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迷宮書館の司書見習い -20-

7.汝は幽霊なりや?




 仄明(ほのあか)るい程度の蝋燭の火。

 それはある意味、暗闇よりも人の不安を煽る。

 当然ながら、そんな微かな光で本を読むとか物を書くとか、視力低下の要因以外の何者でもない。

 とは言え、長く閉鎖されていたこの図書館には物資もまだまだ。今日の所は蝋燭よりはましなランタンで我慢する事にした。

(さて、資料は、と)

 貸し出しカウンターの上に広げたノートと資料をざっと一瞥してみたものの、望むものはなさそうだ。

 仕方ない。探そうかと席を立ちかけた所で、スッと目当ての本が差し出される。

「こちらで宜しかったでしょうか?」

「わお。ドンピシャ。ありがとう、パロマ」

 控え目に微笑むパロマから本を受け取って上げかけた腰を下ろす。

「よくわかったねー」

御主人様(マスター)が手繰った資料から、推測してみました」

「大正解」

 はにかみつつ嬉しそうなパロマという目の保養を確保し、本を開く。

「ウェル寝た?」

「はい。御主人様の言に従い仮眠を取られているようです」

「ん。なら良し」

 宿直として夜起きてるのに、ウェルは昼間も手伝ってくれているわけだが、はっきり言って働きすぎだ。

「どんなブラックかって話になるからね」

 ブラックダメゼッタイ。

「ブラック?」

「あ、気にしない……」

 いや、普通なら言わないけど。

 心底キョトンとしたパロマに、思い直す。

「あー……と、ね。主に人間とかだけど、一日に働く限界時間て法律で定められててね?」

 目を瞬きつつも、パロマは耳を傾ける。

「一応、最大でも十二時間なんだよ。法律では。で、それを超えて働かせる勤め先は真っ黒って事になるんだ。法律では」

 大事なことなので二回言う。

 カウンターに頬杖をついて、言った事を考えているらしいパロマを見た。

 キラキラの金髪と鳩の血色をした深い赤の瞳。わりと派手な色彩の筈なのに、パロマには色々な意味で派手さとは反対のものしか感じない。

「パロマ。他に聴きたいことある?」

 それは、この楚々とした雰囲気や執事のような物腰にあるのかも知れないのだが、どこかセレーヤとは違った意味で儚さを感じる。

「ありがとうございます。大丈夫です」

「ん。何か聞きたかったら、遠慮しなくて良いからねー」

「は、はい」

 嬉しそうに頷いていたパロマは不意にピタリと動きを止めた。

 何か葛藤するように視線をさ迷わせ、軽く両手を祈るように組み合わせる。

「あの、御主人様」

「ん? どうしたの?」

「一つ、御言葉に甘えてお訊きしたいのですが」

「うん?」

「その……私達の事を、どう思っておいでですか?」

 きゅっと握り合わせた手に力を込めて、パロマがそう尋ねてくる。その様子はまるで告白する乙女のよう。

「え。もしかして愛の告白前振り?」

「え、や、そ、そそ、そんな!」

 ちょっとからかい混じりで言ってみただけだったのだけど、何か思ってるの以上の反応。

 うん。予想外。びっくり。だけど……。

「パロマって、そんな顔もするんだね」

 白磁の肌は上気して、頬も耳も淡く染まり、恥じらうように少し俯いた顔は本気で乙女のようだ。

「御主人様……私を、からかっておりますか?」

 乙女(パロマ)が若干恨みがましい視線を向けてくる。

「いや、ごめんごめん。つい」

「もう……二度は通じませんからね」

 少しだけ拗ねたようにそう言って、パロマはまたいつものように微笑んだ。

「はーい。と、それで質問の意図は?」

「あの……私達、御主人様の、ご迷惑になっていないかと」

「ないない。どっからその発想出たの。ちょっとそこ座りなさい。あ、床じゃなくイスね」

 本気でどっから出たのかと思うものの、変な誤解は早々に解かなくてはならない。

 言われた通りイスに腰掛けたパロマを見据え、口を開く。

「パロマ達が迷惑とか無い。どこに迷惑要素が? だって揃いも揃って目の保養だし、ぶっちゃけ逆ハーレムだよ? しかも! 見た目だけじゃなく気配り半端無いし、仕事できるし、これ以上何を望めと?」

「あ、あの、ご、ごめんなさい。もう、大丈夫ですから。わかりましたから!」

 思いの丈を存分に解放した結果、パロマのゆでダコ風味が出来上がった。

 その様子を堪能しつつ、本題を口にする。

「で、何でそんな考え浮かんだの?」

「……私達は、御主人様の願いを知っています」

 神妙な顔つきで言うパロマ。でもこれ言葉をちょっと変えると「お前の秘密を知っている」系のサスペンスが始まりそう。

 などとついうっかり思ってしまう訳だが。目の前にいる(パロマ)は真剣だ。

「お創り頂いた時に、私達は御主人様の願いを感じ、御主人様の願いは私達の願いになるのですから」

「……」

「存在意義、とも言えるかも知れませんね」

 仄かに、風に揺れる蝋燭の灯火のように。パロマは笑む。

 結論。イケメンでも非イケメンでも、怖いもんは怖い。

「……パロマ」

「はい」

「ごめん。怖い」

 ピシッ! と笑顔のまま固まるパロマに、気の毒になるもののだって何かヤンデレの素質感じるし私の願いが自分の願いとか存在意義ってごめんほんとコワイ。

 いや、わかるんだよ? これがフラグクラッシャーだって。普通パロマくらいの美人に、よくよく考えると怖くても言われたら純粋可憐な乙女はぼーっとのぼせるのも理解は出来るんだけどね? でも怖いもんは怖いって。

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