新境地
やがて秋の訪れとともにその話は持ち上がった。
「ヘアショーのモデルに拓巳を?」
「そう。私が担当するパートに使いたいの。どうかしら」
「……拓巳は他人に触れられることにアレルギーがあります。ましてや〈バードヘヴン〉の顧客であるオーナーのヘアショーに参加するのはかなり難しいのでは……」
「わかってるわよ。だからその時はあなたが作るの」
「え?」
社長室のデスクに肘をついた黒部オーナーは少し身を乗り出した。
「いい? これはね。拓巳くんのためよ」
「拓巳の?」
「よっちゃんは、拓巳くんをあのお店から解放したいんでしょ? だから考えたの。彼がモデルで成功して有名になったらいいんじゃないかしら」
「有名に……?」
「有名になって拓巳くん自身が力を得られれば、高橋サンだってそうそう無体なマネはできないわ。それにモデル事務所と契約すれば複数の大人と関わるようになるから、彼らが監視の役目を果たしてくれるわよ」
「……なるほど」
「たとえ実年齢が若くたってあの外見だもの。ちょっとウォーキングの練習をすれば、拓巳くんならすぐにファッションモデルが務まるわ。容姿はまったく問題ないし、ポーズとか色々要求されるから忍耐が必要な世界だけど、あなたのツタナい技術練習に何時間も付き合っていられるんだから大丈夫。むしろ宝の持ち腐れよね」
イタいところを突かれ、思わず首を垂れる。
「私の知り合いには心あるモデル事務所の社長さんもたくさんいるから、拓巳くんが名を上げるのにはそんなに時間がかからないと思うの」
どう? と聞かれ、僕は真剣に考えた。
確かに、それは言えているかもしれない。雅俊だって自立の手段としてプロを目指しているのだ。むしろ拓巳ならモデルのほうが早く自立できるのではないだろうか。――条件が揃えば、だが。
「お話はわかりました。僕もそれはいい考えだと思います。ただ、二つばかり問題があります。ひとつは拓巳の安全がモデルの世界で保証されるのか、ということ。現場で実際に拓巳に関わる人たちの反応が心配です」
なにしろ出会う人のことごとくが理性を飛ばされる様子しか見たことがない。モデルの世界は芸能界と同じで、美しいものに目のない人が多いという。
「もうひとつは、親権者の許可なしにどうやってモデル事務所と契約すればいいのか、ということです。彼がすんなり承諾するとはとても思えません」
すると黒部はあっさり解決策を示した。
「だからよっちゃん。あなたがやるのよ」
「は?」
「は? じゃないわよ。拓巳くんはよっちゃんの手なら平気でしょ? だったらあなたがヘアスタイリストとしての腕を上げて、拓巳くんの専属になればいいのよ」
そしたらいつも目を光らせていられるわよ、と彼は言った。
「それは、そうですが」
僕の困惑をよそに黒部は続けた。
「高橋サンの許可は、モデルとしての既成事実をまず先に作っちゃえばいいと思うの。実際にそれをやった人を知ってるから、今度話を聞いたらいいわ」
「実際にそれをやった?」
「女性なんだけど、そりゃ美人でね。拓巳くんと似たような境遇から確か中学生の時にそうやって脱出したはずよ。今は大手服飾メーカーのデザイナーをしてるの」
「いるんですか、そんな方が」
「モデルや芸能界には案外似たような事例が転がってるのよ。……まさかプラチナもそれに当てはまるとは思ってなかったけど」
黒部はデスクに置かれた数枚の書類を取り上げて僕に渡した。
「モンダイはあなたの腕よね? そこは任せておきなさい。私がよっちゃんの欠点をコクフクさせてあげるから」
僕の欠点――すなわち〈色気〉がないことだ。
「そのコンテスト申込用紙を全部埋めてらっしゃい。あなたばかりヒイキはできないから、ヘアショーに出るまでによっちゃんにはコンテストで実績を積んでもらうわ。なるべく私が直接指導するからしっかり勉強するのよ。拓巳くんが早く自立できるかどうかは、あなたがいかに腕を早く上げるかにかかってるわね」
「………ありがとうございます」
じゃ、行きなさいと促され、僕は黒部に訊ねた。
「あの、どうしてこんなことをしていただいたり……」
「ああ、気にしないでちょうだい。これは私のワガママだから」
彼はベージュゴールドのネイルが施された手を左右に振ったあと、少し俯いて言った。
「あんなことを知っちゃっても私、〈バードヘヴン〉の男の子たちに会いに行くことを止められないの。シルバーとお話するのをやめるなんてできない」
「………」
「プラチナのことさえなければステキなお店だと思うのよ? だから、高橋サンにはゼヒともそこを改めて欲しいの。そしたら私も罪悪感が薄れるもの」
「オーナー……」
「だから自分のためなの。よっちゃんが引け目を感じたりする必要はちっともないわ」
そう言いながらも、少し目線を逸らして話す様子からは罪滅ぼしの意図が窺え、このチャンスを堂々と利用しなさいね、と結んだ黒部に、僕は深く頭を下げた。
かくして僕は勉強に追いまくられることになった。
「拓巳くんの髪での基礎練習はもういいわ。これからは色々なスタイルの実践練習よ。彼が心配ならエステ室を開放してあげるから、そこで好きに過ごすといいわ」
鍵もついてるわよ、との黒部の言葉に甘え、拓巳は僕のモデルから一時解放された。どうやら黒部は、毎回僕に付き合わされる拓巳を気の毒に思っていたらしい。
店のスタッフも同感だったらしく、
「よかった。これで、逆毛を解く時に髪の毛抜いてんじゃないのかとか、ヘアアイロンで火傷させてないかとか気にしなくていいのね」
と三人の技術者お姉様方にホッとした顔をされた。ちょっとヘコんだが事実なので仕方がない。ちなみにモデルをやらない拓巳が店で過ごすのはヘンなのだが、そこを突っ込む者は誰もいなかった。
「え~。せっかく努力して半径一メートルにしてもらったのによぅ……」
不満げにぼやく深澤瞭を赤堀らが励ました。
「いーじゃない。同じ空間には居るんだから。それよりも、真嶋君をみんなで鍛えてコンテストで優勝させれば、ヘアショーでは拓巳君とご一緒できるのよ。あんたの腕前を披露するチャンスよ!」
「そうかっ。よし真嶋、色気なら俺に任せておけ!」
そう、なんと黒部オーナーは僕を鍛えるにあたり、コンテストで上位入賞の常連である本店若手技術者四人を僕の専属講師にすることに成功していた。
「今度のヘアショーにはあなたたちを連れていくわ。ついでによっちゃんを鍛えてくれたら、もれなく拓巳くんの美しいモデル姿が実現するわよ」
との言葉で黒部がまんまと釣り上げた結果、ヤル気満々になった四人からそれぞれの得意技を伝授され、ある意味エラい目に遭った。が、これも新人技術者の僕が贔屓されているとの批判をかわすための心遣いだとわかっていたので、ありがたく愛のムチを受けた。
一方で拓巳には一連の経緯を話し、ファッションモデルになるかどうかの意志確認をした。
「芳弘はどう思うんだ?」
「僕は、君がいいなら頑張ってみようと思う。もし本当に君と一緒に仕事ができるようになれば、問題はかなり解決するかもしれないから」
改めて自分なりに出した結論を伝えると、「知らないやつにべたべた触られずに済むのならモデルを仕事にすることは嫌じゃない」と彼は承諾した。
そんな拓巳に黒部は様子を見計らいながら、モデルに必要なウォーキングや立ち方などを自分が厳選した女性トレーナーに教えさせた。
「薄い色のついた伊達メガネをかけてもらうわ」
一流ブランドの洒落たメガネを拓巳にプレゼントし、一歩離れた場所から様子を覗く姿は、監督しているのか見惚れているのかよくわからなかったが、それが拓巳に技術をつけさせようとする彼なりの支援であり、拓巳も許容したので黙っていた。
「疲れない? 大丈夫?」
練習後に訊ねると「雅俊のボイストレーニングはこんなものじゃない」と返ってきて、この頃の拓巳は、放課後は雅俊に、夜は時々モデルのトレーナーにそれぞれ鍛えられるので、食が少し増えて睡眠も深くなった。
「そう。それはよかったわね。敦もやるじゃないの」
事の顛末を聞いた陽子も黒部のアイデアを支持し、平日の夜、僕がコンテストのための講習会に出かけなければならなくなると、「祐司がバイクで迎えに行くから拓巳をここに寄こしなさい」と、エステ室で待つ拓巳を連れていってくれた。
そんな風にして時は過ぎ、季節が秋本番を迎える頃、僕の作風を変える出来事が起こった。
「う~ん。イマイチなんだよなぁ……」
深澤瞭のため息に、僕は首をすくめた。
「この課題は〈春の花〉だろ? このスタイルのどこに春の花が咲いてるんだよ」
彼はワゴンに取り付けたモデルウィッグ(練習用の人形)のアップヘアを両手でざくざくとほぐすと、セットブラシを手に取った。
「いいか、おまえのはキレイに作り込みすぎてんだよ。だからアップの華やかさがなくなっちまってる」
彼はブラシを左右に動かすと瞬く間にピンを打ち、僕が作ったスタイルよりさらに大きく毛先をカールさせていった。出来上がったスタイルは、なめらかにアップしたバックやサイドの髪の上に、ふわふわとしたカールがいくつも重なり、数本ずつの毛束が前や後ろにこぼれ落ちていて、まさしく春に咲き初める八重桜の重なりのようだった。こぼれ落ちた髪のバランスがまた絶妙で、ただの人形の顔が、あっという間に初々しくもほのかな色気を感じさせる、成人したての女性のようになった。
「………」
さっきの僕の作品と基本的なスタイルは同じはずなのに、まったく違って見える。
「おまえはピンワークとか、ブラシさばきとか、個々の技はもういいから、こう……感じるってのが必要だな」
「はあ……」
「よし。おまえの感性を豊かにするべく俺がいい店を紹介してやる。綺麗どころが勢揃いだぞ」
ちょっとマテ。スグそれか?
「いえ、それは遠慮します」
「ナンでだよ。おまえだって成人男子のハシクレだろ? 美しいヘアスタイルを作るには、美しい女性を堪能することも大事だぞ」
「僕にはまだその境地がわかりません」
「だがそろそろ新境地に突入しないと壁は破れない。オマエも困るんじゃないのか?」
それじゃちっとも拓巳の助けにならないぜ、と言われてうなだれた。――そのとおりだ。
「ダレにでも初めてはある。大丈夫だ。俺に任せておけ」
イエ、だからといってあなたに連れられるのはエンリョしたいです、と言おうと顔を上げると、深澤の耳を引っ張る黒部オーナーが目の前にいた。
「敦サン、痛いっス」
「よっちゃんの欠点に関しては様子を報告してって言ったでしょ? 彼にアナタの趣味が感染っちゃったら私がヨーコから絞められちゃうわ。ソコはこっちに任せておいてちょうだい」
でも瞭ちゃんの作品は好きよ、とウィッグを指差して耳を離す黒部に、深澤は嬉しそうに笑った。
さすがはヘアスタイリスト〈アツシ〉。こうもカンタンに深澤瞭を転がすのはこのヒトしかいない。
「じゃ、よっちゃんはちょっとこっちにいらっしゃい」
黒部に呼ばれ、一緒に社長室に入ると、デスクの上から数枚の紙を取り上げた彼はこう切り出してきた。
「明日の夜、ここに一緒に行ってちょうだい。そのまま泊まることになっているから、そのつもりで支度してね」
差し出された紙を受け取って目を通すと、〈赤坂Gホテル 鳳凰の間〉との文字が飛び込んできた。
「この前参加したファッションショーの打ち上げよ。透くんも一緒だから服装とか教えてもらいなさいね」
「僕はそのショーのアシスタントスタッフには入っていませんでしたが」
まずいのでは? と問いかけると、黒部はピンクベージュの唇に笑みを浮かべた。
「大丈夫よ。あなたには仕事と勉強を兼ねてもらうから」
そして、疑問符を顔に浮かべる僕の肩を「じゃ、よろしくね」と軽く叩くと、ピンヒールの音も高らかに社長室から出ていった。
「場違いですよねぇ……」
豪華なシャンデリアの天井を眺めながらシャンパングラスに口をつけると、隣に立つ上司の片手が動いた。よく見ると ブラウンのジャケットのポケットから禁煙用電子タバコが覗いている。
「それじゃリアルすぎて誤解されますよ、店長。せめてパイポにしましょう」
声をかけると、関口が眉間の縦ジワを解いた。タバコを吸った気分になったらしい。
「いいんだ。こんな堅苦しい場所じゃ、注意しにきた会場係をからかってやるしか楽しみがない」
すっかり屈折した中年オヤジと化している。
僕は苦笑しながら豪勢な立食パーティーの会場に目を向けた。
およそ百人くらいはいるだろうか。きらびやかな装いの男女がテーブルの脇で談笑するフロアは賑わっていた。洒落たスーツや変わった色のジャケットの男性があちこちに見えるのは、おそらくファッション関係者が多いからだろう。
「真嶋は明るい色が似合うな」
関口に言われ、僕は脇にある柱に嵌まった鏡に目を向けた。
明るいブルーグレーのスーツは、社内のクリスマスパーティーのために昨年あつらえたものだ。何を選んだらいいのかよくわからなかった僕は、深澤瞭にコーディネートを丸投げし、服はもちろん、タイから靴まで見てもらった。
光沢のある生地のスーツや、渋いゴールドのベースに銀のラインが重なったタイ、それを留めるアメジストのピンなど、僕なら選べないだろう、それらを身につけて、パーティーでコーディネート賞をもらったのだ。むろん副賞の食事券は深澤瞭に進呈したが。
「店長もキマッてます。場馴れしてますよね」
僕はおのぼりさん気分です、と笑いかけると後ろから声がかかった。
「よっちゃん、透くん、こっちへ来てちょうだい」
ワインレッドに黒のレースを組み合わせたドレス姿の黒部敦は、僕たちの腕を取ると会場の奥へと誘った。そこには二人の女性がこちらに背中を向けて話していた。
「お待たせ。うちの若手を連れてきたわ。こっちの年上なのが次代のマネージャー候補。前にも会わせたわよね」
手前に立つ、恰幅の良さそうな五十代半ばほどに見える婦人がこちらを振り返った。
「あら透くん。久しぶりね」
「瑛子さん。ご無沙汰してます」
よくセットの講習会などで見かける、大手ビューティーサロンの川上瑛子オーナーだ。淡いピンクに金をあしらったツーピースの姿は姿勢がいい。関口の隣で僕が頭を下げると、昔日の美貌を留めた顔がこちらを見上げてふわりとほころんだ。
「まあまあ、あなたがウワサに聞く敦ちゃんの〈心のコイビト〉なの?」
一瞬、沈黙してから黒部オーナーを見下ろすと、彼は慌てた様子で口を挟んだ。
「ち、違うのよ、エイコ。彼はね」
「あら、そんなに照れなくても。すらりと背の高い、茶色の目をしたイケメンさんなんでしょ?」
僕は妄想の発展を食い止めにかかった。
「恐れ入ります。僕はその元イケメン女子の甥に当たるものです」
黒部があからさまにホッとした顔で続いた。
「そ、そうなの。この子はそのヒトから預かったの。うちの若手の中では一番の頑張り屋さんで、期待の星なのよ」
「あらまあ。じゃ、憧れの人の面影を宿した若い子を弟子にして、手取り足取りなの?」
羨ましいこと、瑛子が笑い、黒部はうろたえながら説明した。
「ゴカイしないでちょうだい。この子にはうちの子らしからぬ欠点があるからちょっと鍛えようと思って……そうよ、そのためにここに連れてきたんじゃないの」
ハタと気がついたように手を打つと、彼は一歩前に身を乗り出しながら、瑛子の向こうに声をかけた。
「アヤセ。この子がこの前話した真嶋芳弘くんよ」
すると、ちょうど給仕係から新しいグラスを受け取ったその女性がこちらを向いた。
「え? ああ。この前の電話のことかしら」
落ち着いた口調で薄く微笑むその姿に、僕は声もなく圧倒された。
拓巳とはまた違う種類の、それは吸い込まれるような引力を具えた美貌の女性だった。
年の頃は二十代半ばほど、黒に金をあしらったサテンのドレス姿はすらりと均整が取れ、拓巳と同じくらいの上背がある。黒く艶やかな髪は肩上で切り揃えられ、なめらかな肌の白さを際立たせていた。小作りな顔に納まる大きな瞳は長い睫毛に縁取られて陰を落とし、夜色の瞳を一層濃く輝かせている。そして高い鼻筋の下に程よく納まる唇が、深紅の薔薇のように瑞々しく色を放っているのが印象的だった。
あ、でも惜しい……。
そう感じた途端、赤い唇が僕に向かって声を発した。
「なにかしら」
「あ、いえ失礼しました」
「私は訊いているのだけど」
「よっちゃん?」
黒部にも促され、僕はその鋭さに舌を巻きながら答えた。
「あの、大変お美しいと思ったのですが、その毛先にシャギーを入れて軽くしてあげたら、さらにお似合いになるかな、なんて」
口に出した瞬間、関口が「おい」と口を塞ぎ、黒部が目を丸くした。そして――。
「まあ」
アヤセと呼ばれた女性は一旦、視線を外して黒部を見、再び僕に目を戻すと、美しい指先を口元にあてて優雅に笑った。
「初対面の方からそんな感想をいただくのは新人モデルの頃以来ね」
「す、すみません」
赤面して頭を下げるとアヤセは首を横に振った。
「咎めているんじゃないの。率直な感想を聞けて嬉しいわ。今度、私にふさわしいシャギーを入れていただこうかしら」
「まあ、アヤセったら。よっちゃんを苛めないでちょうだい。アナタを迎えるんじゃ手が震えちゃうじゃないの」
「そうかしら。彼は私がどんな立場の者だろうと同じことを感じて、頼まれれば引き受けると思うわ。どう? 真嶋さん」
僕は躊躇しながらも、なんとなく彼女には誤魔化しや虚勢を見抜く力があるような気がしたので、自分が思うとおりに対応してみた。
「はい。その際にはご本名を伺いたいと思います」
問いかけるように夜色の瞳を見つめると、あら、と面白がる色が表情に混ざった。
「私は綾瀬。戸部綾瀬といいます」
「改めまして、真嶋芳弘です。ご来店をお待ちしています」
軽く頭を下げると再び綾瀬は小さく笑い、顔を上げた僕を横目に見ながら黒部に話しかけた。
「ねえ、アツシ。この前のお話、引き受けてもいいわ」
「えっ、ホントに? だってさっきは気が乗らないって……」
「それは仕方ないわ。プラチナ絡みなんだもの。でも彼に興味が湧いたの」
彼女はプラチナと聞いて顔色を変えた僕をじっと見つめたあと、こう言った。
「この方がどこまで本気なのか、試してあげてもいいかしらと思ったのよ」
じゃ、あとはそちら次第でね、と告げると、綾瀬は瑛子と抱擁を交わし、優雅な足取りで去って行った。




