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世界はどこも大変だけどやっぱり異世界が一番良い!  作者: 不可避の老人の犬の足
第1章 異世界へ
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第1章 1話 『異世界への条件』

 前回のあらすじ


 二人の主人公『双葉蒼子』と『菜川優菜』は一緒に買い物したり、お昼ご飯を食べたりすることになったが、その途中でいきなり嵐に見舞われ、近くに新しく出来たというお店に入った。しかし、そこに居たのは悪い神様に取り憑かれている元良い神様だった。そして、その神様は自身を『天神』と名乗るのだった。悪い神様に乗っ取られた天神は、良い神である『雷神』の攻撃を受ける。その際に流れ弾に当たった双葉と菜川は謎の空間へと飛ばされたのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 菜川が目覚めた。


「大丈夫か?菜川?」


「え、うん。それより、ここは?」


「ここは『生死の間』じゃ。」


「あれ?あなたは…。」


「言い忘れてたな。菜川、こいつが『天神』だ。それで、天神、この人が『菜川優菜』だ。」


「なんで双葉君が仲介役なの?」


 一瞬で思いついたボケに即座にツッコミが入る。


 今の下りに思わず天神と名乗る糞神も笑っている。


 というか、コイツいつも笑ってんな。


 もはや、笑顔のお面をつけているのでは無いかとさえ思えてきた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 私は状況を確認した。


 先ほどまで私たちが居たはずのボロ屋で、謎の物を売っているお店が見当たらないどころか、雲の上にいる感じだ。


 雷が私たちの元に落ちたのは知っている。


 死んだのだろうか。


 目の前にいる天神と名乗る神。


 この神は良い神なのか、良くも悪くもない神なのか、それとも悪い神なのか、それはまだ分からない。


 私の隣には双葉君がいる。


 切れ目で短髪の黒髪と二本のアホ毛が特徴的だ。


 そして、私たちがいるここ、『生死の間』。


 ここでは、神様が人の人生を裁定している。


 天国へ行くべきか、地獄へ行くべきか。


 どんなに大罪を犯したとしても、それが誰かの幸福に繋がっていたり、或いは、そのことついて懺悔するならば、神様は許してくれる、らしい。


 そのため、殆どの人々は天国へ行くようだ。


 それが本当に天国行きかどうかは誰にもわからないのではあるが。


 そして今、天神は私たちの人生を裁定している。


「なるほど、決まりじゃ。」


 決まったみたいだ。


 天国はどんなところなのだろうか。


「ほっほっほ、天国行きじゃな。」


 天神は今度は普通に笑った。


 歪な笑い方ではなく、心からの笑っているのだ。


 さっきから変な笑い方をする老人だと思っていたものの、それはきっと営業スマイルで作り笑いが下手なだけだったのだ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 天神と名乗る糞神が普通に笑った。


 歪な笑い方ではなく、心から笑っているのだ。


 それはつまり、何か悪い神が喜ぶようなことが起きることを意味している。


 やはり信用できない。


「天国とはどんな所なのですか?」


 俺は天神に尋ねる。


 きっと案内されるのは地獄なのだろうが。


「実際に体験した方が早いのじゃが…。」


「行ったことは無いのですか?」


「送り出すだけだからのう、あんまり訪れることはないのじゃ。」


 歪な笑い方のまま話す。


 少し検証したいことができた。


「天神様、天国に行ったらきっと会えなくなるので、一つだけ話を聞いてください。」


「確かにそうじゃな、もう会えなくなるじゃろう。」


 天神が心から笑っている。


「この前、アニメで悪役が主人公の家族を皆殺しにしてしまうシーンがあるんですがね、俺はそれがめっちゃお気に入りなんですよー。」


「ほうほう、そうか、そうか、世の中には面白いアニメがあるんじゃな。」


 糞神が心から笑っている。


「でもでも、続きの話で、主人公の力で家族がみんな復活して、悪役を倒すんですよ。もうそれが超熱い展開で。めちゃくちゃ面白かったです。」


「ほう、そうか。」


 何か悪い神は歪な笑い方で笑っている。


 意識と体を乗っ取っても性根は変わらないか。


 完全に的中だな。


 菜川の祖父を信じてよかった。


 薄々感じてたが、恐らく菜川の祖父はあの物語の主人公なのだ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「それで、これから私たちはどうすればいいんですか?」


「そうじゃな、天国行きの魔法陣から飛べるのじゃが、もう良いかの?」


「はい。もし一つ願いを聞いてくれるなら、家族に事情を伝えて下さい。心配されたくは無いので。」


「よかろう。使いを送っておこう。そこの少年はどうじゃ?」


 甘いぞ、菜川。


 この糞神が本当のことを言っているわけがない。


 もしかしたら、俺たちは死んでいるわけではなく、あのお店の地下に監禁されているだけかもしれない。


 諦めるには早すぎるのだ。


「もし一つ願いを聞いてくれるなら…生き返らせて下さい。」


「それは不可能じゃ。そもそも肉体が無いじゃろ?」


「では、俺たちの元の肉体を下さい。」


「肉体を手に入れてどうする?」


「天国でも肉体があるのと無いのとでは違うかもしれませんから。」


「肉体があると飛べなくなるのじゃが?良いのか?」


「はい。」


「そうか。」


 天神の表情は変わらない。


 どこまでが本当で、どこまでが嘘なのか分からなくなりそうだ。


 いや、もしかしたら全てが本当なのかも。


 しかし、希望は常に明るくなくちゃ意味がない。


 俺がそう答えると、天神は心から微笑んだ。


「では、あそこのでかい門を潜り、魔法陣の上に乗りなさい。そうすれば、天国へ行けるだろう。」


 門がいきなり出現した。


 さっきまで無かったはずだが、何かしらの力で隠されていたのだろうか。


 私たちはその門へ向かって歩いた。


 そして門に手が触れると、ゆっくりと開いた。


 雲の上にそびえる門は明らかに場違いであった。


 そして門が開くと、小さな部屋に辿り着いた。


 魔法陣があるだけの部屋である。


 壁も床も天井も真っ白で、中央の魔法陣だけが青く光っていた。


「では行ってらっしゃい。」


 門が閉まる前に背後から私たちに向けて天神はそう言った。


 ふと私は後ろを振り向いた。


 そして偶然見てしまった。


 気付いてしまった。


 天神が不気味な笑いをしていることに。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「待って!!」


 背後で菜川が叫んだ。


 俺は魔法陣の近くに居たからだ。


「なんだよ、そんな大きな声出して。」


 俺は何としても菜川をここに通すわけにはいかぬ。


「ねぇ、あの天神と名乗る神様だけど、何か変に感じない?」


 菜川も勘づいたか。


「まぁ落ち着け、菜川。」


「え、あ、うん。」


 俺は菜川に黙るように促して、バッグの中から筆箱を取り出して魔法陣の上に置く。


 魔法陣は眩く光り、筆箱が消えた。


 俺は門の向こう側に聞き耳をたてる。


「よし、行ったか。ふん、馬鹿な奴らめ。二度と戻れない地獄に自ら飛び込むとはな。フフフフフ……。」


 はい、アウト。


 俺は信じられないという表情をする菜川を落ち着かせる。


 問題はここからだ。


 どうやってここから抜け出すか。


「それにしても、奴はどこにいるのだ…?必ず消さなければ…。」


 誰かを探しているのは本当みたいだな。


 恐らくは菜川の祖父だろうけど。


 俺は門と床の隙間から外を覗く。


 すると、青い光が眩く光ったのが見えた。


 どうやら下界に行ったようだ。


「よし、出るぞ。」


「え、うん。」


 菜川は困惑しているが、従順で助かる。


 門を開ける。


 鍵閉められてたらどうしようかと思ったが、そんな事はなくて助かった。


 或いは、傲慢な糞神の油断か。


 門の先に見えたのは5つの門であった。


「まじかよ、一体どれが本物だ?」


 円形に全部で6つの門が設置されている。


 俺が出てきた門以外のどれかが現実世界に繋がるはずだ。


 確率は5分の1。


 門と床の隙間からではどの門から光が漏れたのかわからなかった。


 だが、恐らく向かい側の三つの門のどれかだろう。


 とりあえず、右から順に門a、門b、門cとする。


 光の入り方で判断できるかもしれないな。


「菜川、門aでこの鉛筆を魔法陣の上に置いてくれないか?」


「わかった。」


 俺は先程のように門と床の間を覗き込む。


 そして青い光が届く。


 少し違うような、気がする。


 続いて門bでも検証。


 ここも少し違う。


 最後に門cでも検証するが、やはり違った。


「全部違うの?」


「あぁ、もしかしたら天神自身にワープ能力があるのかもしれない。魔法陣なんて使う必要ないのかも。」


「じゃあ、もう一度あの天神に会うの?」


「それはもう完全にバッドエンドだ。」


「とりあえず、そうだな、門aの部屋を見てみる。」


 門aの部屋は黄色がかった白い部屋だ。


 魔法陣はいつも通り青く光る。


 どこかにヒントとかないか、と思って探すものの、何一つ、ゴミすら落ちていない。


「門bに行ってみるか。」


 ここは少し赤みがかった白い部屋だ。


 魔法陣も変わらない。


「次だ。門cに行こう。」


 門cの部屋は緑がかっている白い部屋だ。


 魔法陣も変わらない?


 少し楕円形になっているような気がしなくもない。


 魔法陣自体はどれも形が違うので気にしていなかったのだが、全て円形だった。


 しかし、床の色が違うせいでそう見えるかもしれないし、一概に当たりか外れかは分からない。


 結局のところ、無駄な努力だったってことだ。


 何かヒントがあればいいのに。


 門cの部屋の中で座っていた俺たちだが、外から青い光が漏れたのに気付いた。


 やばい、天神か?戻ってきたのか?


「どこだ!?そこにいるんだろ!?わしを怒らせるとどうなるか分かってるんだろうな!」


 やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい!!


「そこかー!!」


 俺たちは震えながら息をひそめる。


 心臓がばくばくと大きく振動する。


 身体が恐怖を感じている。


 どうすればいい?俺はどうすれば?


 もう行くしか無いのか?


 いざとなったら、もうこの魔法陣に飛び込むしかないのか?


 仕方ない、覚悟を決めよう。


 この先がどんなところかわからないけど、行くしか無い。


「そこかーー!!」


 すぐ隣の門が勢いよく吹っ飛ぶ音が聞こえる。


 やばい、死ぬ、見つかる前に殺される!!


 俺は震えながらも菜川の手を握って魔法陣の前へ匍匐前進する。


「残るは、そこだけだー!!逃すものかー!!」


 俺はなんとか魔法陣の上に乗れた。


 体が青く光りだす中、門がぶち壊され、恐ろしい形相の天神、否、邪神が門の前に立っていた。


 そして邪神はこれまで見たことがない程の恐ろしく狂気に満ちた微笑みで腕を伸ばしてきて……消えた。


 俺たちはなんとか邪神に捕まることなく、転移することができた。

かなり修正しました。

修正前は無理やりのこじ付けで誘導しましたが、修正後は、それなりに上手く誘導できたと思ってます。

分量的にはだいぶ少なくなりましたが、あまり長くしすぎると話が脱線しそうなので、流れを優先することにしてます。

できればプロローグと結びつけて一括して、一話目から異世界について触れようかな、と考えたんですが、

繋ぎの第一話を新たに作るとなると大変なので、このくらいで許してください。


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