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世界はどこも大変だけどやっぱり異世界が一番良い!  作者: 不可避の老人の犬の足
第1章 間幕
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2 『不穏な風』

今回は主人公サイドの話ではありません。

「それにしても、彼は一体何者なのデスかね?」


黒いマントで体が覆われ、黒いフードを被り、骨ばってる顔をしている男は、周りに跪いている配下のような者たちに向けて尋ねた。


「…………………」


男と同じ服装をした配下たちは何も答えない。


男は配下たちの顔を覗くようにして言った。


「あなたたち、私の話を聞いているのデスか?」


配下たちは不気味なお面で顔を隠しており、表情は伺えない。だが、見開いたような男の目を見た配下たちはオロオロとしてしまった。


「まぁいいでしょう、答えが見つからないようデスからね。でも…せめて『わかりまセン』と答えるくらいは出来たのではないデスか?」


配下たちは頭を下げた。それも全員同時に動いた。


「わかれば良いのデスよ。次から気を付けるだけのことデスからね。」


そして男は咳払いをした。


「さて、今日あなたたちを呼んだのは他でもない、異世界らしきところから来た人間が出現したからデス。

それもかなりレアで、この異世界教にとっては非常に重要な資源となりうるかもしれない人間デス。もし本当に異世界人がいるのであれば、我々、異世界教は正しかったと世間に証明できるはずデス。しかし、今回は我々に、そしてやつらに試練が与えられたのデス。そしてその試練を乗り越えた者だけが自由を得られるのデス。因みに予言書によると、我々が勝つらしいデス。なので、あなたたちは全力で試練に臨むのデス。いつも通り、試練は今から3日後デス。武器の手入れやら仕込みやらを完璧にしておくのデス。では、ここまでで何か質問はありまセンか?」


配下たちは何も言わない。


「流石デス。しかし、あなたたち、相手の名前や顔はわかるのデスか?まだまだ甘いデスね。やつらの名前は双葉蒼子と菜川優菜。名前からして特殊デスね。そして双葉蒼子は切れ目で黒髪の若い少年デス。そして菜川はクリっした目で黒髪の若い少女デス。やはり黒髪とは珍しい存在デス。まぁあの白髪の奴らよりはマシだと思いマスが。あ、そうですね。良い方法があるのデス。」


男は手で四角い箱を作った。


異世界物アザー・ワールド・オブジェクト


瞬間、四角いカメラが出てきた。


「明日、私が写真を撮ってくるのデス。それまで、あなたたちはこの洞窟の中で待機していて下さい。それと、幹部たちはここに集合して下さい。それ以外は解散デス。」


男はテキパキと指示を出していった。そしてあっという間にここはその男と幹部だけになった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


薄暗い洞窟の中、否、そこには入り口がない。あるとすれば、青く光る魔法陣のみだろう。それがどこに通じているかは、彼らしかわからない。


黒いマントを羽織り、一際目立つ星が刻まれている不気味なお面を着けている者が四人。そして同じく黒いマントを羽織り、骨ばった顔をした骸骨のような男が一人。丸いテーブルと四つのイス。真ん中にロウソク一本。怪しげな雰囲気の中、幹部の一人が咳払いをした。


「こほん、それで、教祖様、今回は具体的にはどうするおつもりで?」


声からは老人のように感じられる幹部が尋ねた。

それに答えるのは、教祖と呼ばれる男だ。


「そうデスね、1日目は我々だけで動くことにしましょうかね。下っ端でも従順で優秀ではありマスが、やはり、ここは慎重にいくとしマス。2日目は下っ端に接触させて、可能なら一日中、ギルドの団員に扮して見張ってもらいましょう。であれば、今からでも下っ端の誰かをギルドに入れて、リーラマを使わずに行動してもらいマス。下っ端の監視役をこの中から一人選出してもらいたいのデスが…」


体の大きい、恐らく魔族の中でもそこそこ強いと評判の魔霊族の幹部が手を挙げた。


「では私が引き受けましょう。その代わり、下っ端には私の配下を使わせていただきます。それでよろしいでしょうか?」


声からして恐らく歴戦の男だろう。教祖は満足気に頷いた。


「ではアナウーラに任せましょう。」

「ありがとうございます。」

「では、次に3日目のことデスが…ここにいる四世界を動かしましょう。アナウーラの第ニ世界は奴らの誘導を。そして第一世界と第四世界はハサミ撃ちで。そして、第三世界は周りの見張りを頼みましょう。それで良いデスね?」


細身で長身の幹部と子供のような体をした幹部、そしてアナウーラと呼ばれる幹部と老人のような幹部が頷いた。


「では、誘導場所デスが…どこか良い場所はありマスか?もしなければ創りマスが。」


子供のような体をした幹部がジャンプして言った。


「たぶんだけどねー、この街から北西の方にある森には人が少なくてねー、そこなら全然バレないと思うよー?それとー、なんかしらの依頼で誘導すれば付いてくるんじゃなーい?」


声からして、恐らく女の子だ。


「それは実に良い考えデスね。そうすることにしましょう。ではアナウーラ、依頼の内容を考えておいて下さい。さて、森の中では野生の魔物や魔獣が出てきてしまいマス。なので、今から第一世界と第四世界で森の魔獣を排除してしまいましょう。第三世界は人が近寄らないように策を練って下さい。第二世界は依頼を頼みマス。そして、今回は私だけで写真を撮ってくることにしマス。なのでノトワールは第一世界を。アルターナは第二世界を。チョーテルは第三世界を。エルテは第四世界を引き続き任せマス。それと、私は試練が終わったら第五世界へと向かうので、後のことは任せマスよ?」


教祖はテキパキと指示を出し、最後に幹部たちに尋ねた。少し寂しそうな目しながら。


「「「はっ!教祖、アルヘナ様!」」」


ノトワールと呼ばれる老人のような幹部とアルターナと呼ばれる魔霊族の男幹部、そしてチョーテルと呼ばれる細身で長身の女幹部とエルテと呼ばれる少女のような幹部は一斉に動き出した。


「生きて帰ってきて下さいね。」


異世界教『教祖』アルヘナ・エルウィール は最後にそう呟いた。


しかし、それを聞いたのは一人だけだった。


否、一人と一匹だ。


教祖アルヘナと彼の後ろに隠れていた猫だ。


「にゃーおー」


猫の鳴き声だけが、洞窟内に響いた。



次回が最後の間幕です。

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