3 『傭兵ギルドの秘密』
前回と対照的な感じかもしれません。
傭兵ギルド五階からのみ通じているエレベーターのような魔術道具、それによって向かう先は傭兵ギルドの地下である。そこに入れるのは傭兵ギルドの運営の中でもトップクラスの者と厳密な契約を守る技術者だけである。
四階、そこでは運営による会議室や重要な連絡事項を取り扱う事務室が並んでいる。
五階、運営責任者の部屋、大事な書類がある倉庫、そしてエレベーターの魔術道具の部屋がある。また、五階には幹部クラスの者しか入れない。
地下一階、最重要倉庫。一階で火災が起きたとしても燃えない頑丈な魔術壁で作られている。また、洪水が起きたとしても濡れない構造になっている。もっと下の方に流れるようにね。
地下二階、大きな会議室が一つと大量のモニターがある部屋がいくつも存在しており、怪しげな雰囲気の中、技術者や運営最高幹部たちがモニターを見ている。基本的にはチラ見しかしてない上に、将棋らしきゲームやチェスらしきゲームで遊んでいる者もいる。ただ、たびたびモニターを確認し、何かを探しているようだ。
地下三階、大量の食料や水がある貯蔵庫。そして緊急時の脱出用の魔法陣がある。恐らくあまり世に出てない転移魔法陣だろう。どちらかというと転移魔術印の方が一般的だ。このアルターナにおいてはね。
地下四階、大規模な水災害が起きたとしてもこの建物だけは沈まないようにと造られた貯水タンクがある。
因みにこの世界の避難場所にはよくある構造だ。まぁここは避難場所に指定されていないのだが。そして、その巨大な貯水タンクの天井には大きな魔術印が刻まれている。土属性だ。この魔術印にマナを注ぐとこの建物ごと高くなる。ただし天井に付いているので、貯水タンクは動かない。もし洪水が起きて、ここが浮上した場合、水で流された誰かがこの貯水タンクに沈むだろう。お疲れ様です。とは言っても、捕まる所と足場があるので、どうにかなるっしょ。
地下五階、存在しない。いうなれば、貯水タンク。
地下六階、何度も言わせないで!存在しないよ!
また貯水タンクと言っておけば良いの?ねぇ。
地下七階、転移魔法陣によって移動することができる場所の一つ。まぁ基本的には地上に脱出するんだけれども、外自体が危険かもしれないし、うん。まぁ特に造られた意味はないんだけどね。こればかりは運営最高責任者に聞いて下さい。俺は知らん。
因みに牢屋とか拷問部屋とか武器庫とか食料庫とか普通の机と椅子とベッドがあるだけの部屋とか浴室とかトイレとかがある。
実のところ、傭兵ギルドの創立者の別荘だ。以上。
え?なんで拷問部屋とかがあるのかって?
そりゃただの別荘だったら誰も来なくなって廃墟になっちゃうでしょ?せめて囚人とかいればなんとかなりそうじゃん。あれだよ、監視するやつが使うんじゃない?
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モニターをチェックする技術者たちはずっと探している。ただひたすらに探している。
モニターに映るのは誰かの暮らし。
何かのドキュメンタリー番組だろうか?
ノンフィクション系?
否、それはただの一般的な暮らし。
誰かが誰かと会い、誰かと誰かが食事して、誰かが誰かとあんなことやそんなことをしている。
それを技術者たちはチラ見で見たり見なかったり、ずっと何かを探している。
唐突にそれは起きた。
モニターの画面、それもいくつもの人生が描写されている、つまり、リーラマ装着者の、現在も更新され続けている記憶を映した、モニターの画面、いくつも区分けされたモニターの画面の、そのたった一つ、たった一区切りの画面に、ノイズがかかっていた。
「来た!!今すぐ会議室に集まるように伝えろ!」
幹部クラスの、最高幹部クラスの男が叫んだ。
将棋らしきゲームをしていた幹部も、チェスらしきゲームをしていた幹部も、地上五階にいた運営最高責任者もが集まって来た。そして、傭兵ギルド創立者には連絡だけが伝えられた。
因みに運営最高責任者はこの街だけの最高責任者で、一番偉ーいのは創立者様ですよ?
ある程度集まってから会議が行われた。
「この場の全員、確認したな?」
最高責任者は尋ねた。
最高幹部たちは全員頷いた。
「さて、今夜20時過ぎ、ある男のリーラマの反応に動きがあった。もちろんリーラマを外れば画面自体が消えるのは知ってのことだろう。そして、リーラマが壊れれば、エラーのサインが出ることも、また君たちは知ってのことだ。では、画面にノイズが、それもはっきりと真っ黒に染まるほど、ノイズが生じた場合…これが何を意味するのかも知ってのことだろう。」
最高幹部たちの中には汗をかいている者もいる。
「奴らが動いた。」
最高責任者は少し考えてから言った。
「これより我々は対象者、双葉蒼子を保護する。ついでに双葉と同室の菜川優奈も保護しろ。そして、双葉が通った道を確認し、目的地らしき場所に奇襲する。なんとしても事件を食い止めるんだ。超級以上の傭兵を集合させておけ。それと、魔術印だけでなく錬金術にも詳しい者も集めておけ。やつらが罠を仕掛けているかもしれないからな。以上だ。」
最高幹部たちは一斉に動き出した。これまでのグダリ具合が嘘のようだった。
そう、彼らが探していたのはノイズだった。
カルト宗教団体だけが使うリーラマ阻害。
それは宗教団体を見た者、出会った者にしか起こらない。逆に言えば、ノイズが生じた時、宗教団体と接触したことになるのだ。
さて、現在、ノイズが生じたリーラマはとあるホテルを映している。
「死なずに済んだか。やはりあの事件と同じ…」
最高責任者は呟いた。
周りでは最高幹部たちが忙しく動いていた。
次回から2章に入りますが、
現実世界が忙しくなりそうなので、
投稿が遅れます。
加速度的に。