1、終わりの始まり……の始まり
皆さんこんにちは!
えっと、できるだけ頑張りますので応援があると嬉しいです!
どうも、こんにちは。皆々様におかれましてはますます健勝であることと思われます。
さて、性急に思われるでしょうが、少しお聞きしたい旨がございます。
皆様方は家事など触った事もないのに手伝ってくれるおせっか……お優しい方はいらっしゃるのでしょうか?若しくは、家にいても仕事の疲れが抜けてないと、屁理屈こねてにげr……もとい、一生懸命な人なのでしょうか。これを読んでいる、と言うことは上のどちらかのはずです。まさか、家事が出来るのにこんなところで油を売っている奴がいるはずも有りませんし、ましてや家事もしないし仕事もしないなんて言う役立たずの穀潰しなんて目の前のこの方以外にいるはずもありません。そうですよね?
目の前の愚物を見下ろしながら、そんなやくたいもない思いに馳せます。見下ろした先には時代錯誤で機能性度外視のいわゆる『十二単』に似たなにかを着た幼女が転がっています。いえ、着ていると言うよりもくるまっている、という方が近いやもしれません。衣装自体は黒地に所々金ぴかで成金……高級感があり立派なのに、纏う人によって『馬子にも衣装』という先人の言葉が意味を成さない感じになっております。もういっそ言い切って、投げ出された足やその格好も相まり悲惨(なにがって生まれてきたことが)とすら言えます。
しかし、そのマイナスを全て打ち消すぐらいにはその方の容貌はとても美しくあります。
透き通るような、それでいて艶のある白い髪。それはこの方の身長よりも長いぐらいなのに、毛先まで何処にも荒れている様子は有りません。短髪の私からするといつ見ても羨ましい位の長さです。
そして幼さ故の愛らしさとそれがために背徳感さえ抱かすような色っぽさを両立させる小さな顔。ロリコンでも量産できそうですね。今度オタクの激戦区と伝え聞く秋葉原にほっぽり出してみましょうか。
そして――はたして幼女に黄金比があるのかは甚だ疑問ではありますが――神様が手ずから作った、小柄ながら美しい体躯。まぁ、【人間でないから】当たり前なのですがね。
そう、ここに転がっている幼女の形をしたモノが、私の主でありこの場所――夜宮神社の主である『イザナミ』様です。
イザナミ様は神様の中でもちゃっかりと知名度を得ておられる神様なので、ご存知の方も多いかと思います。産んだ子供に殺されるという、世界で一番最初の快挙を遂げた神様で、黄泉の国に住む事でも有名ですね。更には、夫を驚かせた癖に自分の都合で引き留めて、あまつさえ思い通りにならなかったからって八つ当たりする神でもあります。
……え? 自分の知っている神話と少し違う?
ふむ、じゃあ恐らく別人なのですね。とりあえず、目の前の駄立体がさっき言ったような歴史を歩んできたのは火を見るよりも明らかですもの。
「……全部聞こえておるぞー」
なら、立ち上がるぐらいの気力は見せていただきませんと。そもさん、ここは廊下ですよ?こんなところで寝転がる神様がいますか。
「いるぞいっ!ここに一柱なっ!!」
こういうときだけ、やけに速く行動するんですよねぇ……。
ゲシッ。
とりあえず、イラッときたのでふんぞり返る神様にローキックをかましてもう一度転ばしてやりました。神様は立ち上がった直後に床と熱い接吻をかまして、悶絶してます。暫くゴロゴロと転がっていたかと思うと、シュバッと立ち上がりこちらを指差し涙目でこういいます。
「何するのだっ!? 折角御主の要望に応えて、立ち上がってやったのに!!」
「いやあの、普通にしてくれるのなら喜べるのですけどね」
「損なこと出来るわけなかろう、そんなこともわからないのか? 御主は何年私と一緒に住んでいるのだ?」
「え……一緒の家に別々に住んでいるときは、一緒に住んでいるうちに入るのでしょうか」
「今までの生活ずっとそんな風に思っていたのか、御主は!?」
だって実際、この神様の事なんて食事以外なら一日一回思い出す程度が限度ですよ。最初は何かと気にかけていましたけど、途中からそんなことしても全部無駄ということが分かりましたし。同じ建物内に居ても意識の端にすら浮かばないのなら、それは別々と言っても間違いないのでは?
「というかそんなことどうでもいいのですよ。
昼食が出来たのでちゃちゃっと召し上がっていただけませんか?」
「それならそうと早く言え!」
私の言葉が終わるのが早かったか、この方が居なくなるのが早いか。かのお方は物凄いスピードで視界から消えていました。本当に何で普段からあんな風に素早く動いてくれないのか……。
色々な思いを込めた溜め息を吐きながら、私はその後ろを付いていくのでした。
◇ ◇ ◇
「はぐはぐむぐむぐ」
私が食卓に着いたときには既に殆どの食べ物が食べ尽くされていました。
毎度ながら遠慮と言うものは無いのでしょうか、この食魔神には。
確かに私はそこまで食べませんけど、せめて食卓に着くまで待つぐらいはすべきだと思うのですが。
「結局は私が食べるのじゃから何も問題はあるまいに…むぐ」
「そう言うことでないと……あぁ、いやもうなんかいいです。フン転がしに芸を仕込む方が簡単な気がしてきたので」
「っぐふ! がはっげほっげほ!!
お、御主、食事中になんて単語を出すのだ!?
下品にもほどがあるじゃろう!?」
「? 私はまだ食べてないですよ。」
「そおいうことじゃないっ」
「だって、わざとですし……あと、悪気しか有りませんでしたし」
「張ったおすぞ、この煽り魔」
おぉ、怒ってる怒ってる。まぁでも、この程度の復讐ならまだかわいい方だと思いますけどね?
一部では食べ物だけで殺しあいがおこるぐらいなのですから。
食べ物の恨みは恐ろしいのです。だと言うのに、私なんて口で言うだけで済ましてあげているのですよ。
そんな心優しい私へ、なんて言い種でしょうか。
「ええい、もういいわ。御主と話していても無駄だということが分かったからのう!」
「ええ?ほぼ毎日顔を合わせてらっしゃるのに、そんなことも知らなかったのですか?」
「ぐぬぬぬ……」
さっきの言葉への意趣返しも込め言葉放り投げると……ほい、言い返せずに唇を噛む神様のできあがりですよっと。悔しげな神様を横目にして食べる昼食は実に美味しいですねぇ。
「ぬぅぅぅうう!!」
◇ ◇ ◇
余りにもぬーぬー言っていて耳障りだったので、食事の間に猿ぐつわとロープを神様に装備。おかげで、快適に昼食を食べられました。
お食事のあとに解放してあげると第一声は
「いつか神罰を与えてやるからな……覚えておけよ、この罰当たりものめ……」
と黄泉の神様らしい声で言われました。そう、何だか地の底からもぐらが這い上がってくるような――え、自分の思っているのと違う?音の感じ方なんて人それぞれなんですよ、あなたの間違った感性を押し付けられましても……。
というか、そもそもこの方は何で私のことを待っていたのでしょうかね。縛られたくなかったら早く立ち去れば良かったのに。私が神様の一切お願い事を聞く気がないと知っていての行動なんでしょうか。
「くそ、御主のせいで大分予定が狂ったではないか。
しかしまぁ気にしていても仕方ない……おい、帰ろうとするな、まだなにも話しておらんぞ。」
「いやぁ、面倒くさそうなにおいがしますので無視しようかと」
「いっそ清々しいなその言い切り。いや、今日は意地でも残ってもらうぞ。
なんせ、私の神としての存続がかかっておるからな!」
「では」
「しまった、言葉のチョイス間違えた!?
待て待て待て、ホントに待て!待っててば!!」
追いすがるちみっこい神様を置いて私は足早にその場を立ち去るのでした。
「もうやだこいつ本当にめんどうくさいっ!!」
「」
書き終わりました~
どうでもいいのですが、果物系のジュースって炭酸以外なら、キンキンに冷えてるよりちょっと冷えてるぐらいがちょうどいいのですが皆様はどうでしょうか?