖さん。少し寝かせて…」


そう言いながら俺は意識を手放した。


思ったより俺は体力を消耗していた様だ。


目を閉じる瞬間。心配そうな聖さんの顔が見えた。




目が覚めるとすでに夕日が差していた。

そして、なんだか後頭部に柔らかい感触を感じる。


そして、自分置かれている環境に気がつく。


いつのまにか俺は聖さんに膝枕をされていた。


え?何この状況?

なんで俺膝枕されてんの?


すごくいい匂いするし!

…しかも、なんか頭を撫でられているし!


「ねんねんころりよ。おころりよ…」


懐かしい子守唄が聞こえる。


聖さんも目を瞑っており、俺が目を覚ましている事には気がついていない様だ。


恥ずかしさも感じたが、妙に居心地の良い感覚に身を任せ、俺は再び目を閉じた。



その時!不意に声が聞こえた!俺の声でも、聖さんの声でもない。第三者の声だ。


「おや?なんだか羨ましい方がいらっしゃいますな。こんな美少女に膝枕なんてなんて羨ましい事か!


しかし、こんな所にいたのでは危ないですぞ。この辺りは夜は魔物が多く出るので、早めに街まで行くのをお勧めしますぞ。


さぁ!早く目を覚ますのです!お二方!


拙者が二人を導いて差し上げるでござる!」


俺と聖さんが同時に目を開ける。


俺は聖さんの膝から飛び起きた。


そこにいたのは…。

真っ黒な着物の様な装束を纏った女の子だった。


年齢はおそらく聖さんと同じくらい。そして、この子も非常に顔が整っていた。


聖さんが凛々しい美少女だとすると、彼女はまん丸お目目の可愛い系だ。


長い黒髪をポニーテールに結んで腰には短い日本刀を帯刀している。


この格好はさすがに俺も見たことがある。


彼女は〈忍者〉…。いや、〈くノ一〉だろうか。


「な、なんじゃあなたは?真っ黒な格好じゃのう。」


「ろ、ロリババアキター!!!これは萌える!!

拙者!そういうの好きでござるぞ!


ぜひ名前を教えてくだされ!さぁ!さぁ!さぁ!」


なんかグイグイ来るならこの子。しかもすげぇ変な喋り方。


「おい、あんた。名前を聞くなら自分の方から名乗ったらどうだ?


警告には感謝するが、礼儀くらい守ってくれ。」


とりあえずどんな奴なのか反応が見たい。

普通のやつなら無難な返答をするはずだ。


「おっふ!拙者とした事が、失敗失敗!突然の美少女にテンションが上がってしまいました!申し訳ありませぬ。拙者コミュ障ゆえ、話すのが苦手でござってな。

失礼な事を言った場合はどんどん指摘していただければ助かりますぞ!


因みに拙者の名前は不知火シラヌイ リンと申しますぞ!以後、お見知り置きを。


あっ!後、よかったらあだ名で呼んでくれても構いませんぞ!気軽にお燐とでも呼んでくだされ。」


「お、おう。そっか。俺は花枝ハナエダ 戦斗セント


「私は香月コウヅキ ヒジリじゃよ。」


「じゃあ!せんとくんに聖たんでござるな。」


「おい。せんとくんはやめろ。某マスコットと被るだろうが。」


「んー。確かにそうでござるな。

それなら戦ちんにしますぞ。」


「戦ちんって…。まぁ、いいや。とりあえずお燐…さん?あんたは何者なんだ?」


聖さんをさん付けで呼んでいる影響で彼女にもさん付けで呼んでしまった。


…もう癖になってるな。


「【さん】なんでつけなくていいですぞ!拙者はあなた方と仲良くなりたいのでごさる!」


「じゃあ、そっちも妙な敬語はやめていいぞ。別に敬われる存在でも無いしな。」


「いえいえ!これは拙者のアイデンティティ故、変えるつもりはありませぬ!」


「そ、そうか。それなら良いんだけど。」


なんかまた濃ゆいのが出てきたなぁ。

ってかこの世界の女の子は色物しかいないのか?


「ところで、さっきなんか導いてくれる的な事を言ってたと思うんだけど。それって本当?」


「勿論でござる!

あなた方を見る限りおそらくゲームを始めて間もないはず。そんな人を助けるのが拙者の喜びなのでござる!」


「おお、そうかい。そりゃあ、助かるよぉ。」


「ちょっと聖さん。そんな簡単に決めちゃっていいの?」


「大丈夫大丈夫。この子はきっと悪い子じゃないよ。」


「そうかなぁ?」


「話はまとまった様でござるね!

それじゃ!拙者についてきて欲しいでござる!」


そういうと、燐はバスガイドが持つ様な小さめの旗を懐からこなれた様子で取り出すと、小さく振りながら歩き始めた。凄く人懐っこい笑顔だ。


ぶっちゃけかわいい。


旗には

《おりんりんツアー 街への行き方編》

と書いてある。


また妙な子が増えたな…。


「さあさあ!お二方!こっちでござるよ!」


「おー。なんだか楽しそうじゃのぅ。」


観光気分でついて行く聖さんと、変なくノ一の少女お燐を怪しむ俺。


妙な一人を加え、旅は進んでいく。


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